ジョシュア・フランコ(アメリカ)と井岡一翔(志成ジム)のWBA世界スーパー・フライ級タイトルマッチが24日、東京・大田区総合体育館で行われる。引き分けに終わった昨年の大晦日からのダイレクトリマッチだ。どんな試合になるか、勝敗の行方を占ってみよう。

前回との大きな違いは、第1戦がWBAとWBO、2つの王座がかかる統一戦だったのに対し、今回は井岡がフランコに挑戦する形になる点だ。

◆【実際の映像】“達人”井岡一翔、ダイレクトリマッチへの意気込み語る「根性出して倒さな」

■前に出て強いパンチを打てるかがポイント

なぜ、そうなったのか……井岡はWBO1位にランクされた中谷潤人(M・T)との指名試合を義務づけられていた。ところが、井岡はフランコとの再戦を選ぶという理由で、6回防衛したWBOのベルトを返上してしまった。井岡 vs. 中谷という日本人同士のタイトルマッチは、もっとも見たいカードだったはず。肩透かしを食わされたと感じたファンも多かっただろう。

実際、「井岡は逃げた」という批判も多かった。日本人で唯一の4階級制覇王者、井岡のプライドも傷つけられたはずだ。しかも、フランコと因縁の3連戦を行ったアンドリュー・マロニー(オーストラリア)を、中谷は衝撃的なKOで失神させてしまった。中谷、マロニー、フランコ、井岡の比較からしても、井岡にとって“存在感”が問われる試合となる。

圧倒的な手数で攻め込むフランコに対し、カウンターで迎え撃つ井岡。第2戦も、試合の流れは変わらないだろう。初戦は両者に決定打がなく、どちらにもつけられるラウンドが続いて判定はきわどくなった。採点は、1人が115-113でフランコ、残る2人が114-114のイーブンとして、0-1のマジョリティ・ドロー。その結果、規定により両者の王座防衛となった。

リマッチの勝負を分けるポイントは、ただ1点、井岡が強いパンチを打ち切れるかどうか。第1戦では、下がりながら打つためか、パンチに威力が感じられなかった。腰の入った右ストレート、左フックをクリーンヒットしたい。

フランコは器用な選手ではない。スタミナを武器にひたすら前に出てくるタイプだ。パンチを当てること自体は難しくない。いいカウンターを当て動きを止め、前に出ながら攻め込む場面を作りたい。ロープに押し込んで強打を振り抜けば、ダウンシーンもありえる。

■波乱万丈のボクシング人生の集大成となるか

目の覚めるような左フックで、当時無敗だった田中恒成(畑中)をノックアウトしたのが2020年12月31日。もう2年半も前になる。そして、その後の4試合はやや盛り上がりに欠ける判定防衛が続いている。

井岡も34歳になった。振り返ってみれば、波乱万丈のボクシング人生だった。一方的な試合キャンセルからの引退、復帰。芸能人との結婚、離婚。ジム移籍、タトゥー問題、ドーピング疑惑とJBCへの上申書提出……。加えて言えば、今回のWBOタイトルの返上もスキャンダルのひとつに数えられるかもしれない。

しかし、多くの問題を2つの拳で乗り越えてきたからこそ応援したい、というボクシング・ファンもいる。フランコ戦、そして、実現してほしい中谷戦をボクシング・キャリアの集大成として、もう一度、輝く姿を見せてほしい。

なお、今回は、『ABEMA』のペイパービューが6200円と発表され波紋を呼んでいる。金額に見合うエキサイティングな試合を期待したい。井岡の戦績は29勝(15KO)2敗1分、フランコは18勝(8KO)1敗3分1無効試合。

◆【実際の映像】“達人”井岡一翔、ダイレクトリマッチへの意気込み語る「根性出して倒さな」

◆井岡一翔、角刈りにして臨んだ王座統一戦のベルト死守は評価 次なる展望は…

◆井岡一翔、辛くも判定ドローで王者防衛 「悔しさを生かしまい進する」

著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。