ポーズを決めるWWEの顔、ジョン・シナ  プロレスファンなら知らぬ者はいないWWEのスーパースター、ジョン・シナ。米マサチューセッツ州出身の40歳だ。2002年に25歳でデビューするやいなや、パワーとルックスを兼ね備えたこのルーキーはみ…


ポーズを決めるWWEの顔、ジョン・シナ

 

 プロレスファンなら知らぬ者はいないWWEのスーパースター、ジョン・シナ。米マサチューセッツ州出身の40歳だ。2002年に25歳でデビューするやいなや、パワーとルックスを兼ね備えたこのルーキーはみるみる人気を博し、2004年には早くもUS王座を戴冠。WWE最大のイベント「レッスルマニア」の常連となり、現在までに世界王者を15度、US王者を5度獲得して、まさにWWEの顔となっている。

 リング上で過激なマイクパフォーマンスを行なう反面、リングを降りれば品行方正に振る舞い、チャリティー活動にも協力を惜しまない。ボディビルで鍛えた肉体美、俳優のような端正な顔立ちで、過去に映画への主演経験もあり、最近ではハリウッド俳優への転身も噂されている。

 世界中から猛者(もさ)が集まるWWEのリングで10年以上にわたり、トップに君臨するあたり逸材には違いないが、そのあまりにプロトタイプな”スター”っぷりに、客席からはブーイングも起こる。しかし、それも本人にとっては子守唄同然なのか、どこ吹く風。「ネバー・ギブアップ(決して諦めない)」の精神を体現する、まさに鋼(はがね)の心臓の持ち主と言えよう。

 そんな完全無欠の男、シナが、世界的シューズメーカー「クロックス」のキャンペーンに参加するということで、インタビューする機会を得た。順調なキャリアの一方で、度重なるケガなど幾度なく見舞われた困難を乗り越えた末に達した、その境地とは?

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――クロックスのキャッチフレーズ「Come As You Are(自分らしく)」はあなたのモットーと一致しますか? また、キャリアと重なる部分はありますか?

ジョン・シナ(以下、シナ) それはまさに、僕が人生を通じて発信してきたメッセージと重なるところなんだ。これまで僕はキャリアの大半で、どんな環境でも、自分に誠実であることを心がけてきた。つまりそれは、周りからのプレッシャーに屈さないこと、また、変わったほうが楽だからって理由で自分を変えたりしなかったってことだ。いま、発信しているメッセージ「Come As You Are」は、個性を隠さず、自分らしさを誇りに思っていいっていう僕の考えを、まさに体現しているね。

――ミリタリーファッションを着用されている姿もよく見ますが、ミリタリーのどんな要素にインスパイアされますか?

シナ 実際のところ、僕は愛国心が強い人間なんだ。だから、それを表しているものが好きなんだよね。さまざまな人種的・文化的・性的背景を持つ人々がひとつになって、それぞれの夢を追う。それがアメリカ合衆国の基盤だし、ミリタリーにはそういう要素があると思うんだよ。

――WWE のグローバル化をどう思いますか? また、日本でイベントがあれば参加したいと思いますか?

シナ 東京で「レッスルマニア」を開催できたらいいよね。このイベントには思い入れがあるし、もちろん自分も参加できたらと思う。そしてもっとイベントを大きくして、さらに大きくなったイベントを海外で展開するのもいいんじゃないかな。

――WWEのレスラーが他と違うのは、どのあたりでしょうか?

シナ どのレスラーも身体能力が非常に高くて才能があるのが、WWEというところなんだ。その中で突出するのは、観客と感情レベルで通じ合うことのできるレスラーだと思うね。

――これまでのキャリアで学んだ、最も大きなことをひとつ教えてください。

シナ 僕が自分らしくいられるのは、失敗を経験しているから。「決して諦めない」という精神を前面に打ち出して生きることは、すべての人が好むものじゃないっていうのはわかってる。でも、これが僕の生き方だし、それに共感してくれる人だってたくさんいる。「Come As You Are」というメッセージは、僕のように人生で失敗して、もがき苦しんだ末に自分らしさを見つけ、受け入れてきた人々から生まれたものなんだ。



クロックスの靴をいろいろ試し履きするジョン・シナ

――幾度となくケガに見舞われても、リングに戻ってくるのはなぜですか?

シナ 「決して諦めない」――これが僕を体現する言葉だ。多くの批評家が僕は進化していないと言うけど、彼らは近視眼的すぎるんじゃないかな。進化というのは時間がかかるものだからね。それに今の僕があるのは、マーケティングのおかげでも過度な宣伝のおかげでもなく、実績を出してきたからだ。「決して諦めない」という精神を持つと、人生は大きく変わっていく。僕はこの言葉が大好きだといつも言っているけど、同時に僕の実績でもある。つまり、有言実行だってことだ。

――これまでやめようと思ったことはないですか? 

シナ 今はエンジン全開だよ。でも、いつ終わりが来るかはわからない。ただ言えるのは、終わりは明日ではないってことだ。その日が来るまでは戦い続けるよ。

――引退後のビジョンはありますか? 映画界への進出も狙っているのでは?

シナ 僕がここまで来られたのはホントに幸運なことだし、今の僕は、自分がこうしたい、こうありたいと望んできた姿にすごく近くて、それも幸運なことだって毎日のように思ってるんだ。今回のこのキャンペーンがいい例だ。クロックスの製品は僕にとって、まあ未知なる世界だったけど、「Come As You Are」というメッセージは、僕が長い間、信条としてきたものだった。

 つまり、こうやって幸運がやってくるものなんだよね。今回ほどぴったりとくるものはなかなかない。あとキャリアについてだけど、キャリアが終わったらどうするのか――。その時になったら、やるべきことをやるだけさ。

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 このブレない姿勢こそが、彼が「世界のジョン・シナ」たる所以。子供たちが求めるヒーロー像を貫き通し、長年にわたりWWEの頂点に君臨してきたシナ。そんなシナの勝利に、今日もファンは胸を熱くするのだろう。