イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の大会3日目、女子シングルス2回戦。 言うまでもなく、マディソン・ブレングル(アメリカ)は対戦相手の第11シード、ペトラ・クビトバ(チェコ)が、ウィンブル…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の大会3日目、女子シングルス2回戦。

 言うまでもなく、マディソン・ブレングル(アメリカ)は対戦相手の第11シード、ペトラ・クビトバ(チェコ)が、ウィンブルドンで2度優勝した経験を持ち、今年の優勝候補の一角と見られていることは知っていた。

 また、ブレングルは自分がオールイングランド・クラブ(ウィンブルドン)の本戦で、今週ほど多くの試合に勝ったことは一度もなかったことを自覚してもいた。

 水曜日に2番コートでクビトバとの試合を始めたとき、27歳のブレングルが焦点を当てていたのは、『どうか1ゲームでいいから取らせて』ということだったという。世界ランク95位のブレングルはまずそれをやり、それから、さらに多くのことをやってのけクビトバを驚かせると、6-3 1-6 6-2で勝利をおさめ3回戦に進んだ。

 1ゲームも取れないのでは、とブレングルが心配した理由は、彼女がウィンブルドン・デビューを飾った2015年大会で、ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)に0-6 0-6で敗れていたからだ。

「ウィンブルドンでプレーするとき、いつもそのことが頭にあるの」とブレングルは、右のこめかみに指を当てて言った。「あんなこと二度と起きないで、という強迫観念。あれは本当に辛い体験だったわ」。

 しかし結果的に彼女はそう長いこと、完封負けについてストレスを感じる必要はなかった。ブレングルはサービスの強いクビトバに対して、第1セット第1ゲームでブレークを果たしたのである。

「出だしにスコアボードに"1"を刻むことができさえしたら、そのあとはリラックスできたわ。なぜって0-6 0-6っていうのは忘れられないものなのよ」と、ブレングルは笑みを浮かべて言った。

 彼女は今年挙げたもうひとつの重要な勝利と並び、この勝利を堪能することができることになった。ブレングルは今年の1月4日、全豪オープン前のニュージーランド・オークランドでセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を倒していたのだ。セレナはその同じ月の終わりに全豪オープン優勝を遂げ、以来、妊娠のためプレーしていない。ブレングルは今のところ、23度グランドスラム大会優勝を遂げた女王を倒した最後のプレーヤーなのだ。

「あれは私の勲章ね」とブレングルはこぶしを挙げ、笑いながら言った。「あの勝利のことは永遠に大切にするわ」。

 2011、2014年にウィンブルドン優勝を遂げているクビトバは、故障からの復帰後、まだ3大会目だったにも関わらず、何人かのイギリスのブックメーカーに優勝候補とみなされていた。彼女は昨年12月、チェコの自宅で刃物を持った強盗に襲われ、ラケットを握る左手を刺されて手術を受けなければならなかった。

 勝利を祝ってこぶしを握りしめるようなジェスチャーがまだ難しく、握力を完全には取り戻していないというクビトバは、5月の全仏オープンで競技に戻り、そこでは2回戦で負けた。しかしそれから彼女は6月に、グラスコートのイギリス・バーミンガムで優勝を果たした。

「今の私は、エネルギーが枯渇していると感じているの。私の体はすごくいい状態ではないわ。でも精神的には、終わったことをうれしく思う。この復帰劇はある種のおとぎ話だったけれど、その一方ですごくきつかった。私に必要なのは未来を見つめ、それを楽しみにすることだわ」。

 2回戦のあった水曜日、クビトバは気分が悪くなり、第3セットにトレーナーを呼んで治療を受けた。最初の2日間は20度前後だったにも関わらず、その日は突然、30度を超える暑さとなった。

「試合が長くなるにつれ気分が悪くなり、疲労を感じた。そのために、まともに動くことができず、私は本当にのろかった」と、クビトバはコメントした。「自分がすごく動きの遅い動物か何かであるように感じたわ」。

 ブレングルはスライスを多用し、絶えずスピードや角度に変化をつけることで優位に立った。第2セットではクビトバに圧倒されたが、第3セットでは勝つに十分な安定したプレーを見せた。第1セットと第3セットを合わせると、45本のアンフォーストエラーをおかしたクビトバに対して、ブレングルは11本に抑えた。

 クビトバは大会3日目に敗れた、半ダースほどのシード選手の一角となった。その敗者リストには、元ナンバーワンで全豪オープン優勝2度のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)に敗れた第15シードのエリナ・べスニナ(ロシア)のほか、第17シードのマディソン・キーズ(アメリカ)、第18シードのアナスタシア・セバストワ(ラトビア)、第22シードのバーボラ・ストリコバ(チェコ)、第25シードのカルラ・スアレス ナバロ(スペイン)らがいる。

 男子のドローは、前年度覇者のアンディ・マレー(イギリス)、グランドスラム大会で26セット連取中のラファエル・ナダル(スペイン)が、ともにストレート勝ちをおさめるなど状況はよりすっきりとしている。

 キーズにとって86位のカミラ・ジョルジ(イタリア)に対する4-6 7-6(10) 1-6での敗戦は、過去5回のウィンブルドン出場でもっとも早い敗退だった。

「試合を通し、私は相手のレベルが落ちるのを待っているような感じだったけど、レベルは一度も本当の意味で落ちなかった」とキーズは言った。彼女はごく最近、左手首に2度目の手術を受け、10月には最初の外科処置を受けた個所から傷ついた組織を取り除いていた。

「(勝機は)あっという間に私から離れていってしまった。ここまで多くの試合をプレーしていなかったから、取り戻すのは難しかった」(C)AP(テニスマガジン)

※写真は「ウィンブルドン」2回戦でマディソン・ブレングル(アメリカ)にフルセットで敗れた第11シードのペトラ・クビトバ(チェコ)。ケガから復帰して間もないクビトバは、この試合で体調を崩した。(写真◎Getty Images)

Photo: LONDON, ENGLAND - JULY 05: Petra Kvitova of The Czech Republic speaks to her medical team during the Ladies Singles second round match against Madison Brengle of The Unites States on day three of the Wimbledon Lawn Tennis Championships at the All England Lawn Tennis and Croquet Club on July 5, 2017 in London, England. (Photo by Julian Finney/Getty Images)