福田正博 フットボール原論■サッカー日本代表のエルサルバドル戦、ペルー戦が行なわれる。2022-23シーズンを欧州で奮闘…

福田正博 フットボール原論

■サッカー日本代表のエルサルバドル戦、ペルー戦が行なわれる。2022-23シーズンを欧州で奮闘した選手を中心にメンバーが組まれたが、期待の選手は誰になるのか。福田正博氏に、今回の2試合の見どころをあげてもらった。



福田正博氏がそのポテンシャルに期待している上田綺世。そろそろゴールが見たいところだ

【鎌田、三笘、久保の揃い踏みを見たい】

 日本代表は6月15日にエルサルバドル代表(豊田スタジアム)、20日にペルー代表(パナソニックスタジアム吹田)と国際親善試合を行なう。

 この時期の代表戦は目的をどこに見出すかが難しいものだが、第二次森保ジャパンとして2度目となる今回の代表戦シリーズでは、次回ワールドカップを見据えながら、まずは来年1月のアジアカップに挑む日本代表の骨格を再確認していく作業になるのだと思う。

 そのなかで注目しているのが、鎌田大地だ。フランクフルトで残した実績と、今オフはフリー移籍が可能なことから移籍市場での注目度は高いが、私が鎌田に着目している理由はそれとは少し異なる。

 日本代表での活動に限れば、本領をまだ発揮したことのない鎌田が、果たして日本代表でもフランクフルトで見せたような存在感を示せるのか。そこが気になっている。

 カタールW杯では、日本代表の勝利のために前線から献身的な守備を見せたが、あの姿が鎌田らしさかと言えば否定せざるを得ない。鎌田はフランクフルトではシンプルで洗練されたプレーをしながら、ゴールチャンスをつくり出してきたからだ。

 鎌田の特長は、なんと言っても判断の早さだ。ボールを受けたらこねくり回すようなことはないが、かと言ってFWにボールを預けてDFの裏に抜け出してシュートを狙うというタイプでもない。

 味方の誰がどこにいるかをしっかり把握し、シンプルに味方を使いながら攻撃を組み立てていく。どこにパスを出したらボールがどう展開していくかを、つねにイメージできているのだろう。だからこそ、なにがなんでもシュートを打つタイプでなくても、最後はゴール前で鎌田のところにボールが戻ってきて、ゴールを決めるようなシーンが多いのだと感じる。

 そうした特長が、これまで日本代表になると発揮されてこなかった。これは鎌田だけの問題ではないだろう。イメージするプレー展開で、鎌田と日本代表チームメイトとの間でギャップが生じていた部分もあったのではないか。

 その点で言うと、今回の日本代表戦では鎌田と同じようにプレー判断の早い久保建英(レアル・ソシエダ)や三笘薫(ブライトン)がいる。このことは鎌田らしいプレーを発揮しやすいのではと思っている。この3選手の揃い踏みは3月シリーズの日本代表戦では見られなかっただけに、今回はぜひ森保一監督に試してもらいたいところだ。

【上田綺世はそろそろ結果を残してほしい】

 右サイドには伊東純也(スタッド・ランス)や堂安律(フライブルク)もいる。両選手とも2022-23シーズンは新天地でプレーし、結果も残したが、ただシーズンを通じての結果やプレー内容を振り返れば、一番手は久保だ。

 久保は今シーズン、所属クラブで2トップの一角だったり、左サイドだったり、トップ下でも使われて結果を残したが、やはり右サイドを務めた時に自身が持つ攻撃のスキルや技術が生きた。カタールW杯後からシーズン終盤にかけては久保の働きがレアル・ソシエダを牽引したと言っても過言ではないし、彼の存在があったからこそ来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権を手にできたとも言える。

 左サイドは、三笘を超える存在感を持つ選手は見当たらない。久保がプレーできるものの、その選択肢は他のポジションとの兼ね合いになるのではないかと思う。

 トップ下に鎌田がいて、左サイドに三笘、右サイドに久保という攻撃的な中盤の構成は、サッカーファンに限らず日本中の多くの人が見たいと思うはずだ。そして、彼ら3選手の前でプレーしてほしいのが上田綺世(サークル・ブルージュ)だ。

 今季は所属クラブでリーグ戦40試合22ゴールと活躍したが、カタールW杯前から長らく彼の潜在能力を大いに期待してきた者としては、この程度の数字では満足できない。彼なら同じくらいの数字をベルギーよりももっと高いレベルのリーグで残せると見ているからだ。それだけに日本代表でも上田には大黒柱になるべく、そろそろ結果を残してほしいと思っている。

 シュートのパワー、トラップの技術、裏に抜けるタイミング、ジャンプ力など、持ちうる能力すべてを得点することに特化させつつある上田には、鎌田や久保、三笘のパスからゴールネットを揺らす姿を見せてもらいたい。

【サイドバックは未招集の選手もチャンスあり】

 そのFWでは久しぶりに招集された古橋亨梧(セルティック)が、日本代表でどういうプレーを見せてくれるかも興味深い。今季はスコットランドリーグで得点王を獲得したが、日本代表ではその得点力をいまだ発揮できていない。クラブでの存在感を日本代表で発揮できていない点では鎌田と似通うものの、決定的な違いがある。

 フランクフルトは5大リーグのひとつに数えられるブンデスリーガのクラブで、2021-22シーズンはUEFAヨーロッパリーグでも優勝した。一方のセルティックのいるスコットランドリーグは、ヨーロッパでの格付けは5大リーグよりも落ちる。

「ゴールを奪うことは、どんな相手であっても難しい」とはいえ、古橋が所属するセルティックはそのリーグで圧倒的な強者。古橋が決めたリーグ戦でのゴールのほとんどは、格下から奪ったものというのを念頭におかなければならないだろう。

 その理由は、日本代表の戦い方がリーグ戦でのセルティックと同じようにはならないからだ。対戦相手の実力がそれほど高くないこの6月シリーズでは、セルティックのように押し込む展開になるかもしれないが、次回のW杯を見据えれば、それはレアケースだろう。

 これまでの古橋が日本代表で結果を残せなかったのは、ポジションの問題というよりは、そこが大きく関係している気がする。それだけに、6月シリーズで古橋が日本代表で生き残るアピールをどう見せるのか。これまでと違った古橋の姿を見せてもらいたい。

 DF陣に目を向けると、板倉滉(ボルシアMG)、伊藤洋輝(シュツットガルト)がいて、W杯以来の日本代表招集となる谷口彰悟(アル・ラーヤン)がメンバーに入った。センターバック(CB)陣は冨安健洋(アーセナル)を故障で欠くものの、不安はない。

 ただ、4バックで戦う場合の両サイドバック(SB)には、右SBに菅原由勢(AZ)、左SBに森下龍矢(名古屋グランパス)が予想されるが、ここはテスト色が濃いと言える。3月シリーズで招集された選手や、まだ未招集の選手にもチャンスは大いにあると見ていい。さらに言えば、CBでここから新たに頭角を現す選手がいた場合には、冨安をSBに使う手もある。誰がどんなアピールをしてくれるのか楽しみなところだ。

【初招集組の奮闘も楽しみ】

 日本代表初招集で言えば、川﨑颯太(京都サンガF.C.)は自チームでアンカーのポジションを任され、21歳ながらキャプテンマークを巻き、そのキャプテンシーは湘南ベルマーレ時代の遠藤航を彷彿とさせる。

 ポスト遠藤と目されがちだが、川﨑が次回のW杯よりも前の時点で遠藤を追い落とすような成長を見せてくれれば、日本代表は着実にレベルアップを遂げることになる。それだけに、この初代表を今後への糧にしてもらいたいところだ。

 海外組は本来ならばこの時期はオフシーズンで、来季に向けて英気を養うべき時期なため、6月シリーズでは出場時間が限定される可能性はある。そうしたなかでは数多くの選手がピッチに送り出されるだけに、与えられたチャンスを生かしてもらいたい。

 結果はもちろん必要なものだが、この時期はそれ以上に大切なものもある。それを得たと言えるような内容の試合を、日本代表が見せてくれることを楽しみにしている。

福田正博 
ふくだ・まさひろ/1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。