「CAMBIOベースボールミーティング」で発表された投球・送球データ「球数制限」という言葉を聞くと、一番に思い浮かぶのは…

「CAMBIOベースボールミーティング」で発表された投球・送球データ

「球数制限」という言葉を聞くと、一番に思い浮かぶのはピッチャーの投球数管理のことだろう。しかし、肘や肩を壊すリスクがあるのは、投手だけとは限らない。「日本の野球界をより良い方向に変えていく」をテーマに少年野球、高校野球関係者ら一堂に会する「CAMBIOベースボールミーティング」が先日オンラインで開催されたが、その中で、野手の送球による故障のリスクについて興味深い研究データが示された。

 研究内容を披露したのは、肘内側側副靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)の権威として知られる、慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師。「たくさんの小さい子たちが泣くのを見てきましたから、それを変えたいと思って行動しています」と言う古島氏は、治療だけでなくポニーリーグや学童野球で怪我をしないためのルール作りに携わっており、指導者への故障予防の啓発活動も行っている。

 そうした活動の中で「実際にデータを見て理解してもらうほうが早い」と考えた古島氏は、投球・送球について、どれくらい肘に負担がかかるものなのかを動作解析器具を使って調べてみたという。具体的には、大学硬式野球経験者5人(平均24歳)を被験者として、「ピッチング」に加えて「軽いキャッチボール」「強いキャッチボール」「外野からのバックホーム」「内野手間の送球」「捕手から二塁への送球」など、様々なシチュエーションで10球ずつ投げてもらい、平均してどれくらいの負荷があるのかを調査した。

 すると、ステップを踏まずに投げる強いキャッチボールや、三塁から一塁への送球、二塁手の併殺プレー時の送球、捕手から二塁への送球などは、ピッチャーが投げる1球よりも強い負荷の数値が計測されたという。中でも捕手のセカンド送球は、ピッチングの2倍程度の高い負荷がかかっていることが示された。投手より投げる頻度は少ないものの、野手にもスローイングによる故障のリスクが潜在するという証左でもあるだろう。

マイナーリーグの守備練習は「捕るだけで送球しない」

 研究データについて古島氏は、次のように考察した。「投球・送球の強度が増せば負荷は強くなりますし、ステップを踏むことによって送球の負荷は下がります。『遊撃から一塁』よりも『三塁から一塁』の方が負荷が高かったのは、遊撃からの送球はステップが1、2歩入るからということもあるかもしれません。もちろん、たくさん投げる投手については、試合前の投球数や週間投球数など、球数を管理していく必要があります」。

 今回のミーティングで古島氏からは、最新のトミー・ジョン手術の施術方法や、濃縮した血小板を患部に注射して組織の修復を促すPRP(多血小板血漿)療法なども紹介された。しかし、「医学の最終ゴールは、病気にならないこと。野球で言えば、障害を起こさないことです」と、新しい医療技術以上に、そこに至る前の“予防”が大切だと語る。

 古島氏は米マイナーリーグを視察した際の、ある練習風景の映像を見せてくれた。内野手がノックを受けているが、捕球するだけで一塁への送球はしない。「日本の場合、ノックで受けた球を全部一塁に送球するので、それで肘や肩を壊す野手もいます。この“捕って投げない”練習であれば、壊すことはありません」。

 球界の未来を担う子どもたちが、過剰な負荷による怪我でプレー機会を失わないためにも、親や指導者ができる工夫はいろいろあるはず。そう感じさせられた、古島氏からの言葉だった。(高橋幸司 / Koji Takahashi)