2021年開催の東京五輪から正式競技に採用されたスケートボード。 地面をお椀のようにくり抜いたようなコースを縦横無尽に疾走し、エア・トリックを繰り出す「パーク」と、街中を模したコースのなかで階段や手すり、スロープを利用したトリックを競う「…

 2021年開催の東京五輪から正式競技に採用されたスケートボード。

 地面をお椀のようにくり抜いたようなコースを縦横無尽に疾走し、エア・トリックを繰り出す「パーク」と、街中を模したコースのなかで階段や手すり、スロープを利用したトリックを競う「ストリート」のカテゴリーがあり、東京五輪で日本は男女合計で金メダル3個、銀1個、銅1個のメダルラッシュに沸いた。

 そんなスケートボードの女子・パークで、来年のパリ五輪で日本勢のメダルラッシュに待ったをかけようとする日系人選手がいる! オーストラリア出身で日本人の母を持つ13歳、アリサ・トゥルー選手だ。

 トゥルー選手は、5月中旬に千葉・ZOZOマリンスタジアムで開かれた世界最高峰の大会「X Games Chiba 2023」にオーストラリア代表として出場。スケートボード女子・パークで4位に入った。その会場にて、彼女にインタビューを行なった!


オーストラリア代表として

「X Games Chiba 2023」に出場し4位に入ったアリサ・トゥルー

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●初めて出場した大会で男子に混じって3位

ーーまずは自己紹介をお願いできますか?

アリサ・トゥルー(以下、同) トゥルー・愛理沙、13歳です。オーストラリアのゴールドコースト出身で、女子スケートボードのパークの選手です。

ーー初めてスケートボードをした時、どんな印象を持ちましたか?

 スケートボードを始めたのは、7歳か8歳の頃だったと思います。とっても面白くて、もっとたくさんのトリックを学びたいなって。

ーーオーストラリアの友達の間では、スケートボードは身近なものだったんですか?

 始めた頃は、男の子が学校へ行くのにスケートボードを使ったりしてましたけど、女の子のスケートボーダーは誰もいなくて、私は男の子にまざってやってましたね。

ーー最初に自分のボードを手にした時について教えてもらえますか?

 最初のボードは、たしかパンダの絵が描いてあったと思うんですけど、それに傷をつけないように大切に使っていました。だけど一度傷がついたあとは気持ちが吹っ切れて、どんどんトリックを練習するようになりました(笑)。

ーー思い返してみると、スケートボードのどこにハマって、これまで続けてきたんだと思いますか?

 9歳以下の試合に初めて出た時、女の子だけの試合がなくて男の子と一緒に試合に出たんですけど、3位になれたんです。同時に1位になれなくて悔しかった思いもあって。それがどんどんハマっていった理由になるのかな。

●東京五輪を見て「いつかあの舞台へ」

ーー2021年に開かれた東京五輪では、スケートボードが正式競技になって、日本中だけでなく世界中が盛り上がっていました。東京五輪は見ましたか?

 スケートボードの練習をしながら友達と一緒に東京五輪の試合を見ていました。いつかあの大舞台に出ようっていう気持ちが高まってきたのを覚えてます。

ーースケートボードのパークでは、金メダルが四十住さくら選手、銀メダルが開心那選手、銅メダルが日系イギリス人のスカイ・ブラウン選手と、ティーンエイジャーが大活躍していました。彼女たちをどう感じましたか?

 彼女たちが表彰台に上がっているのを見て、私もそこに立ちたいとすごく思いました。2024年のパリ五輪に出場したいという気持ちにつながっていると思っています。

 特に表彰台に上がったのは日本人選手と日系人選手だったので、私も日系なので(笑)。彼女たちに負けないくらい練習をして、頑張りたいなと考えています。



ーーパリ五輪をはじめ、世界での戦いが見えてきたのは、いつくらいから?

 昨年8月、アメリカであった「バート・アラート」っていう大会で、初めて「540マックツイスト」(※空中で体を1回転半<=540度>捻りながら回転させる技)を成功させることができました。大きな大会で決められたことで、「よし、これで世界に行けるかもしれない」と思えるようになりました。

ーー現時点での愛理沙選手のオーストラリア、そして世界でのポジションはどんな感じで捉えていますか?

 Xゲームズにも出場できるようになってきているので、オーストラリアのなかでも、世界のなかでも、競技レベルはどんどん上げられていると思います。

ーーさらにレベルアップさせていくために、どんな作戦がありますか?

「540マックツイスト」のように、自分が回転するトリックは得意ですが、ボードを足先でくるりと回転させる「フリップトリック」とかは、まだまだ経験不足で不得意です。

 それが10回中8回や9回くらい、いつでもできるようになると、さらに上のレベルにいけるんじゃないかなと考えています。

●プロを目指す学校で文武両道

ーースケートボードだけではなく、サーフィンにも興味があるとのこと。スケートボードとサーフィンをどんな感じで両立させていく予定ですか?

 オーストラリアの自宅から歩いて5分もかからないくらいのところに海があるので、週末は、朝にスケートボードをやって、お昼にサーフィン、夕方にまたスケートボードをやったりしているんです。

 私としては、スケートボードではどんどん試合に出て、プロとしてやっていきたいスポーツ。サーフィンは地元のサーフィンクラブに入っていて、試合には出たりするんですが、ただただ楽しみたいもので、もっとリラックスできるようなスポーツなんです。



ーー日々、スケートボードとサーフィンをしていて忙しいと思いますが、勉強のほうはどうですか?

 私の学校は、スケートボードとサーフィン、BMXでプロを目指す子たちが通っている学校なんです。ふだんは午前中に勉強をして、午後にスケートボードを練習してます。

 だから、一応、勉強とスケートボードの両立はできてるかなと自分では思っています。数学と英語と科学が好きな教科で、授業も超楽しいです。

●パリ、ロサンゼルス、ブリスベン...五輪3大会出場が目標

ーー直近の大きな目標は、来年のパリ五輪ということになりますか?

 まずはパリ五輪に出場して、さらに競技を続けて、その次のロサンゼルス五輪、次の次の地元オーストラリアでのブリスベン五輪と、3大会連続で出場したいです。

ーー最終的に目指すのは金メダルになりますか?

 もし五輪で金メダルを獲れたら、スケートボード人生で最高にハッピーな日って思うかなと。それでスケートボードの競技で完全燃焼したら、今度はコーチになって、いろんな選手たちを指導していきたいです。



ーー最後に、スケートボードファンたちに、愛理沙選手が一番見てもらいたいのはどんなところになりますか?

 やっぱり、得意の「540マックツイスト」になります。初めてできた時の高揚感がすごかったのを今でも忘れられないですし、これが私の持ち味だと思っていますので、みんなに見てもらえたらうれしいです。

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 インタビュー後、トゥルー選手は「X Games Chiba 2023」に出場。東京五輪銀メダリストの開心那選手をはじめとする15選手が参加するなか、トゥルー選手は得意技の「540マックツイスト」を見事に成功させる。4位で予選を通過。翌日に予定されていた決勝は雨のため中止となり、予選順位が最終順位として確定した。

 トゥルー選手は5月12日の予選当日が誕生日で13歳に。誕生日を自ら祝った今大会の4位という順位は、1位になった開選手との、パリ五輪での熱い対決を、今から予感させる結果だった。


【プロフィール】
Arisa Trew

 アリサ・トゥルー 
2010年5月12日生まれ。オーストラリア・ゴールドコースト出身。母は日本人、父はオーストラリア人。スケートボード・パークでオーストラリアの五輪強化選手として、2024年パリ五輪出場を目指す。得意技は「540」と呼ばれるトリック。現在3種類の「540」の技を駆使するが、特に「540マックツイスト」の迫力と美しさに定評がある。好きな日本の食べ物は、餅、アイスクリーム、たい焼き。「永谷園」のお茶漬けは海外に遠征する時は忘れずに持っていく。スケートボードだけでなくサーフィンも得意の「二刀流」選手。