ヌートバーの連載「ペッパー通信」がスタート、5月に大谷翔平ら侍J戦士と再会 野球日本代表「侍ジャパン」に日系選手として初…

ヌートバーの連載「ペッパー通信」がスタート、5月に大谷翔平ら侍J戦士と再会

 野球日本代表「侍ジャパン」に日系選手として初めて招集され、3大会ぶりの世界一に貢献したカージナルスのラーズ・ヌートバー外野手。カージナルスでは1番打者としてレギュラー定着へ躍動を続けている。Full-CountではMLB公式サイトのカージナルス番ジョン・デントン記者の取材をもとに、月2回の連載「ペッパー通信」で本音に迫る。第1回はエンゼルス・大谷翔平投手ら日本人選手から得た刺激について。【取材:ジョン・デントン、構成:木崎英夫】

 ラーズ・ヌートバーにとって、過ぎようとしている5月は身体に生気を与える再会の連続だった。

 国の威信をかけた国際大会の代表チームに招集された選手たちは、異国の地での共闘が終わればそれぞれの所属先へと戻っていく。しかし、米国籍で初の侍ジャパン代表選手に選ばれたヌートバーは、ここアメリカで世界の頂点を目指した同士3人と再会した。

「第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で“共闘”した大谷翔平(エンゼルス)、鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(レッドソックス)との再会は、即刻、日本メディアで報じられているが、改めて聞いてみた。

 破顔一笑、ヌートバーは語りはじめた。

「ショウヘイには(3三振で)まったく歯が立たなかったけど、あんな楽しい勝負はなかった。WBCでなにかとお世話になった彼と対決できる5月が本当に待ち遠しかった。とても優しくて、そして元気な姿は変わらない。強い睡眠欲から食事は実現しなかったけど、それもショウヘイ。常に万全で試合に臨もうとする姿勢は誰にも真似できない」

 エンゼルスとは本拠地セントルイスで5月2日から3試合を戦った。投打の二刀流で全米を席巻する大谷とWBCで盟友となったヌートバーとのメジャー初対決が注目され、50人を超える日米の報道陣が集まった。カ軍広報は、ヌートバーの個別取材で生じるクラブハウスの混乱を憂慮し、同カード初戦の練習前にダグアウトでの会見時間を設けた。

辞退の鈴木誠也からも大会中にアドバイス「そばにいるチームメートと思えるほど」

 大谷が去ってから4日後、カージナルスはシカゴに遠征。10日までの3連戦中にヌートバーは鈴木と心を通わせた。周知のとおり、鈴木はアリゾナのキャンプ中に左脇腹を痛めWBC出場を辞退。同じ外野手である鈴木を支えに同大会に挑む気構えでいたヌートバーは、一抹の不安を抱えて日本へ飛んだ。しかし、「そばにいるチームメートと思えるほど」に、大会中も貴重なアドバイスをもらい、チーム快進撃の一翼を担った。「人間的にとても尊敬できる人」。鈴木へのこの思いはシカゴでさらに強くなったという。

 そして、親しみを込めて「マサ」と呼ぶ吉田である。

「初めて会った時の印象は、物静かでシャイ。実際、練習中は口数も少なく淡々と準備をする姿が目立った。ところが、ホテルに戻ると彼は饒舌になる。野球はもちろん、家族や人生についても話の幅を広げた。当然、デビュー目前のメジャーについて質問も浴びせてきたよ。移動、日々の準備の仕方、ピッチャー、そして戦術……。マサの嗅覚の鋭さが問いから伝わってきた」と思い返す。

 ヌートバーは、ボストンでの初戦となった12日、レ軍の打撃練習の合間を狙って挨拶に出向いた。その際に受けた「ボールを捉える際の右肩の入り具合」は、以来、打撃のチェックポイントの一つになっている。

 WBCで掛け替えのない仲間たちと出会ったヌートバーは、日本流の、チーム全員がホテルでともにする食事が見えない結束力につながり、決起集会は互いを知る一助になっていると実感している。さらには、他人を敬う積極的な精神の側面が色濃く出ている日本社会が野球にも通じていると感じたようだ。

ヌートバーは4月にイチロー氏とも初対面「短い時間にたくさんのことを聞いた」

 曇りのない目でこの点を見ることができたのは、母・久美子さんの影響が大きい――。

 日本人の精神性を秘め野球に深い敬意を持ちプレーし続けたマリナーズのレジェンドを母・久美子さんは子供だったラーズにそれとなく説いている。以来、野球愛の象徴としてラーズが羨望の眼差しを注ぐ存在となったのがイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)である。

 4月21日、シアトルでの3連戦初戦を前にヌートバーは偉大なイチロー氏と初対面した。

「日本代表そしてメジャーリーグの大先輩であるイチローと対面できるなんて本当にすごいことだと思った。あの日、短い時間にたくさんのことを聞いたけど、的確に返してくれたんだ。思えば、彼との時間も侍ジャパンと一本の糸でつながっていたんだね」

 イチロー氏からマリナーズのユニホームにサインをもらい、大喜びするヌートバーのニュースは日本の各メディアで拡散したが、その宝物には今、新たな気持ちが芽生えているという。

 ヌートバーは無垢な気持ちを明かした。

「ママはイチローのTシャツをよく着ていたんだ。イチローを生んだ(日本の)野球が好きという証だよね。だから、僕はWBC世界一のゴールドメダル同様に、彼女にはレジェンドから頂いたあのユニホームも受け取ってもらおうと思ってるんだ」

 5月29日現在、ヌートバーは安打数、打点、得点、打率、出塁率、四球、盗塁の部門でチームの上位にいる。レギュラー外野手の座を手中に収めたラーズ・ヌートバーの2023年は、日の丸を背負った侍ジャパンから始まった。(「MLB公式サイト」ジョン・デントン / John Denton)