ホークスOBの池田親興さん「社会人はまず挨拶、頭を下げるということが大事」 昨今のスポーツ界で、選手のセカンドキャリアは…
ホークスOBの池田親興さん「社会人はまず挨拶、頭を下げるということが大事」
昨今のスポーツ界で、選手のセカンドキャリアは課題と1つとされる。現役生活を終焉を迎え、現役時代よりも遥かに長い時間となる第二の人生をどう送り、どんなキャリアを描くかは、多くの選手が頭を悩ませるところだ。実際に日本野球機構(NPB)が若手選手に行ったアンケートでも、全体の38.5%が引退後の生活に「不安がある」と回答した。
球団として選手のセカンドキャリア支援に力を注ぐソフトバンクの球団OBと企業経営者がセカンドキャリアを考える連載の第2回。解説者として活躍する池田親興さんと宮崎県都城市に本社を置く乳業メーカー「南日本酪農協同株式会社」の有村義昭代表取締役社長が、セカンドキャリアを描く上で求められることを語り合った。
――有村社長が経営者として人材に求める素養とはどんなところでしょうか?
有村「我々もここへ来て人手不足というのは切実ではあります。人材に求めるところですが、チャレンジ精神があると言うのが大事だと思います。僕たちの若かった頃というのは、言葉が適切かどうか分かりませんが、聞かん気の強い人間が結構いました。ですが、最近の若者は大人しくなっているような気がしないでもない。最近の子は情報をいっぱい持っているんですけど、その情報をうまく使い切れていないなと思うことはあります。思い切ってチャレンジしてほしいですし、失敗を怖がらない、あとはグローバルな感覚を持ってる人材を求めています」
池田「プロ野球の世界でも同じことが言えるかもしれません。時代がアナログからデジタルに変わって、自分から情報を取りに行けるようになり、選手たちも変わっていきました。昔はあまり考えずにまず行動して、結果を自分たちで責任を取るっていう感じだったんですが、今はちゃんと考えた上で行動して責任を取らなきゃいけない。大人しいというよりか、自分の使い方というのは10人いれば10人違うはずなのに、10人が同じように見えてしまう。それは勿体ないかなと感じますね。個性はあるんですけど、その個性が、昔はもっともっと手にとって分かるような人が多かった感じがします。辞めることが簡単になっている。いろんな失敗をして、怒られてもここで頑張ろう、というのではなくなってるような感じがします」
有村「実際にそういうふうに感じますね。弊社もご多分に漏れず、若くして辞めていってしまうっていうのがあります。企業として考えなきゃいけない部分だと思うんですけども、最近では入社3年以内の子が辞めていってしまう比率が少し目立ってきたというのが一つ大きな心配ではあります」
「指導やコーチングが上手い人がいる。アスリートの可能性は大きいんだろうなと思います」
池田「有村社長はプロ野球選手、アスリートの採用に関心はありますか?」
有村「関心はあるのですが、話があるようでないんですね、今のところ。ラグビーのトップリーグでプレーしていた元選手は1人いまして、しっかり働いてくれています。興味があるなと思うのは、現役時代にそれほど活躍していなくても、監督としてものすごい指導力を発揮する方もいるところ。そういう指導やコーチングが上手い人がいると感じます。そういったところでアスリートの方の可能性は大きいんだろうなと思います」
池田「支配下の選手は契約金を退職金として使っていけるので、まだ自分の財布にお金があるわけですよね。ただ、育成の選手はそうもいかない。支配下を目指して頑張るんですが、期限がある。その時間には、次を考える時間も含まれているのか、もしくは野球だけに没頭して次に向かうのか。そういうことを考えられる人と考えられない人がいると思うんです。球団として人間育成も含めた野球選手を作っていくことができれば、世の中に出ていくときにホークスでちゃんと教育を受けたからという、球団が人材を育てる会社になっていけるといいんじゃないかと思います」
池田「育成選手たちは100人が入団して10人も出てくる世界じゃない。でも、そこにチャレンジする彼らの精神ってのは僕は素晴らしいと思うんです。心配する親御さんのことを考えたり、セカンドキャリアのことを考える時には、この場所の数年間がとっても大事な時間になる。縁があった企業に入った時にホークスがあったから、となると、また別の企業で目を向けてくれるところがあるんじゃないかと思いますね」
――厳しいアスリートの世界で生きてきたからこその忍耐力は武器になりませんか?
池田「根性、忍耐力は、今の人たちはあまりアテにしない方がいいと思います。若い人たちは情報をいっぱい持っていますし、能力もあるけど、その使い方を知らない。我々のような世代の人たちは使い方だけしか分からない。そこを融合させればもっと良くなる。ホークスでは今でも言われていますけど、誰でもいいから球場にいる人には挨拶をしなさい、頭を下げなさい、挨拶することで損することはないっていうことを伝えている。社会人では、まず名刺交換をする、挨拶をする、頭を下げるということが大事。そこは教育が要らない、いい部分ではないかなというふうに思うんですよ」
有村「もうその通りだなと思います。今の若い人って意外と挨拶ってできないんですね。社内でも口酸っぱく言っていますが、やっぱりできない。ただ、やっぱり挨拶は大事というのがあります。私はこの立場になったので、採用面接からは離れましたけど、面接では素晴らしかった人が、いざ入社してもらうと『えっ?』と思うこともあるんです。面接のための勉強って、すごいんだろうなと思います。そこには思うところはありますし、私達も大きな人間になってもらうための指導っていうのはしないといけない。そこを怠っては会社自体も良くはならないと思っています」
「興味を持っている子というのは、やっぱり伸びていくんです」
――選手が現役のうちに取り組んでおいた方が良いことはありますか?
有村、池田「難しいですね」
池田「25歳のときに60歳になったときのことは想像できないですよね。私も60歳になったときに初めてそうかと思ったけど、今やることをちゃんとやる、というのが一番大事なことだと思います。終わった後のことを考えなさいって言ってもなかなかできるものではない。できるとすれば、自分の力がどれだけあるかというのを、自分で咀嚼すること。確かに自分のセカンドキャリアに向かって何か勉強したり、スタートさせたりすることも大事だけど、プロ野球の世界にいて頑張るわけなんで、どちらかに身が入らなくなってしまうこともあり得る。個人的には、次に向かうためにはプロ野球での日々をちゃんとやることが先であって、それができない人はセカンドキャリアでもできないと思うんです。ちゃんとやり切ったという満足感、達成感があって次に向かうことが大事。未練を残さず、自分の1日1日が本当に頑張ったプロ野球生活であったと言えたときに初めて、次に来られたと思える。その時間を作ることが一番じゃないかなというふうに思います」
有村「新入社員にもよく言うんですけども、物事に興味を持ちなさい、ということですね。興味を持っている子というのは、やっぱり伸びていくんです。興味を持っている子っていうのは、例えば私どもの仕事でいうと、どこか他社の商品だろうが新しいものが出たら絶対に飲んでみる、食べてみる、新しいお店ができたら絶対に行ってみる。何でもいいんですけど、物事に興味を持つってすごく大事だなと思いますし、それは仕事を変わっても多分一緒です。そういうものがなかったとしても、意識してやっていくと変わってくると思うんです。そういうところがあると、どんな仕事でも身に付いていくんじゃないかなと思いますね」
池田「みんな好きなことだとやりますよね。プロ野球選手でも、成長する選手というのは興味があったり、いろいろな探究心があるもの。今の人たちは失敗したら、すぐにそれを消そうとする力が働く。でも、失敗は自分の財産になるし、本当は失敗じゃない。やったことがないことをやるというのは難しいことですし、失敗してもいいんです。それを糧にして努力して変化していけば、変われるんじゃないかと思いますね。会社に入って企業人になれば、会社同士の競争もあれば、当然、会社の中での個人の競争もある。その中で出世することもあるでしょう。自分でやったものがちゃんと結果、形として出ていくことの嬉しさとかも分かれば、働く楽しみも出てくるんじゃないでしょうか」(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)