厳選! 2歳馬情報局(2017年版)第6回:トゥザフロンティア 近年の日本競馬界における「スピードスター」と言えば、やはりロードカナロアだろう。2010年~2013年に現役生活を送った同馬は、1600m以下のGIレースを6つも勝っている…

厳選! 2歳馬情報局(2017年版)
第6回:トゥザフロンティア

 近年の日本競馬界における「スピードスター」と言えば、やはりロードカナロアだろう。2010年~2013年に現役生活を送った同馬は、1600m以下のGIレースを6つも勝っている。

 特に圧巻だったのは、香港で獲得したふたつのGIタイトルだ。

 香港は「スプリント王国」と言われるほど、短距離のレベルが非常に高い国。これまで、ビリーヴ、カルストンライトオ、ローレルゲレイロ、カレンチャンなど、日本を代表する名スプリンターが次々に挑戦してきたものの、ほとんどが惨敗を喫してきた。

 そんな”王国”の壁を破ったのが、ロードカナロアだった。2012年のGIスプリンターズS(中山・芝1200m)を勝って初のGI制覇を果たすと、その後、年末の香港スプリント(香港・芝1200m)に参戦。日本馬として初めて優勝したのである。

 さらに衝撃を与えたのは翌2013年、スプリンターズSで連覇を遂げたあと、再び挑んだ香港スプリントでのことだ。引退レースとなったこの舞台で、2着に5馬身差をつける圧勝劇を披露。見事な連覇を決めて、有終の美を飾ったのだ。その強さには香港の競馬関係者も脱帽だった。

 そんなスプリント界の歴史を変えた名馬が今年、新種牡馬として初の産駒を世に送り込む。なかでも注目されているのが、トゥザフロンティア(牡2歳/父ロードカナロア)である。



兄姉も活躍している良血トゥザフロンティア

 母は、2001年のGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を制したトゥザヴィクトリー。海外のGIドバイワールドカップ(UAE・ダート2000m)で2着に大健闘するなど、こちらも歴史に名を残した名牝だ。

 同馬は母となってからも、名牝の名をほしいままにしてきた。2007年に生まれたトゥザグローリー(牡/父キングカメハメハ)は、重賞5勝。GI有馬記念(中山・芝2500m)では、3着に2度食い込んだ。

 2011年生まれのトゥザワールド(牡/父キングカメハメハ)は、重賞1勝に加えてGI皐月賞(中山・芝2000m)、有馬記念で2着と好走している。さらに、海外GIでも2着という好結果を残した。

 2012年生まれのトーセンビクトリー(牝5歳)も、今春のGIII中山牝馬S(中山・芝1800m)で初の重賞制覇。良血ゆえ、これからも重賞での活躍が期待されている。

 父母とも十分すぎる実績を持つ中で、この若駒はどんな資質を見せているのだろうか。育成を行なったノーザンファーム早来の山内大輔氏は、かなりの好感触を抱いていた。

「トゥザフロンティアは、いい馬ですね。2歳春になってグングンよくなりました。どちらかというと、父より母に似ていて、『トゥザヴィクトリーの子どもらしくなってきた』という印象です。距離も持ちそうですね」

 すでに同馬のデビュー戦は決まっており、7月22日の2歳新馬(中京・芝1600m)がその舞台となる予定。管理するのは、兄たちを見てきた池江泰寿厩舎(栗東トレセン/滋賀県)だ。

 これだけ早くデビューできるのは、順調に育成が進んだからに他ならない。先述の山内氏も、その点について高評価する。

「すごく素直でおとなしいですし、走っていても引っかかることはありません。操縦性が高い馬ですね。育成でもいいタイムで走っており、とにかく順調に進みました。もう少し闘争心が出れば、さらによくなるはず。デビューが近づいて、本格的な調教が進めば、そうした前向きな姿勢もきっと出てくるでしょう」

 種牡馬ロードカナロアの初年度産駒であり、国内屈指の名牝を母に持つトゥザフロンティア。父母のように、新たな歴史をつくることができるのか。その初陣は要チェックである。