5月20日放送の「卓球ジャパン!」は、南アフリカ・ダーバンで始まった世界卓球の日本選手の激闘をロンドン五輪銀メダリストのMC平野早矢香が熱く解説した。

まずは男子シングルス1回戦の戸上隼輔。全日本選手権2連覇中の戸上の相手はポランスキー(チェコスロバキア)。世界ランキング142位ながら、185cmの長身から繰り出すバックドライブは強烈だ。

戸上と言えば、攻撃一辺倒の卓球で、東京五輪2020金メダルの水谷隼から「もう少し緩急をつけたら」と苦言を呈されることもある選手だが、この試合では先に相手に打たせて点を取る柔軟な展開を見せた。

「ドイツリーグでヨーロッパの選手たちとたくさん練習や試合を積んだ成果ではないか」と平野は見る。

一方のポランスキーも、しっかりと戸上対策をしてきている様子で、台から距離を取り、大きな打ち合いにしてパワーでねじ伏せる作戦だ。

平野が注目したのが、ポランスキーがあえて打点を落としてタイミングを遅らせ、戸上に先に動かせて逆のコースを突いた場面。

「打点を落としたからこそ見える相手の動きがある」と平野。トップ選手だからこそ見える繊細な駆け引きの世界だ。DEEPだ。

そんな、パワーと巧妙さを兼ね備えたポランスキーに対して戸上は、前半こそペースをつかめず苦戦したが、後半はフォア前のサーブに対しても思い切って大きく回り込んでチキータを連発し、見事4-1で勝利した。

女子シングルス1回戦、木原美悠の相手は、オリンピック3回連続出場のメキシコのエース、シルバ。長いラリーに強い選手だ。

また、見た目よりもボールが軽く、そこがやり難いと平野。普段あまり対戦する機会がないこともあり、油断すると大けがをする可能性もある。繊細な競技である卓球ならではの難しさだ。

このシルバを木原は持ち前の多彩なサーブで翻弄した。平野が注目したのが、あたかも下回転のような低い軌道で飛ぶ、横回転または上回転サーブだ。

しかも木原は、打球直後に激しいフェイクモーションを入れて相手の判断を狂わせる。画面に表示された木原の上回転サーブの回転数は毎秒24回転。これが下回転に見えるため、相手はあらぬ方向に吹っ飛ばす。

一般的には、フェイクを入れるほど打球の瞬間のラケット角度が不安定になって難しいが、それができるのが木原の強みだ。

木原の超絶サーブに翻弄されたシルバは、1ゲーム取るのが精一杯で、木原の勝利となった。

最後は男子シングルス1回戦の吉村真晴vsルー(オーストラリア)。

29歳とすでにベテランとなった吉村は、意外にも五輪または世界選手権でシングルスに出るのはこれが初。リオ五輪で団体銀メダルを獲ったときも、世界選手権で石川佳純との混合ダブルスで金メダルや銀メダルを獲ったときもシングルスは出ていない。

初のシングルスにかける思いは並大抵のものではないはずだし、もちろん、パリ五輪も狙っている。

「まだ俺は終わらないぞという気迫を感じますね」(MC武井壮)

「東京(五輪)に出られなかった悔しさが吉村選手を奮い立たせているのかなと思います」(平野)

吉村の武器のひとつが強烈なフォアハンドのアップダウンサーブだが、この試合ではこれまで見せたことのないバックサーブを披露。あまり回転がかかっていないように見えるが「相手のレシーブを単調にする効果がある」(平野)という。

ここにきてまた新しい戦術を模索する吉村の向上心・挑戦心には頭が下がる。

バックサーブを駆使した吉村は、ルーをストレートで下し、初の世界選手権男子シングルスを勝利で飾った。

「卓球ジャパン!」BSテレ東で毎週土曜夜10時30分放送