8月に40歳になる中村剛也は、鷹・柳田、オリ・杉本と並ぶ8本塁打 今年8月15日に40歳になる西武・中村剛也内野手は23…

8月に40歳になる中村剛也は、鷹・柳田、オリ・杉本と並ぶ8本塁打

 今年8月15日に40歳になる西武・中村剛也内野手は23日時点でリーグトップタイの8本塁打を記録。NPB史上3位の6度の本塁打王を獲得してきたベテランは7度目の戴冠を果たせるだろうか。35年前の1988年には同じく40歳でシーズンを迎えた門田博光氏が打率.311、44本塁打、125打点で、本塁打と打点の2冠を獲得。「不惑の大砲」と称された。今回は中村と門田氏の球歴や、今季の中村が記録している各種指標を紹介する。

 中村は大阪桐蔭高から2001年ドラフト2巡目で西武に入団。4年目の2005年に22本塁打、OPS.924をマークし、「おかわり君」の愛称で注目された。2008年には46本塁打で自身初の本塁打王に。チームのリーグ優勝と日本一にも貢献した。4番に座った2009年は48本塁打、122打点、OPS1.010。2年連続本塁打王に加えて、自身初の打点王の2冠を達成した。2011年は統一球導入の影響で極端な投高打低となる中、リーグ全体の1割以上を占める本塁打数を1人で記録。自身2度目の2冠王に輝いた。

 その後も2012年、2014年、2015年に本塁打王を獲得し、2015年には自身3度目の2冠王に輝いた。2018年には100試合未満の出場ながら28本塁打を記録。2019年は4年ぶりの30本塁打に加えて自己最高の打率.286を記録し、36歳にして4度目の打点王を手にした。38歳で迎えた2021年にも打率.284。昨年は打率.196、OPS.597と低迷したが、今季はOPS.958と復活し、打率.319、出塁率.400と、新境地を開拓しつつある。

 門田氏はクラレ岡山から1969年ドラフト2位で南海に入団。強肩強打の外野手として頭角を現し、2年目の1971年に打率.300、31本塁打、120打点で打点王を獲得。同年から3年連続打率3割以上を記録した。1979年にアキレス腱断裂の重傷を負って長期離脱したが、復帰した1980年には自身初の40本塁打超え。1981年は打率.313、44本塁打、105打点で、自身初の本塁打王に輝いた。

 1983年には40本塁打で自身2度目の本塁打王に。40歳で迎えた1988年には打率.311、44本塁打、125打点で2冠に加えてシーズンMVPにも輝いた。40歳を意味する「不惑」、門田氏を称した「不惑の大砲」という言葉が世間で流行するほどのインパクトを残した。翌1989年はホークスの福岡移転に伴って新天地のオリックスで迎え、打率.305、33本塁打、93打点。1990年も31本塁打を記録するなど、現役生活の晩年でも驚異的な活躍を見せた。通算567本塁打、1678打点は、ともに王貞治氏と野村克也氏に次ぐ歴代3位だ。

今季は長打力復活に加え、「確実性」も大きく向上

 中村は今季、長打率.558、OPS.958をマーク。いずれもキャリア通算(長打率.511、OPS.851)の値を上回る。2年連続で本塁打王を獲得した2014、15年と遜色のない数字で、今季の充実ぶりがうかがえる。長打率から単打の影響を除外した、真の長打力を示す指標ともいえる「ISO」にも変化が見られる。過去3シーズンはいずれも.150台だったが、今季は.239。30本塁打を放った2019年と同程度の数字になっている。

 出塁率から打率を引いて求める「IsoD」も.081。キャリア平均の.085に近い数字まで向上している。四球を三振で割って求める、打者の選球眼を示す「BB/K」は.652。キャリア平均の.401を大きく上回りキャリアで最高の水準を示している。

 選球眼を支える動体視力は、一般的には加齢とともに落ちていくとされる。だが、中村は選球眼がむしろ向上している。今年の4月29日にNPB史上初の通算2000三振を記録したように、強振する打撃スタイルの持ち主であることを考えれば、今季の確実性の向上は著しいと言える。

 確実性という観点でいえば、打率が.319に達している点も興味深い。これまでシーズン打率.300を記録したことはないだけに、打撃面での顕著な変化の表れと考えられる。それでいて、1本のホームランが出るまでに必要な打席数を示す「AB/HR」は14.13と、37本塁打を放った2015年の14.08に近い水準となっている。確実性が高まりながら長打力も失われていない今季の打撃内容を考えれば、このまま全盛期に近い数字を残す可能性も十分にあるはずだ。

 通算567本塁打で本塁打王3度の門田氏と、通算462本塁打で本塁打王6度の中村。活躍した年代は違うが、いずれも10年以上にわたって和製大砲として圧倒的な活躍を見せてきた。怪我を乗り越えて数多の記録を樹立し、ベテランとなってからも年齢を感じさせない打撃を見せてきたところも2人の共通点といえる。今季はそれに加えて「40代で主要打撃タイトル獲得」という驚異的な記録が、新たな共通点として加わるかもしれない。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)