浅井樹氏は遠征の際、野村謙二郎氏&緒方孝市氏と一緒に球場へ移動していた 野村謙二郎氏と緒方孝市氏。いずれも現役時代は主力…
浅井樹氏は遠征の際、野村謙二郎氏&緒方孝市氏と一緒に球場へ移動していた
野村謙二郎氏と緒方孝市氏。いずれも現役時代は主力選手として、引退後は指揮官としてカープを支えたが、この偉大な2人に元広島外野手の浅井樹氏(現カープ・ベースボールクリニックコーチ)はよく勉強させてもらったという。3人が選手だった頃、遠征先の宿舎、球場間の往復タクシー移動はこのメンバーで行くことが決まっており、その車中で野球談義を繰り広げていた。「まあ、熱かったですよ」と懐かしんだ。
「カープって当時、遠征先で球場までの移動はバス1台とタクシー数台で行くんですよ。で、そのタクシー組の1台が野村、緒方、浅井で決まっていた。野村さんが助手席に乗って、僕が運転手の後ろ、そして緒方さんって配置も決まっていたんです」。浅井氏は振り返りながら、笑みを浮かべた。
「行きは3人とも寝ているんですけど、帰りは勝っても負けても野球の話でした。“おう、今日の何回のあれ、どうだった”みたいな感じで野村さんが言ったら、緒方さんもそれに答えて。2人の”あそこはやっぱりああだろ、こうだろ”っていう話を聞かされているから、2人の野球観っていうのは僕もなんとなくわかったような……」
2人の話を聞くだけでなく“議論”には浅井氏も参加していたそうだ。「僕の意見もちゃんと聞いてくれましたからね。お前どう思うんや、僕はこうこうこうですってね。ホント、貴重な時間だったですよ。たまに、その流れで“飯行くぞ”ってなった時もありました。もちろん、またそこから野球の話でしたけどね」。
前田智徳氏の練習量に驚嘆「ずっと打っている」
三村敏之氏が広島の1軍監督だった1994年から1998年、赤ヘル打線はMLBのシンシナティ・レッズ打線になぞらえて「ビッグレッドマシン」と呼ばれた。浅井氏は野村氏や緒方氏、前田智徳氏、金本知憲氏ら、当時の主力選手たちの凄さをよく知っている。
「緒方さんにしたって、スゲー練習していたし、前田なんかもね。キャンプで紅白戦やるじゃないですか。2時間くらい試合するわけですよね。前田とかは紅白戦免除なんですけど、その試合の間、ずっと打っているんですよ。あんな選手が2時間バッティング練習を毎日やっていたら、僕なんか追いつけないですよ」
金本氏のことでも覚えていることがあるという。「金さんと2軍の時、キャンプの宿舎で同じ部屋だったんですが、ある時『俺、つかんだわ』って言われた時があったんです。ホンマですかって話ですよね。でも次の日、金さんはボコボコ打ったんですよ。ホントそこから打ち出して、1軍に上がっていきました」。これも練習の賜物だ。「金さんは貪欲でしたね。みんなレギュラーになりたいと思ってやっているけど、金さんの思いは誰よりも強かったですね」。
まさに猛烈な人間の集まりだった。「ホントすごい環境でやらせてもらいましたよ。そんな人たちばっかりですもん。ほっといたら、ずっと練習しているような人たちばかりですよ。そりゃあ、こっちも練習しますよ。だって、練習しなかったら、置いていかれていくだけですから」。ハイレベル軍団と行動をともにすることで、大きな刺激を受けて、浅井氏の技量もアップした。ビッグレッドマシンはそんな選手たちの集合体だった。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)