元広島・浅井樹氏が語る…前田智徳氏は「とんでもない同級生」 同期に前田智徳外野手がいた。ドラフト4位入団、熊本工出身の同…

元広島・浅井樹氏が語る…前田智徳氏は「とんでもない同級生」

 同期に前田智徳外野手がいた。ドラフト4位入団、熊本工出身の同い年のライバルはとてつもなかった。元広島外野手の浅井樹氏(カープ・ベースボールクリニックコーチ)はドラフト6位で富山商から入団したが、いきなり、衝撃を受けた。「すごかった。バッティングがすごかった」。プロ1年目、1990年の宮崎・日南キャンプで、浅井氏は前田氏と並んで打撃練習をするケースが多かったそうだが、明らかに違いがあったという。

「前田は熊工の時から有名でした。甲子園にも出ていましたから、知ってましたよ。あっ一緒なんだと思いましたね。まぁ、最初はいっちょやったるか、かかってこい、みたいな感じでしたよ。同級生くらいには何とかいけるだろう、負けるはずはないと思ってましたから」。だが、現実は違った。宮崎・日南での2軍キャンプ。「とんでもない同級生っているんだなと思った」という。

「あの当時、1年目はキャンプに遅れて入っていたので、別メニュー。まだ体ができていないということでね。今でこそ、新人は自主トレからずっと一緒にやって、普通にメニューをこなすけど、僕らの時は別メニューだった。それで前田と2人で、あの頃、天福球場のレフトのところにあった屋根付きの練習場にバッティングをしにいったんです」。まず、そこで差を感じたそうだ。

「アーム式のマシンとタイヤ式のマシンが置いてあって、お前ら、それを打て、時間が来たら、交代するからって言われて、最初は前田がアーム、僕がタイヤを打った。2人ともカンカン打ちましたよ。で、交代となったら、僕、アーム式にバット振っても1個も当たらなかった。前田はそれを簡単に打っていたんですよ」。日南・東光寺球場での2次キャンプでは2人でランチ特打を行った。「先輩たちは午前中に守備をやって、ランチを取って昼からバッティング。僕らは守備やって、ランチの時間に先にバッティングせえってね。前田はすごかったですよ」。

1年目のキャンプ…前田氏の打撃練習を先輩たちが箸を止めて見つめた

 弁当を食べていた先輩たちが箸を止めて、前田の打撃を見ていたのがわかったという。「僕ではなく、みんな前田を見てましたよ。そりゃあパワーだけだったら、僕が勝っていたと思いますよ。でも芯に当てる確率とかが全然違った。体は僕より一回りは小さいのに、飛距離も出るし、当時の前田の技術がどこまでっていうのは理解できていなかったですけど、パッと見、スゲーな、しかなかった。すごいシンプルなスイングでね」。

 前田には守備でも走塁でも、能力を見せつけられた。「僕だって足も肩も負けてなかったはずなんですが、前田を見ると、自分がすべてにおいて劣っているようにしか感じなかったですね」。実際、その差は実戦に入って如実に出た。「前田は2軍でもすぐにレギュラー。僕はたまに代打で出るくらいでしたからね。でも、スゲーなって思いながら、あの頃はまだ、クソっ、負けるか、みたいな気持ちはありました。口もまともにきいてなかったですしね」。

 1990年6月6日のヤクルト戦(広島)に、ルーキーだった前田氏は「6番センター」でスタメン出場して1軍公式戦デビュー。いきなり第1打席でタイムリー二塁打を放つなど、4打数2安打1打点と結果も出した。浅井氏はその試合を見ながら「やっぱり打つよなぁと思った」という。そして、前田氏との縁はまだまだ続くことになる。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)