サッカーのU−20W杯が5月20日に開幕(〜6月11日、開催地:アルゼンチン)する。新型コロナの影響で前回大会が中止と…

 サッカーのU−20W杯が5月20日に開幕(〜6月11日、開催地:アルゼンチン)する。新型コロナの影響で前回大会が中止となり、2019年以来4年ぶりの開催となる今大会で、冨樫剛一監督率いる若き日本代表はどのような戦いを演じることができるのか。目標に掲げた「世界一」を果たすための注目ポイントを挙げたい。

 まず1つ目は、この世代の顔である松木玖生(FC東京)である。青森山田高校で1年時から全国舞台で活躍して「キング」の異名を取った男は、FC東京に入団してからも10代とは思えない存在感を放ち、代表招集での離脱時以外は不動のレギュラーとして奮闘を続けている。大会直前のU−20アルゼンチン代表との練習試合(1−2)でもチーム唯一のゴールを決めており、状態はいい。強靭なフィジカルと強烈な左足、類稀なリーダーシップは、他の日本人選手とは一線を画す。その能力が世界舞台で通用するかどうかは、今大会の日本において大きなポイントになる。

 2つ目として、4人の海外組に注目したい。スペイン育ちの左サイドバック、髙橋仁胡(バルセロナ)に加え、高校卒業後にJリーグを経ずに海外移籍を果たしたチェイス・アンリ(シュツットガルト)、福田師王(ボルシアMG)、トップ昇格2年目の18歳で海を渡った福井太智(バイエルン)、いずれもトップチームの所属ではないが、サッカーの最先端である欧州の空気の中で日常を過ごしており、彼らの活躍が一つの鍵となる。この「海外組の多さ」は過去のU−20代表にはなかったもの。日本のファンにとっても、彼らが「どれだけ成長しているのか」、「どのようなプレーをするのか」という興味、そして期待は大きい。

■アジアでの戦いとは異なる手法

 そして3つ目、過密日程の中でターンオーバーも重要になる。今大会、グループステージは中2日の日程で3試合を行い、決勝トーナメント以降も中2日、3日でのスケジュールとなっている。同じ中2日だった東京五輪、中3日だったカタールW杯同様、全試合を同じスタメンで臨むことは現実的ではなく、選出21人のメンバーを、より効果的に起用することが、試合を優位に進めるための大きな鍵となる。

 冨樫監督は今回、複数ポジションでプレーできる選手を多く選んでおり、組み合わせは何パターンも考えられる。基本は4−2−3−1システムが予想されるが、選手のコンディションの見極めた上で、どのメンバーで臨むのかが、試合前の最初のポイントになる。

 さらに4つ目、“切り札”が誰になるか、だ。交代枠5人が定着した中で、試合途中の戦術変更と“切り札”の投入は、有効かつ常套手段になっている。カタールW杯での森保ジャパンでは三笘薫がその役割を担ったが、今回のU−20日本代表にも同じような人材が、特にビハインドを負った展開になった場合は必要になる。

 U−20アジア杯では、永長鷹虎(川崎フロンターレ)が後半からピッチに立って切れ味鋭いドリブル突破でチャンスを作り出す場面が多かったが、スタメンで出場していた甲田英將名古屋グランパス)や横山歩夢(サガン鳥栖)が今回は不在。

 永長が前半からピッチに立った場合、アジアでの戦いとは異なる手法が必要になる。熊田直紀(FC東京)、坂本一彩(ファジアーノ岡山)、福田師王(ボルシアMG)の3人のFWの起用法、投入のタイミングが鍵を握りそうだ。

◽️日本代表の過去最高位は1999年の準優勝

 そして5つ目、相手チームの実力が肝心である。グループステージでは、5月21日の初戦でU−20セネガル、同24日の第2戦でU−20コロンビア、同27日の第3戦でU−20イスラエルと対戦する。いずれもA代表の実力は世界的には「中堅」と言え、最新のFIFAランクでも日本の20位に対し、セネガルが18位、コロンビアが17位、イスラエルは78位である。

 しかし、セネガルは今大会の予選も兼ねたアフリカU―20ネーションズリーグで優勝し、イスラエルはU−19欧州選手権でフランスを破って2位に入っている。いずれも侮れないチーム、むしろ“格上”として戦略を立て、試合に臨むべきだろう。

 前回2017年の韓国大会は、南アフリカ、ウルグアイ、イタリアと同組だったグループステージを1勝1分け1敗の3位でしぶとく通過するも、決勝トーナメント1回戦でベネズエラに敗れた。その上で、今大会に臨む冨樫監督は「目標は世界一」と断言している。

 過去、男子サッカーのすべての世代での日本代表の最高位は、のちに黄金世代と呼ばれる面々が成し遂げた1999年ワールドユース(U−20W杯の前身大会)での準優勝。今回のU−20日本代表が、その記録を塗り替えられるか。彼らが日本サッカーの未来を背負っていることは、間違いない。

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