ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<04>メイン平(リコーブラックラムズ東京)前編 ニュージーランド出身の父と宮崎県出身の母を持ち、奈良・御所実業高校では1年生ながら主力として「花園」全国高校ラグビー大会ベスト4…

ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<04>
メイン平(リコーブラックラムズ東京)前編

 ニュージーランド出身の父と宮崎県出身の母を持ち、奈良・御所実業高校では1年生ながら主力として「花園」全国高校ラグビー大会ベスト4進出に貢献。現在リコーブラックラムズ東京に所属している22歳のメイン平は、早くから将来を嘱望されてきた万能BKだ。

 常に注目を集めるメインは高校卒業後、「小さい頃からスーパーラグビーチームに憧れていた」という夢を叶えるため、単身でニュージーランドに武者修行に行く。ラグビー王国の壁は厚く2年で帰国するも、同級生が大学でキャンパスライフを送るなか、メインは20歳でブラックラムズとプロ契約を結んだ。

 その才能を、日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHCも放っておくはずがない。昨年6月、メインは21歳で初キャップを獲得。現在はケガからのリハビリ中だが、再び日本代表にいつ呼ばれてもいいように日々磨きをかけている。

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メイン平●2000年9月5日生まれ・宮崎県宮崎市出身

── 昨年春に日本代表予備軍「NDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)」に招集されたのは"寝耳に水"だったそうですね。

「昨シーズンのオフだった5月、アメリカに1週間くらい行ってロスで大谷翔平選手のホームランを見て戻ってきたら、急にタイミングよく呼ばれました(笑)。日本代表候補にも入っておらず(NDSに)招集されるとも思ってなかったので、驚きと......ちょっとワクワクも。当初は2週間だけの合宿予定だったので、楽しめたらいいなという軽い気持ちで参加しました」

── その後、テストマッチにも出場して日本代表にも昇格しました。

「トンガ・サムライXV戦(2022年6月9日)にはFB(フルバック)で15分くらいしか出られませんでしたが、自分の強みを発揮してインパクトは残せたので、続くテストマッチ(ウルグアイ代表・第1戦@秩父宮)のメンバーに入ることができました。

 そこでも自分らしいプレーができたことで、日本代表に上げてもらえたのだと思います。こんなにも早く初キャップが取れるとは思ってなかったので、めちゃくちゃうれしかったです! 両親も秩父宮ラグビー場に見に来てくれたので、いい親孝行ができたかなと」

── 日本代表に昇格し、故郷・宮崎での合宿にも参加しました。

「僕は宮崎空港の近くに住んでいましたので、降り立った空港の景色は見慣れているはずなんですけど、緊張していたからなのか何かちょっと違って不思議でした。小さい頃から、時間があれば宮崎での日本代表合宿を見にいっていましたから。

 だから、その同じ場所に立てたのは、とてもうれしかったですね。実家にはマツさん(松島幸太朗/東京サンゴリアス)、中村亮土さん(東京サンゴリアス)、田村優さん(横浜キヤノンイーグルス)、リーチ(マイケル/東芝ブレイブルーパス東京)さんと一緒に撮った写真を飾っています」

── 初の日本代表合宿で得たことは?

「練習に対する姿勢、練習前の準備、そして練習外でのプレー映像分析など、プロフェッショナルな環境に入れさせてもらいました。それがブラックラムズに戻ってきてもスタンダードになったので、僕のなかでの意識は変わりました。

 特にリーチさんは代表で長年活動されている方なので、まさにその経験を背中で語るような存在でした。あと、BKではCTB(センター)ディラン・ライリーさん(埼玉ワイルドナイツ)のスキルが高くて、フィジカルもスピードもあって、本当にすごかったです。日本代表のなかでもひとりだけポテンシャルが違っていましたね」

── 日本代表に選ばれているSO(スタンドオフ)李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)選手とは同い歳で、仲もいいそうですね。

「そうですね。記事で『ライバル関係』と書かれたりもしますが、全然意識はしていませんし、普通の友だちです(笑)。でも、彼の活躍は励みにはなりますね。ふたりでいつか一緒に(日本代表として)出てみたいです!」

── 昨秋も再び日本代表に招集されました。

「昨年9月から日本代表合宿に参加し、欧州遠征にも行って長い期間ずっと帯同し、練習からほかの選手のいいところを盗めるように取り組んできました。しかし、1試合も試合に出られなかった......。

 最初は15番(FB)で練習していましたけど、おそらくパフォーマンスがよくなかったのでしょう。途中からWTB(ウィング)やCTBもやりました。ただ、ジェイミー(・ジョセフHC)さんとブラウニー(トニー・ブラウン・コーチ)さんの下で日本代表のラグビーがどのようにプレーされているのかを肌で感じられたのは、自分のなかでは大きかったです」

── 松島選手といった中軸選手の壁は厚く、チャンスも少なかったでしょうか?

「試合に出ている選手は実績があって、実力も伴っています。昨年秋のオーストラリアA代表との3連戦はセレクションの意味合いもあったと思うのですが、1試合も出られませんでした。それがその後の欧州遠征にも響いたと思っています。最初にチャンスを掴めなかったことは悔やまれます」

── 昨年10月末、小さい頃から憧れていたお父さんの母国であるニュージーランドの代表チーム「オールブラックス」との試合は、残念ながらスタンドから見る形となってしまいました。

「同じ宮崎ラグビースクール出身のPR(プロップ)竹内柊平くん(浦安D-Rocks)はリザーブから試合に出場しましたね。内容もいい試合(31-38)だったので、ちょっと悔しかった......。なのでもう一度、日本代表に入って、次こそはオールブラックスと対戦したいです!」

── 欧州遠征が終わったあと、日本代表のコーチ陣からフィードバックはありましたか?

「リーグワンのシーズンが始まった時期にブラウニーさんから電話はありました。(ブラックラムズでは)WTBとして試合に出ていたので、ほかの選手と比べたら攻撃力の部分でトライを取りきれるわけでもないですが、『ディフェンスの部分がすごくいいから、そこを強みにして伸ばしていけ』とアドバイスをもらいました」

── WTBだけでなく、FBやインサイドCTBでプレーできるユーティリティさも、メイン選手の武器だと思います。

「チーム事情もあって、今季のブラックラムズではWTBでプレーしています。ボールを触る機会が少ないので、15番や12番(インサイドCTB)でプレーできたら楽しいでしょうね。

 ただ、どこでも出られるように、いろんなポジションの映像を見て知識をしっかりと入れています。昨年の日本代表活動でも感じましたが、やはりユーティリティな選手がリザーブとして重宝されているので、WTBだけの選手よりちょっとアドバンテージはあると思っています」

── 今シーズンは第10節のグリーンロケッツ東葛戦(3月4日)で左足にケガを負うまで、リーグワンで好調をキープしていました。

「それまで全試合に出場していたので、ケガが治ればその部分をしっかりアピールしたいです。自分の強みであるボールを持った時のランと、今季頑張っているディフェンス面で表現できたらと思っています。

 日本代表として、再び同じ舞台に戻りたい。もちろん、ワールドカップに出たい気持ちも強くあります。まずはしっかりと、自分のできることをやっていきたいですね」

「円盤投げで優勝、高校卒業後に単身NZ、20歳でプロ契約」

【profile】
メイン平(たいら)
2000年9月5日生まれ、宮崎県宮崎市出身。奈良・御所実業高を卒業後、父の母国であるニュージーランドに渡ってクラブチームのノースハーバーマリストでプレー。2020年、リコーブラックラムズ(現・リコーブラックラムズ東京)に加入する。日本代表歴は2022年6月のウルグアイ代表戦で初キャップを獲得。ポジション=WTBウィング、CTBセンター、FBフルバック。身長180cm、体重92kg。