「うれしいですけれど、今はまだ悔しい気持ちのほうが強いです」 銀メダルを首にかけて谷田康真(北海道クボタ)は、そう苦笑いを浮かべた。 韓国・江陵で行なわれたカーリングのミックスダブルス世界選手権で、谷田と松村千秋(中部電力)のペアは日本代表…

「うれしいですけれど、今はまだ悔しい気持ちのほうが強いです」

 銀メダルを首にかけて谷田康真(北海道クボタ)は、そう苦笑いを浮かべた。

 韓国・江陵で行なわれたカーリングのミックスダブルス世界選手権で、谷田と松村千秋(中部電力)のペアは日本代表として、史上初めて決勝進出を果たした。決勝では、ほぼミスのないプレーを続けたアメリカ代表ペアに及ばなかったが、準優勝という快挙を成し遂げた。



ミックスダブルス世界選手権で銀メダルを獲得した谷田康真(写真左)と松村千秋ペア

 ミックスダブルス世界選手権は近年、出場20カ国を2つのブロックに分けて、10チームによる総当たりの予選リーグ(ラウンドロビン)を実施。各ブロック上位3チーム、計6チームがクオリファイ(プレーオフ進出)というレギュレーションを採用している。

 スイス・ジュネーブで行なわれた昨年の世界選手権にも出場した谷田と松村ペア。同大会では6勝3敗という成績を残しながら、予選敗退を喫している。

「去年は(世界選手権)初出場でしたし、『これくらいの成績なら上がれる(クオリファイできる)だろう』という、どこか甘さのようなものがあったかもしません。でも、6勝しても上に行けなかったのは本当に悔しかったので、この一年をかけて(そうした甘さを捨てて)取り組んできた。

 それでも今回は、7勝して(ラウンドロビンで)落ちたチームがあった。"勝ちきる"ということは、本当に大切なことだなと改めて感じました」

 予選リーグを8勝1敗で突破した谷田がそう振り返ったように、今大会もハイレベルで予測不能な激戦だった。谷田が言う「7勝して落ちた」チームというのも、予選リーグで日本に唯一土をつけたスイスだった。

 その他、昨年の銅メダリストであるドイツ代表ペアが日本と同じブロックで予選敗退となった。逆ブロックでも、北京五輪のミックスダブルスで金メダルを獲得したステファニア・コンスタンティーニ擁するイタリア代表ペアが、黒星が先行してクオリファイ進出を逃している。

 対戦順や対戦相手との相性、さらには試合ごとのアイスの変化や、チームの調子の善し悪しなど、さまざまな要素が絡み合って混戦必至となるのが、ミックスダブルスだ。しかも、実力面での代謝が早く、数年で勢力図が大きく変わる。カナダ、スイス、スウェーデンといった4人制のカーリングでは強豪とされる国々であっても、継続して結果を出していくのは難しい。

 それゆえ、谷田は「そういう競技ですし、そういうレベルの大会になっているということです」と、世界的にも実力差が小さくなっていることを強調する。

 だからこそ今回、日本代表ペアがそこで"勝ちきれた"こと、ファイナルまで残ったことには大きな意味がある。谷田が言う。

「この一年やってきたことが間違いじゃなかった、という手応えは確かにあります」

 ただ、残念ながら決勝では勝ちきることができなかった。松村は「まずは本当にアメリカがうまかった」と初優勝を飾った王者を称えたあと、こう語った。

「私たちのパフォーマンスは、大会を通して悪くなかったと思います。でもそれを、決勝戦でも出せるかどうか。(決勝で)もっともっとできたと思うけれど、メンタルや技術の持ち方は実際に決勝のアイスに上がってみないとわからなかった。そこは、今後の課題ですね」

 このミックスダブルスも、来季から2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を巡る戦いがいよいよ始まる。

 五輪出場は10カ国だが、開催国イタリアを除けば、その枠は9。そのうち、7枠が2024年と2025年の世界選手権の結果で振り分けられる。そして残りの2枠は、おそらく五輪直前に開催される世界最終予選で決まることになるだろう。

 前回の北京五輪の際は、谷田と松村のペアが日本代表として世界最終予選に出場。惜しくも結果を出すことができなかったが、2026年に向けては、「最終予選は本当に厳しい。そっちに行かなくていいように、2回の世界選手権で(五輪出場)枠をとるつもりで準備します」と、谷田は言いきった。

 そのためには、まずは日本選手権を制し、再びこの世界選手権の舞台に戻ってこなくてはいけないが、谷田と松村ペアとしても、日本としても、ミックスダブルスでの初の五輪出場――その道筋が明確に見えた江陵での11試合だった。