とりわけ前半は、出色のパフォーマンスだった。 ソリッドな守備でリーグナンバー1の攻撃力を誇る横浜F・マリノスにほとんど…

 とりわけ前半は、出色のパフォーマンスだった。

 ソリッドな守備でリーグナンバー1の攻撃力を誇る横浜F・マリノスにほとんど何もさせず、41分には左ウイングバックを務める森下龍矢の個人技から先制ゴールを奪取。ほかにも鋭いショートカウンターからゴールに迫るなど、さらなる得点の予感も漂っていた。

 だからこそ、長谷川健太監督は悔やむのだ。



2022年から名古屋を率いる長谷川健太監督

「展開的に言えば、もう1点取りたかった。2点目を取っていれば、勝てた試合でした」

 パーフェクトと称してもいい前半を過ごした名古屋グランパスだったが、全体的に動きが落ちた後半に反攻の糸口を与え、72分に喜田拓也に同点ゴールを許してしまう。その後は両者に決定打が生まれず、注目の上位対決は1-1の痛み分けに終わった。

「前半から全員がチームの狙いを遂行し、戦ってくれた」

 長谷川監督が振り返ったように、名古屋にとっては狙いどおりの前半だっただろう。際立ったのは、相手に一分の隙も与えない守備だ。

 1トップに入った酒井宣福が横浜FMのボランチを徹底監視し、ビルドアップを自由にさせない。トップ下のマルコス・ジュニオールにボールが入ればボランチの稲垣祥がすぐさまつぶし、相手の3トップには名古屋の3バックが激しくチャージして前を向かせなかった。

 ビルドアップを寸断され、前線に起点も作れなかった横浜FMはシュートを打つことさえままならなかった。

「マリノスのトップ下とボランチをフリーにすると、攻撃が流れてしまうので、そこをどうやって断つのかがひとつのポイントでした」

 長谷川監督の思惑どおりに、名古屋はマンツーマンとも言える対応で横浜FMの攻撃を沈黙させた。一度だけマルコス・ジュニオールに個人技で密集地帯をかいくぐられたが、決定的な左足シュートもGKランゲラックがあっさりとセーブ。横浜FMにとってはようやく訪れたチャンスだったが、ゴール前に立ちはだかる守護神の存在は、絶望にも感じられるほどだった。

【足がつってしまう選手も...】

 堅守がウリの名古屋は、今季もこのストロングポイントを活かしたサッカーで、ここまで上位争いを演じている。

 もっとも昨季もリーグ最少失点を記録しながら、8位にとどまった。しかし今季は9節終了時点でヴィッセル神戸に次いで2位につける。昨季との違いについて守備の要を担う中谷進之介は、「カウンターが確実に鋭くなりましたよね」と即答した。

「今までもカウンターは持っていましたけど、去年の途中に(永井)謙佑くんが入って、今年はキャスパー(ユンカー)も入ったことで、カウンターに関しては明らかに相手も怖がっていると感じます。守備が堅いのは大前提で、ゴール前の精度を上げていけば、もっと点が取れると思うし、もっと上に食い込んでいけるのかなと思います」

 この日はユンカーがコンディション不良でスタメンを外れたが、ボールを奪えば永井とマテウス・カストロの2シャドーに加え、森下と内田宅哉の両翼も鋭く敵陣を突き進んだ。このカウンターの存在も、横浜FMのビルドアップを難しくした要因だったはずだ。

 しかし、完璧な前半を過ごしながらも勝ちきれなかった。追いつかれての引き分けは、前節の湘南ベルマーレ戦に続いての結末である。

 後半に隙が生まれたのは、守備の強度を前半ほど高められなかったことが原因だろう。奪いにいく守備ではなく、構える形となってしまった。「前半と後半で守備のやり方を変えたのか?」と問うと「変えざるを得なかった、という表現が正しいかなと思います」と中谷は答えた。

「もっと前半のように前から行きたかったんですが、体力的な問題もあったと思います。前線はカウンターで出ていく回数も多いので、どうしてもスプリントの回数が増えて、守備に労力を割けきれなかったのかなと」

 たしかにこのスタイルは、攻撃陣に負担がかかるものなのだろう。DFのように振る舞っていた酒井は68分に足をつり、ピッチを退いている。

 また、中谷は前節に続いて守りきれなかったことについて「そこは課題ですね。今日はこっちに得点のチャンスがあって、向こうのチャンスはそこまで多くなかったなかで、失点してしまったので。守備が堅い名古屋としては悔しい結果になってしまった」と唇をかんだ。

【次節は首位・神戸との大一番】

 一方で、長谷川監督は守りきれなかったことよりも、追加点を奪えなかったことが痛かったと振り返る。そして改善策として「ディティール」を突き詰めていくことが重要だと話した。

「たとえば今日もクロスをフリーで上げていて、中もフリーなのに、1枚のディフェンスにクリアされてしまったり。ああいうところのラストパスのクオリティをさらに上げていく必要は当然ある」

 それでも勝ちきれなかったとはいえ、昨季2敗と歯が立たなかった横浜FMと敵地で互角の戦いを演じられたのは、小さくない自信となったはずだ。

「結果としては悪くないと思います。内容的には僕らにチャンスがあったので悔しいですけど、去年の豊田スタジアムでの惨敗(0-4)からは進歩していると思います。充実した内容だったからこそ勝ちたかったけど、去年から比べれば悪くない。健太さんの戦術に僕らが適応することができたと思います」(中谷)

 堅守はさらに磨かれ、速攻の鋭さも増している今季の名古屋は、昨季より指揮を執る長谷川監督の下、「堅守速攻」スタイルに迷いなく向き合っているように感じられる。

 ちなみに長谷川監督のキャリアを振り返ると、就任2年目に大きな成果を上げていることが分かる。清水エスパルスでは前年15位から4位と躍進を遂げ、ガンバ大阪では3冠を達成。FC東京では最終節まで横浜FMと優勝を争った。それは指揮官が求めるスタイルの浸透の証だろう。

 そして名古屋に今季、同じことが起きたとしても不思議ではない。

 次節は首位に立つ神戸との大一番となる。ここをモノにすれば、あるいは......。