石川祐希のAttack The World vol.3(vol.2:日本代表で得た「濃い経験」 全員が「この1点をもぎ取る力をつけようと思ったはず」>>) 佳境を迎えているイタリア1部リーグ。石川祐希が所属するミラノはプレーオフ準々決勝で、…

石川祐希のAttack The World vol.3

(vol.2:日本代表で得た「濃い経験」 全員が「この1点をもぎ取る力をつけようと思ったはず」>>)

 佳境を迎えているイタリア1部リーグ。石川祐希が所属するミラノはプレーオフ準々決勝で、レギュラーシーズン無敗だったペルージャを撃破し、クラブ史上初めて準決勝に進出した。準決勝では、昨季王者のチビタノーバと最終第5戦までもつれる激闘を繰り広げたが、惜しくも敗戦し、3位決定戦に回ることが決まった。歴史を切り開く石川に見えた景色とは。



ミラノの主力選手としてプレーオフで活躍する石川

【もっとも決勝に近づいた瞬間】

――惜しくも決勝に届きませんでした。チビタノーバとの第5戦を振り返り、どう感じていますか?

「悔しい思いが強いです。もったいないミスがちょっと多かったと感じています。ブロックでワンタッチを取ったり、ディフェンスで上げたりしたボールをアタッカーが決められなかった。

 二段トスも精度がちょっと低かったです。第4セットの23-23で、(マッテオ・)ピアノ選手(イタリア代表)がクイックをアウトにしてしまった。そのクイックにつながる1本目のチャンスボールは僕が返しましたが、パスを少しネットから離してしまいました。チャンスボールが返ってきたのがアタックラインあたりで、僕もバックアタックを打ちたいと思っていました。パスしてから助走を取るために下がらないといけなかったので、助走を取ることを考えすぎてパスが雑になってしまった。反省点です」

――もっとも「決勝に近づいた」と感じた瞬間はいつでしたか。

「間違いなく(2勝1敗と王手をかけて迎えた)第4戦。その第4セットですね」

――第4戦の第4セットは21-19とリードしていましたが、22-25と逆転されて奪われました。

「(21-20で)僕のパイプをブロックされたところから始まったと思います。あそこはなんとか決め切りたかった。それまでは勝負強さに関しては悪くなかったですが、あの場面ではちょっと勝敗を意識しすぎたなと思います。

 実は、4セット目の最初に足を攣(つ)りかけていました。ミラド(・エバディプール)選手(イラン代表)がケガをしてから、僕の代わりはいなかったので『攣らないかな』『攣ったら代わりはいないぞ』という心配をしていました。20点以降はそんなことは考えていなかったのですが......」

【「次は大丈夫」来季の目標は優勝】

――準決勝で敗れたとはいえ、ペルージャに勝ち、昨季王者を土俵際まで追い詰めました。チームとして成長や手ごたえを感じたのはどういうところでしょうか?

「プレーオフが始まってから明らかにパフォーマンスが変わってきたし、チームとしても機能するようになっていました。個人としても勝負できていた。約4週間で計10戦やって、疲れもあったけど悪くないクオリティで勝負ができました。

 ペルージャ、チビタノーバはうまくメンバーチェンジしながらやっていましたが、僕たちは後半はずっと固定のメンバーでした。その中でも接戦を繰り広げられていたので、そこには成長を感じました」

――チームとしても個人としても、階段をひとつ上がれたという手応えもあるのではないでしょうか?

「その感じはあります。ペルージャに勝ち、チビタノーバとも5戦目までもつれ込んで、最後も僅差の試合でした。『本当にあと一歩だな』と感じましたし、どこが勝ってもおかしくないという試合はできたと思います。結果は望むものではなかったですけど、自分たちの思い描いた戦いはできました」

――決勝進出や優勝も遠い目標ではなく、手が届きそうなところまで来ました。

「決勝に手がかかっていたけど、自ら手放してしまった感じです。チビタノーバは去年勝っている選手がコートに5人いたので、その経験の差が出たのかなと思います。なので、次にやるときは大丈夫。来季の目標は決勝に行って優勝することしかありません」

――チビタノーバとの第4戦の4連続サービスエースは圧巻でした。

「その日の午前中の練習では、約15本のサーブを打って10本くらいミスしました。でも、やるべきことはわかっていたので、それができれば問題ないと思っていました。試合前の公式練習でトスを少し高く上げること、落ちてくるボールを打つのではなく、自らボールを打ちにいくことを意識する、というちょっとした感覚を修正しました。会場はホームでもあったので、サーブが打ちやすいというのも大きかったです」

【3位決定戦は「もっとチームを助けたい」】

――3位決定戦には、どのような気持ちで臨みますか。

「チームとしては、トランジションでチャンスがあるボールを取りきることが大切です。チビタノーバとの第5戦では、アタッカーが思いきって打てずにフェイントなどをする場面が多かったので、しっかりと打てるボールを増やしていきたい。

 あとはサーブのミスを減らすことと、しっかりと狙ったところに打つこと。ピアチェンツァはレアル(・ヨアンジ)選手(ブラジル代表)がターゲットになると思うので、ちゃんと狙っていきたいですね。

 個人的には安定してスパイク決定率を残すことができているので、継続していきたいです。プレー以外の面でも、言葉などを使ってもっともっとチームを助けられるような行動をしていかなければいけないと思っています。今季、課題にしていた『プレー以外でチームを勝利に導くこと、助けること』をもう一度意識してやっていきたいです」

――3位決定戦で勝てば、来季は欧州チャンピオンズリーグに出られますね。

「欧州チャンピオンズリーグに行けばまた新たなステージになります。チャンピオンズリーグで優勝することは僕の目標のひとつなので、なんとしてでもこの3位決定戦で勝って切符を手に入れたいです」

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのミラノ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場。29年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした。