9試合を消化した時点で15位と苦しんでいる川崎フロンターレ。だが、ここ2試合で復調の気配を見せている。 要因は数多くあ…
9試合を消化した時点で15位と苦しんでいる川崎フロンターレ。だが、ここ2試合で復調の気配を見せている。
要因は数多くあれど、その一つは最終ラインの安定とビルドアップだろう。この2試合での失点数はわずかに「1」。足元の技術に優れるGK上福元直人の起用や18歳のDF高井幸大の抜擢もそれに寄与しているが、その2人と組む車屋紳太郎が中心にいればこそ、実現している部分もある。
25日の練習後、その車屋に現時点での率直な感想を聞くと、「浦和戦に関していえば、守備はすごく組織的にやれていたし連動していたんです」と守備面での手応えを話したものの、「けど」と接続詞を挟んだうえで、「自分たちの特徴は攻撃的なところだと思うので、なかなかボールを握れない」状況を反省点としてあげた。
そして、「相手が動かし方も含めてうまかったなっていうのはあります」と続けたが、「それでも自分たちがボールを握れるように、プレーしなければいけない」と語気を強めれば、「だからこそ攻撃的な守備でボールを取りに行くシーンがもっとあってもいいんじゃなか」とも語るのだった。
さらに、言葉を言い換えて次のように改めて重ねた。
「他の選手も感じていると思うんですけど、(浦和戦では)うまく守れているなとは思うんですけど、もっともっと高い位置で奪ってショートカウンターだとか、そういうシーンを増やせればよかったかなと思います」
■「ボールを握れば、チャンスは増えてくる」
車屋は、シーズン前から攻撃についての意識を高めていた。キャンプ中、そして、その後の取材時にも、自分のプレーをいかに得点に結びつけるかについて発言を重ねていた。偽SBについて練習している際も、質問をすれば攻撃面でのメリットが何度も出てきた。実際、練習試合ではボールを握って、得点も重ねた。新しいチャレンジは、大きな可能性と手応えを示していた。
しかし、現時点での川崎は当時とは戦い方を変えながら試行錯誤を重ねている。選手としては難しい部分もあるが、それも受け止める余裕と、修正していこうとチームを引っ張る覚悟が背番号7にはある。
「キャンプでは視来を中に入れたりとか(うまく)やってましたけど、(シーズンが始まってからは)なかなかうまく行かないシーンが多くて。試行錯誤しながら、でも、キャンプでやってきたことがすべて正解だとは思わないですし。シーズンに入ってうまく改善しながらやろうとしている段階だと思うので、今、4-2-3-1でより後ろの安定感という、ボールを前に(運ぶ)安定が出ていると思うので。それをしっかりやってボールを握れば、チャンスは増えてくると僕は思っている」
そして、そのチャンスを増やすために「最後にもう一つ入っていくところにチャレンジのパスを出すだとか、クロスに何人が入って行けるかとか、そういうところがこれまでの僕たちの課題」と、修正すべき箇所を明確にした。
「それが清水戦でうまくいって、浦和戦でもそれを出せれば良かったんですけど、ボールを握る支配率でも負けていましたし、あの支配率をしっかりと自分たちが出せる状況に持ってきて、なおかつチャンスに最後、ボランチの選手がリスクを負って上がっていくだとか、逆サイドの選手が入っていくだとか、そういうシーンが増えていければ、厚みのある攻撃ができるんじゃないかなと思います」
■「勝ちたいという気持ちを出すのはすごく大事」
チャレンジする重要性や人数をかける必要性、そして、リスクを負う覚悟。これを引き出すためにキーとなるのが、メンタルだ。
「キャンプでの練習試合と公式戦では違った緊張感とかがある」とその明確な違いを説明したうえで、
等々力での清水戦を例に挙げて、「足元だけじゃなくて裏へのボールだとか、消極的だったところから最近は積極的なプレーができている」とし、このような積極性をリーグ戦でも「出せればルヴァンみたいな試合ができる」と語るのだ。
このメンタルについて、「なかなか結果がついてこなかったりすると消極的になったり」という部分を感じており、「勝てないチームはそういう風になっちゃうのかな」とも言うが、だからこそ、「なにかそこの殻を破って、積極的にやるというのは大事」と説く。
ここまで話を聞いたうえで車屋に尋ねたかったのは、今シーズンのピッチ上での振る舞いだ。昨季以上に感情や気持ちを出す部分が増えており、筆者の邪推であるが、それはチームに喝を入れるように、声と姿勢でチームをけん引する覚悟のように見えていた。
それについて意識してのことか聞くと、「意識は特にしてないですけど」としたうえで、次のように説明した。
「勝ちたいという気持ちを出すのはすごく大事なことだと思いますし、今まで引っ張ってくれた選手たちが何人も抜けて、今、自分たちがやらなければいけない立場にあると思っているので。技術的なところとか体力的な面で勝てないのであれば最後は気持ちでカバーしなければいけないと思っているので、全員でやらなければいけない大事なことかなと思っています」
今年1月、川崎の選手とスタッフが商店街を回った。その際、地元の人々と触れ合いながら歩く車屋に今季への意気込みを聞いたところ、似たような答えが返ってきたことを思い出した。そのメモを見返して、背番号7が今季に懸ける思いの伏線を回収できたことを感じた。
そんな車屋紳太郎のここ2試合の相棒になっているのは、18歳の高井幸大である。その高井や、上福元直人についても聞いてみた――。