プロ入り8年で16試合0勝11敗。球界を代表する左腕となった西武・菊池雄星投手の対ソフトバンク戦の成績である。16度目の登板となった今月23日の敵地での一戦。初回に先制点を許すと、2回には柳田に3ランを浴びるなど、一挙に5失点。3回にも1点…

プロ入り8年で16試合0勝11敗。球界を代表する左腕となった西武・菊池雄星投手の対ソフトバンク戦の成績である。16度目の登板となった今月23日の敵地での一戦。初回に先制点を許すと、2回には柳田に3ランを浴びるなど、一挙に5失点。3回にも1点を加えられたところで、まさかのKOとなった。

■16戦未勝利で11連敗、今季3敗すべてをホークスに喫している西武・菊池

 プロ入り8年で16試合0勝11敗。球界を代表する左腕となった西武・菊池雄星投手の対ソフトバンク戦の成績である。16度目の登板となった今月23日の敵地での一戦。初回に先制点を許すと、2回には柳田に3ランを浴びるなど、一挙に5失点。3回にも1点を加えられたところで、まさかのKOとなった。

 今季最短の2回1/3、7安打7失点の大炎上。今季13試合目にして、初めてクオリティースタート(6回を投げて自責点3以内)にも失敗した。またしても、天敵を討ち倒すことは出来ず、チームも大敗を喫した。

 この試合まで防御率1.43と、安定した投球を見せていた菊池。この日で今季3敗目(7勝)となったが、この3敗は全てソフトバンク戦で喫したもの。デビューからプロ8年間で、なんと11連敗となってしまった。

 なぜ、菊池はソフトバンクに勝てないのか? 裏を返せば、なぜ、ソフトバンクは菊池を打ち崩せるのだろうか?

■藤本打撃コーチが明かす攻略法、「超が3つ付くくらいに積極的に」

「パワーピッチャーなので、真っすぐ、スライダー(狙い)。左打者は絞りやすい。いい投手は2ストライクに追い込まれたら、なかなか打てない。積極的にいくというのはミーティングでも言っている。超が3つ付くくらいに積極的に」というのは藤本博史打撃コーチだ。

 ソフトバンク打線は、菊池の球種を絞り込み、ファーストストライクからどんどん振りにいくことを徹底している。

 振り返ってみると、初回先頭の川崎は1ボール1ストライクからの真っすぐを遊撃内野安打に。2回1死満塁からの今宮の一塁線を破る2点適時打は1ボール1ストライクからの3球目のスライダー、そして柳田の3ランは初球の真っすぐ。

 見逃し2球で追い込まれた打者は3回1死二塁で右前適時打を放った川島だけだが、これも見逃しの後に3球連続ボールとなり、5球目を見逃してのもの。ソフトバンクの打者が、かなり早いカウントから打って出ていたことがよく分かる。

■追い込まれたら打率「1割台」、工藤監督が重視する「立ち上がり」

「追い込まれたら(打率は)1割台(になる)。ビシビシ来られたら、そうは打てない。そうなったら言い方は悪いけど、諦めて、みんなで右打ちとかをやっていくしかない」とも同コーチは言う。手も足も出ないほどの投球をされたら、しょうがない。それくらいの割り切りをもって、左腕に向かっているのだという。

 現役時代に224勝をマークした工藤公康監督は「立ち上がりに打たれると、投手は不安になる」と経験則からよく話している。まさしく、この日の菊池がそうだったのではないだろうか。普段150キロを超えるストレートが、2回途中から140キロ台前半に落ち込んだ。フォームから躍動感が消え、マウンド上で萎縮している印象すら受けた。

 藤本コーチは「相性が悪いんだろうね。向こうが嫌がってくれているのかもしれない、勝手にね」とも言う。プロ入り以降勝てていないことで、苦手意識が芽生え、左腕の心理面に少なからず影響を与えていることもあるかもしれない。

 天敵の鷹打線。球界屈指の左腕となった菊池だが、真のエースと認められるためには、乗り越えなければいけない壁だろう。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani