去る3月 21日、フランクフルトは長谷部誠と選手としての契約延長を発表した。 桜の咲きはじめた東京でマルクス・クレーシ…

 去る3月 21日、フランクフルトは長谷部誠と選手としての契約延長を発表した。

 桜の咲きはじめた東京でマルクス・クレーシェSD(スポーツディレクター)とともに記者会見を行ない、あと1シーズン、選手としてプレーを続けると宣言。2014年に加入し、当初は2年契約でその後1年ずつ慎重に契約を延長してきた長谷部は、ついにフランクフルトで10シーズン目を迎えることになる。



長谷部誠はフランクフルトで来季10シーズン目を迎える

 毎回、契約を延長するたびに「今度こそ最後の1年になると思う」と言い続けてきた長谷部だが、「昨年は今季で99パーセント、終わりだと思っていた。それが(来季での引退の可能性が)99.9パーセントくらいに上がった」と笑顔で話した。

 現在39歳の長谷部は、フランクフルトのフィールドプレーヤーとしての最年長記録を出場するたびに更新している。ブンデスリーガ全体を見ても、現在上から7番目に位置する高年齢だ。

 長谷部が特別なのは、ピンポイントでの仕事が可能な攻撃的なポジションではなく、最終ラインの選手ながら今でも中盤的な動きもすること。ボランチからセンターバックに下がった時も「目だけでプレーしないように注意している」と語り、フィジカル的にラクをしないポジションであることを認めていた。

 現在では「レギュラー争いをしている感覚はなくて、チームに何かあった時に出番がくる感覚」だと言い、スタンスは若手たちを立てている。だが、それにしてはドイツカップ準々決勝ではウニオン・ベルリンの屈強FW陣と高速カウンターに対応し、準決勝進出の立役者となっていた。まだまだ十分戦力として機能しているのは、実におそろしいかぎりだ。

 長谷部は言う。

「もちろん、こういう年齢になっても契約を延長してもらえるのはうれしいこと。ですけど、自分の力だけじゃなくクラブが成長しているなかで、この流れにいるから契約を延長してもらえる部分も大きいと思う。

 この世界、年齢は関係ないと言いながらも、やっぱり年齢で判断される部分がある。なので自分の力というより、そういういろんな要素がかみ合って、こうやって長くプレーできている。周りにも感謝しないといけないですね」

【当時は海外志向ではなかった】

 クラブの成長期、長谷部の代表引退、クラブへの専念──。長谷部は契約更新の背景として、さまざまな要素のおかげだと説明する。ただ、自信をにじませながら客観的で謙虚であるという点も、こうしてひとつのクラブに長くいられる要因なのかもしれない。

 長谷部は3月24日にフランクフルトで行なわれたU-22ドイツ代表vsU-22日本代表の試合にも駆けつけていた。21日の東京での会見後、スケジュールはとんぼ返りの強行軍だ。

「JFAの方からフランクフルトでやるんでぜひ来てくれ、と言われて。空港に到着したのが(24日の)17時前で、空港から直接スタジアムに向かってちょうど試合開始5分前ぐらいに着いたんです。日本とドイツという、自分にとってゆかりのある国の若い選手たちの現状を感じられたのはよかったですけどね」

 この試合、前半は日本が圧倒的に攻められながら失点し、その後に2得点を奪って逆転......というところまでは、カタールW杯のドイツvs日本のようだった。だが、その後に失点して2-2で試合を終えている。

 試合後のロッカールームに、長谷部は同じく助言や鼓舞を求めて招待されていた川島永嗣とともに訪れた。若者たちにはこんな言葉をかけたのだそうだ。

「ああいう年代の選手たちは、自分が描いている場所とは違う場所で今、プレーしているかもしれない。世界にはもっと高いレベルでプレーしている選手がいるなか、そういうところも見ることは大事だと思うんですけど、でも今いるところで(頑張れと言った)。僕も(当時は)海外でプレーするとか、あんまり考えてなかったんで」

 U-22欧州遠征に参加している選手たちも、Jリーグや欧州の各所属クラブでポジションを掴んでいる選手はひと握り。不本意な場所で戦わざるを得ない選手もいる。同年代の海外トップ選手たちは世界で活躍しはじめており、複雑な思いを抱える年代だ。

 そんな若者たちを思いやりつつ、言葉をかけたようだ。長谷部自身も若手だった頃、同世代が出場するU-20ワールドカップやアテネオリンピックを経験できず、難しさを感じていたのかもしれない。

「目の前の1日1日、そういうものに真剣に向き合って積み重ねてきた結果が、チャンピオンズリーグやワールドカップにつながっていると思う。みんなも今を大事にしてくれ、という話をしました」

【積み重ねてきたものの重み】

 一方、今や大ベテランとなった長谷部自身は、活躍へのプレッシャーから解き放たれて自由になっているようだ。

「プレッシャーは全然ない。40歳でブンデスリーガで試合に出てすごいねって言ってくれるのはありがたいんですけど。人それぞれ、体の年齢も違うと思うし、メンタルという部分で勝負しているところもある。

 40歳になっても、勝ちたいとか、うまくなりたいとか、そういう気持ちが失われなければ、まだ全然できると思っている。そこだけは失わずに、あとは楽しんで......。サッカーをやるのは、それが大事かなと思っています」

 楽しいことが大事──。そう言える境地まで、積み重ねてきたものの重みを改めて感じさせる。はたして1年後、我々はどのような次の報告を聞くことになるのだろうか。