東京に名残の桜の花弁が舞う4月5日、「Dリーグ」サードシーズンの最終ラウンドとなるラウンド12が開催された。コロナ禍ながら、今回も会場の有明ガーデンシアターはほぼ満席。マスク越しとの制約はあるものの、ファンの熱い思いを存分に感じさせる会場を…

東京に名残の桜の花弁が舞う4月5日、「Dリーグ」サードシーズンの最終ラウンドとなるラウンド12が開催された。

コロナ禍ながら、今回も会場の有明ガーデンシアターはほぼ満席。マスク越しとの制約はあるものの、ファンの熱い思いを存分に感じさせる会場を揺るがす、唸るような応援と共に全12チームによる6マッチが届けられた。

競技ルールが各2チームによる対戦方式となってから、各マッチでの勝敗を占うという愉しみも加わり、よりゲーム性を強く感じさせるDリーグ。2週間に一度、まったく新たなナンバーを創作して踊り込み、試合に臨むという前人未到の過酷にして華麗な闘いも、いよいよサードシーズンの大詰め。さっそく最終戦を迎えた各マッチを振り返りたい。

◆ラウンド11 Cyber Agent Legitがレギュラー・シーズンを制すが来たるチャンピオンシップを勝ち取るのは… 前編

■観る者の心を躍らせるナンバー揃い

1stMATCH:KOSÉ 8ROCKS vs. Benefit one MONOLIZ

先攻は昨シーズン王者のエイトロックス。上下を赤いベルベット素材の衣装で包み、ドラマティックなオープニングから始まり、なめらかなブレイキンのムーブと大技のミックスが炸裂。テーマを「アートスキル」とし、いつもと違った雰囲気の衣装とも相まってブレイキンの進化形ともいうべきナンバーが届けられた。今シーズンは連敗ありの厳しい闘いとなっていたが、ラウンド10と11では2連勝し、本来のエイトロックスらしさを浮かび上がらせた。

対する後攻はヒールで踊るヴォーグで毎回刺激的なナンバーを繰り広げるベネフィット・ワン モノリス。今回は肉体感少なめの布感が多い衣装だったが、モノリスらしさを赤いロングの手袋で表現。タイトルの「マスカレード」そのままに、ヴォーグとジャズを組み合わせた魅惑のナンバーが届けられたが、結果は4-2でブレイキンの迫力が勝ったエイトロックスの勝利となった。

2ndMATCH:LIFULL ALT-RHYTHM vs. dip BATTLES

先攻のアルトリズムのテーマは「家族」そして「ギフト」。全員がそれぞれにデザインの違う敢えて揃えていない衣装で登場した。街で人々が自由におどっているようなオープニングで始まったが、ブレイキンを交えながら多彩なフォーメーションでキレのあるダンスを魅せつけ、毎度のことながらしっかりとアルトリワールドを展開した。

対するディップ・バトルズは板つきでなく各ダンサーが舞台に飛び出してくるオープニングで活きのよさが際立ち、ハウスにワック、ポッピン、ブレイキンまでをオールマイティに交えて爆発感と共に踊りを展開し大いに会場を沸かせた。バトルズのテーマは「We Love Dancing」と、まさに全メンバーのダンス愛が炸裂した迫力満載のナンバー。

どちらも見応えあるものだったが、結果は0-6でディップバトルズのスウィープ勝利と相成り、この後、メンバーのKENSEIにはMVDが贈られた。

また、この2チーム間では昨シーズンまでバトルズに所属していたKarimがアルトリズムに移籍しての闘いとなっており、、試合後にKENSEIがKarimと一緒に踊れて幸せだったと泣き出すシーンがあり、チーム内での友情と人間模様が垣間見える一幕にもなった。日ごろから踊るという行為を祈りのように感じることのある筆者であるが、KENSEIとKarimに象徴されるDリーグダンサーのダンスに向けたひたむきさに胸を打たれたファンも多かったに違いない。

3rdMATCH:avex ROYALBRATS vs. FULLCAST RAISERZ

先攻はエンタメ純度高く、毎回オーディエンスを愉しませてくれるロイヤルブラッツ。息を吸う音、吐く音に合わせて踊るオープニングから始まり、それが次第にパーカッションへと変化し、毎回見せる抜群のシンクロ率と高いリズム感で今回も観る者の心を躍らせる愉しいナンバーが繰り広げられた。

対する後攻はエナジー溢れる男達、ワイルドな衣装に身を包んだ肉体集団のフルキャスト・レイザーズ。SPダンサーにTWIGGZ“JUN”を迎え「RAIASON WHY CLAMP」をテーマに神秘的な祈りのような音楽で原始の叫びや太古の息吹を彷彿とさせる新鮮なクランプを表現してくれた。

どちらもチームの特色をよく映し出した秀逸なナンバーだったが、結果は5-1でロイヤルブラッツがシーズン8勝目を勝ち取った。

◆【後編】ラウンド12 優勝したCyberAgent Legitが圧巻のナンバーを披露

◆うまいだけでは勝てない、ますます総合芸術の色合いを強めるDリーガーたち

◆2年連続MVD “B BOY” ISSEIの“これまで”と“これから” 「パリ五輪だけがダンスじゃない」

著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。