ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<02>梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)前編 高校3年時、エディージャパンに練習生として招集されて一躍、脚光を浴びた。横浜キヤノンイーグルスのキャプテン、CTB(センター)梶村…

ラグビーワールドカップ2023「Road to France」<02>
梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)前編

 高校3年時、エディージャパンに練習生として招集されて一躍、脚光を浴びた。横浜キヤノンイーグルスのキャプテン、CTB(センター)梶村祐介。

 2019年ワールドカップでは、最後の最後に日本代表スコッドから外れて悔しい思いをした。その経験を糧に、東京サントリーサンゴリアスから離れることも決意。そして27歳となった今、心身ともに大きく成長した姿を見せている。

 目指すはもちろん、自身初となるワールドカップ。「早熟の天才」と呼ばれた男が紆余曲折を経て大人となった今、どのような心境でワールドカップを見据えているのか聞いた。

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梶村祐介●1995年9月13日生まれ・兵庫県伊丹市出身

── まず、梶村選手と言えば報徳学園の高校3年生の時、エディージャパンに練習生として招集されたことで一躍有名になりました。

「高校生でエディージャパンの合宿に呼ばれたことがプラスになったのかは、正直わからないですね......。『日本代表に呼ばれた高校生』という肩書きで自分が思っている以上に注目されたので、今思えば相当プレッシャーを感じていました。

 当時、日本代表を率いていたエディーさん(・ジョーンズ/現オーストラリア代表HC)からは『体重を増やせ』と言われ、無理やり食べて体重を100kgまで増やしたんですけど、それもよくないほうにいっちゃいましたね。だから、高校3年や明治大1年の頃は、なかなか選手として伸びなかったのかもしれません。

 もちろん、呼んでいただいたのはありがたいことでしたけど、自分のなかでそのプレッシャーをうまく変換できなかった。ただ今となっては、あの時の自分も受け入れて、いい経験になったと思えるようになりました」

── 2019年ワールドカップのシーズンは8月の網走合宿まで参加していましたが、最後の最後で31名のワールドカップスコッドに入ることができませんでした。

「最後にメンバー外となった選手は、コーチ陣から日本刀をいただきました。だけど、フッカーの選手以外、日本刀には普通に名前が刻印されていたので、最初から(選ばれないことは)もう決まっていたんだろうなと思っています。

 当時は社会人になって2年目の24歳。ワールドカップには『いける!』という自信がありました。しかしよく考えたら、選ばれるパフォーマンスじゃなかったです。でも、あの経験があったからこそ『もっとうまくなりたい!』というモチベーションにつながったと思います」

── 今年2月、リーグワンの試合が休みの週に日本代表はミーティング合宿を行ないました。そこに呼ばれたのですよね?

「はい、イーグルスからは僕ひとりで、秋の日本代表の欧州ツアーで『柱』と言われていたメンバー以外の選手のなかでは、僕しか入っていませんでした。新しいメンバーはほとんどいなかったので、そういう意味では狭き門というか......。

 ワールドカップに向けて、メンバーはだいぶ絞られてきたという感じがします。2月に呼ばれたBKの選手のなかで(33名のワールドカップスコッドから)落ちるのは、ひとりかふたりじゃないかなと思っています」

── 昨季は日本代表のリーダーグループのひとりに選ばれました。

「春シーズンの継続みたいな感じで、リーダーグループには秋シーズンも入っていました。自分のなかでは特別、そこが評価されたとは感じていないです。CTBは練習するために4人必要なので、それで呼ばれていたのかもしれません。

 昨季の春シーズンは主要な選手がケガなどの影響で何人かいなかったので、チャレンジングになるなと感じていました。昨年7月は(フランス代表との第1戦で)12番として『先発で行く』とコーチ陣から言われていたので、その気持ちも強かった。

 ところが、コロナの影響で(チームから)離脱してしまった。『ティア1』と呼ばれる世界的強豪と対戦したことがなかったので、フランス代表戦に出たかったのが正直なところです」

── 日本代表コーチのトニー・ブラウンのラグビーをしっかり遂行する選手が試合機会を得ている、という感じでしょうか?

「ブラウニー(ブラウン)のラグビーの根本に『キッキングラグビー』があると思うので、昨年の日本代表戦でもそれができる選手が出場していました。僕だけに限らずBKのどの選手も、キックは絶対に必要になってくると思っています。

 また、日本代表はキッキングゲームに限らずボールがよく動くので、それに対応するスキルを持った選手が呼ばれています。CTBは『WTBの選手にボールを供給することが重要』と言われていますので」

── 梶村選手は今季のリーグワンでもキックをよく使うようになったことで、プレーの幅が広がったように感じます。

「より(スキルとしてキックを)蹴れるようになってきました。ボールキャリーだけではやっぱりしんどいな......というのを自分でも感じていましたので。キックがあればもっといろんなスペースにボールを運べるので、ずっとそのようなトレーニングは続けてきました。

 当初はなかなか試合で試す機会もなかったのですが、イーグルスではジェシー(・クリエル/南アフリカ代表CTB)のランを活かすために、今季は何度もチャンスメイクができています。プレーの幅が広がってできることが増えてきているのは実感していますね。

 ただ、日本代表での評価は、そんな簡単に変わることはないです。(優先順位が)一本目の選手と比較して、もっとやってほしいと(コーチ陣からも)言われていますから。

 イーグルスを指揮する(沢木)敬介さんからも『(中村)亮土さん(東京サンゴリアス)とディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)に勝負していける選手にならないといけない』と常々言われています。ふたりのプレーを特別多く見たりはしないですけど、試合があれば気になるところです」

── イーグルスではずっと12番(インサイドCTB)ですが、日本代表では13番(アウトサイドCTB)でもプレーしています?

「練習では12番だけでなく13番に入ることも多かったですね。イーグルスでも13番をやりたいのですが、チーム事情としてジェシーが13番しかできないので、やるタイミングがなかなかないですね」

── リーグワン開催中でも、日本代表のコーチ陣とミーティングをやっているのですか?

「毎週、Zoomでコーチひとりと選手5人くらいでミーティングがあります。そのミーティングでは、ひとりの選手の試合をクリップで抜き取って『このシチュエーションはどうすべきだったか?』などのディスカッションをしています。けっこう長い時間やっていますよ」

── ワールドカップに出場するために、コーチ陣から要求されていることは?

「プレーの一貫性は出てきたので、ディフェンスのコリジョン(衝突)をもっと強化してほしいと言われています。インパクトが足りないのはわかっているので、今季のリーグワンではキックだけでなく、ディフェンスやブレイクダウンに対する意識も上がっています。

 ワールドカップで上位チームに勝つには、やはりディフェンスが大事。アタックよりもディフェンスのインパクトが重要と言われているので、そこは見られていると思います」

ターニングポイントとなった「妻の後押し」

【profile】
梶村祐介(かじむら・ゆうすけ)
1995月9月13日生まれ、兵庫県伊丹市出身。報徳学園高→明治大を経て2018年にサントリーサンゴリアスに加入。日本代表歴は2018年11月のロシア戦で初キャップを獲得。2021年にサンウルブズのメンバーとなり、同年7月に横浜キヤノンイーグルスに加入する。ポジション=CTBセンター。身長181cm、体重95kg。