開幕投手のビーディ、主将・岡本和真、副主将の吉川尚輝それぞれの船出 2023年のプロ野球が幕を開けた。覇権奪回を目指す巨…

開幕投手のビーディ、主将・岡本和真、副主将の吉川尚輝…それぞれの船出

 2023年のプロ野球が幕を開けた。覇権奪回を目指す巨人は31日に中日と開幕戦(東京ドーム)を戦う。原辰徳監督は今年の巨人を「新しいチーム」と形容した。開幕投手に球団史上初となる新外国人投手、タイラー・ビーディ投手を送り出す。岡本和真内野手が主将、吉川尚輝内野手が副主将を務める新体制での船出となる。指揮官は「ジャイアンツは新しいチーム。私自身、我慢しながら戦う」と位置付けた。新たな役割を担う男たちのそれぞれの“開幕”に迫った。

 WBC世界一の熱を、原監督は肌で感じていた。「我々、プロ野球球団として(侍ジャパンの優勝で)大変な追い風が吹いた。喜ばしいことから始まった。これからはNPB、セントラルリーグが野球ファンに喜んでもらえるよう、さらに大きな波として出していきたい」と決意表明。野球で見ることができる美しい景色へ、巨人ファンをいざなう。

 監督として通算17年目の指揮となる。昨年は「苦しい、苦いシーズンだった」と振り返ったように4位に終わった。5年ぶりのBクラスだった。覇権奪回を目指す今季は「選手の顔ぶれはかなり変わった。ジャイアンツは新しいチーム。私自身、我慢しながら戦う。簡単にはいかないけど、チームが馴染むまではね」。簡単にはいかないことは想定済みだ。チームを成長させながら、頂点を目指していく。その眼に曇りはない。

「何とも言えない、いい緊張感と独特と言いますか、血液が沸騰するくらいのものを感じられる。しかし、長いペナントレースが始まるという部分では、少々のことで一喜一憂することなく戦っていく」

 エース・菅野智之投手が開幕に間に合わず、戸郷翔征投手はWBCに出場していたため、開幕2カード目の先発に回る。開幕戦に抜擢されたのはパイレーツなどでプレーした29歳右腕のビーディ。開幕投手が来日1年目の外国人投手であるのは球団史上初のこと。それは予期せぬ事態を指していると言えるが、長いシーズンを見渡せば、百戦錬磨の監督にとってはそこまで大きなことではないのかもしれない。

開幕投手のビーディはゲームで“調整”?

 大役を任された右腕は、東京ドームの前日練習を終えたあと、報道陣に対応した。「予想していなかったです。菅野投手が間に合わなかった事情というのは残念な結果ですが、開幕投手を任されたことは光栄なこと。チームがシーズンの良いスタートを切れるようにしっかり試合を作って、自分ができることをしっかりしたい」と落ちついた様子だった。

 外国人投手の開幕投手は2017年のマイコラス(現・カージナルス)以来。中日打線は以前、中日の投手コーチだった巨人・阿波野秀幸投手コーチから話やデータをもらい、準備をしている。「いい打線なのは間違いない。しっかり集中したい」。実はビーディは野球のゲームが好きで「自分を使って、いいイメージを持ちたい。ゲームの世界とはいえ、自分の考えている配球通りに投げると参考になるんだ」とプライベートの一部を紹介。イメトレが試合前のルーティンとなっているようだ。

 選手にとって、特別な“開幕日”。新主将にも就任した岡本和真内野手も順調な調整を進め、中日戦を迎えていた。侍ジャパンの一員として優勝に大きく貢献。試合前も柵越えを連発したほどバッティングの状態はいい。「(WBCから)割とすぐに気持ちを切り替えました。体調もいいです。明日から開幕なんで、しっかり頑張りたい。声出し応援が解禁になりましたし、皆さんに喜んでもらえるような試合をしていけたらいいなと。チームとしても、個人としてもそう思います」とWBCの熱をそのまま巨人のシーズンに持ち込む。

 特別な1日の朝を迎えると、岡本和は特別な感覚になるという。開幕前のルーティンは「特にないです」と話したが、当日のことについて聞かれると「なんか……開幕の日の当日って、いつもよりちょっと早く来ちゃったりするんです。時間配分がちょっとわからなくなったります。それくらいですかね」と明かすと、場が少し和んだ。「それだけは気をつけたい」と笑顔を見せた岡本和は試合への思いを問われると「1本出れば楽になるけど勝てればいいですね」と新キャプテンとしてチームの白星に導く活躍を約束した。

副主将の吉川尚輝は「和真のサポートを少しでもしたい」

 1番打者には現役ドラフトで獲得したオコエ瑠偉外野手が起用される見込み。丸佳浩外野手は右翼で、新外国人のルイス・ブリンソンを中堅で起用する予定となっている。打線の流れを作るのは「2番・二塁」で先発予定で、今年から副主将となった吉川尚輝内野手。新しい責務を担う背番号2も開幕前の思いを語った。

「緊張しますが、ワクワクもしています。やっと始まるという気持ち。(副主将になって)もちろん自分のことも大事ですけど(岡本)和真のサポートを少しでもできればいいかなと思っていますし、チーム全員で同じ方向を向いて、リーグ優勝、日本一を目指して戦っていきたいなと思います」

 オコエ、吉川から始まる巨人打線は丸、岡本、中田翔、坂本勇人といった中軸に流れていく。これが2023年の新しい巨人の形となる。開幕1軍メンバーにはブリンソンら新外国人選手5人に加え、新人・門脇誠内野手ら若手も多く名を連ねた。原監督は「我慢しながら戦う」というのは、実りの秋にするための逆算だ。1シーズンは長い。夏場、そしてシーズン終盤を迎えた時にいかに強い選手を揃えることができるかが鍵になる。

「簡単にはいかないでしょうけど、少し我慢をしながら、全力でベストオーダーの中で戦っていきますよ」

 開幕戦は何度戦っても、シーズンの中で特別な1試合だ。心の鼓動を感じながら、それぞれが新しい一歩を踏み出す。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)