谷繁元信インタビュー前編セ・リーグ順位予想 日本中が熱狂した第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の余韻が残…
谷繁元信インタビュー前編
セ・リーグ順位予想
日本中が熱狂した第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の余韻が残るなか、今季のプロ野球がまもなく開幕する。ヤクルトが3連覇を狙うセ・リーグだが、「実力伯仲」の声も大きい。果たして、6チームはどんな力関係にあるのか。元中日監督で野球解説者の谷繁元信氏に順位予想を聞いた。
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岡田彰布新監督がポジションを固定し、安定感が出そうな阪神
【1位予想:阪神】
戦力的に最もバランスがとれているのが、岡田彰布新監督が就任した阪神です。去年までのタイガースは野手のポジションが固定されず、打順も試合ごとに変わっていました。当然そうした戦い方もアリだと思いますが、個人的には選手たちがリズムをうまくつかめていないのではと感じていました。
一方、15年ぶりに復帰した岡田監督とは僕が現役選手だった頃に対戦しましたが、オーソドックスな戦い方をしてくるという印象があります。メンバーや打順を基本的に固定し、作戦でもたとえばバントで送るべき場面は送る、俊足のランナーが出たら足を絡めてくるというところです。
今季は大山悠輔をファースト、佐藤輝明をサードに固定し、梅野隆太郎を正捕手として起用していくと岡田監督は話していました。昨年までショートのレギュラーだった中野拓夢をセカンドにコンバートしましたが、高校時代やプロ入り1年目に守ったこともあるポジションなので違和感なくできるはずです。センターの近本光司、レフトに入る新外国人のシェルドン・ノイジーもある程度計算でき、新人の森下翔太も打撃にいいものを持っています。
投手陣は先発に青柳晃洋、西勇輝と実績のあるふたりがいて、西純矢、才木浩人という若手にも二桁を勝ちそうな雰囲気がある。昨年4月にトミー・ジョン手術(側副靱帯再建術)を受けた左腕の髙橋遥人も戦線復帰してくると思います。抑えには昨年最優秀中継ぎ投手に輝いた湯浅京己がいますし、岩崎優やカイル・ケラーもいる。投打ともに中心になる選手たちがそろっていて、安定した戦いをできる陣容だと思います。
【2位予想:ヤクルト】
2021年からリーグ連覇しているように力はあるチームですが、2位予想としたのは投手陣に少し不安があるからです。昨年までクローザーを務めたスコット・マクガフが退団し、新たにキオーニ・ケラを獲得。メジャーリーグでの実績もあるから抑えに置きたいところでしょうが、もし不安定だったら、セットアッパーの清水昇がうしろにまわるでしょう。ブルペンの厚みという意味では、ケラが抑えにはまると手強くなりますね。
先発では小川泰弘、高橋奎二、高梨裕稔などがいますが、昨年も一昨年も二桁勝っている投手はひとりもいません。そこが不安な部分ではありますが、それでもリーグ連覇をしているのがヤクルトです。やはり打線が強力ですね。1番として牽引した塩見泰隆は下半身のコンディション不良で開幕に間に合いそうにないですが、4番には村上宗隆が中心として座る。
さらに、昨年には高卒3年目の長岡秀樹が1年間ショートを守りました。捕手の内山壮真、外野手の丸山和郁と濱田太貴など、若手も出てきています。チームが優勝していく姿を目の前で一緒に見ながら、若手が意識を高くしていけたのは非常に大きいと思います。今年は誰が台頭してくるのか、楽しみなチームです。
【3位予想:巨人】
主力に実績のあるベテランが一定数いて、彼らがケガなく1年間出場できると上の順位にきそうなチームです。
投手陣では、エースを張ってきた菅野智之が33歳になりました。全盛期のように絶対的な力ではないかもしれませんが、試合をつくる能力は相変わらず高いものがあります。3月18日のオープン戦では右肘の張りで1回降板となりましたが、技術やメンタルは高いものを備えているので、体の状態をいかに整えてくるかだけがポイントです。
34歳の坂本勇人にも同じことが言えます。昨年はケガもあって83試合の出場にとどまりましたが、いかに試合に出られるコンディションに整えていけるか。ベテランと言われる年齢になると、最大の焦点になるのがコンディショニングです。年齢を重ねたと言っても34歳なので、まだまだやってくれると期待しています。
巨人で3シーズン目を迎える中田翔は、昨年終盤に打ち方をコンパクトにしてヒットを重ねるなど、以前にはなかったような意識が芽生えてきています。そうした打撃に走りすぎると「長打力」という中田の魅力が少しなくなる部分もあるかもしれませんが、自分のなかで成果を求めてやっていることなので、それがいい方向に出ればいいと思います。
巨人は外国人の活躍もチームに大きな影響を与えてきそうです。投手陣では、左のフォスター・グリフィンと右のタイラー・ビーディは先発ローテーションでまわっていく力があるように感じます。野手のルイス・ブリンソンもオープン戦からキレのあるプレーを見せています。日本人では新人野手の門脇誠と萩尾匡也、投手陣では高卒5年目の横川凱あたりが戦力になると、チーム内の競争が活発化してくると思います。
【4位予想:DeNA】
昨季2位に入りましたが、トータルで見ると戦力的に上積みがそれほど感じられないので4位予想としました。サイ・ヤング賞投手のトレバー・バウアーの獲得は大きいですが、野手ではトレードで京田陽太、新外国人のトレイ・アンバギーが加わったものの、打線は昨季からほとんど変わらないメンバーになりそうです。リハビリ中のタイラー・オースティンが開幕に間に合いそうにないのも痛いですね。ショートでは2019年ドラフト1位の森敬斗も期待されますが、彼がレギュラーになったとしても、打線全体にどれくらいの影響を及ぼすかは未知数です。
投手陣では、エースの今永昇太はWBCを見ていると状態がよさそうです。ただし、昨年11勝を挙げた大貫晋一が右肩の負傷で開幕には間に合いません。石田健大、東克樹の両左腕、右では上茶谷大河、そして2021年にトミー・ジョン手術を受けた平良拳太郎もいますが、欲を言えば、安定感のある投手がもう1、2枚ほしいところです。
また、昨年のチームでメイン捕手だった嶺井博希が抜けた穴をどう埋めるのか。ドラフト1位で高卒の松尾汐恩を獲得しましたが、一軍でどれだけ出られるかは未知数です。戸柱恭孝、伊藤光、山本祐大がどれだけカバーできるかもポイントになってきそうです。
【5位予想:中日】
順位予想で一番迷ったチームです。投手陣は先発の大野雄大、小笠原慎之介、柳裕也などがいて、ブルペンも抑えのライデル・マルティネス、セットアッパーのジャリエル・ロドリゲス、清水達也や祖父江大輔、藤嶋健人と層が厚い。5位予想としましたが、打線次第では上位に行けるような"不気味さ"を感じます。
昨季には外野手の岡林勇希が最多安打を獲得、ベストナインとゴールデングラブ賞にも輝きました。ショートには今季から登録名を変えた「龍空」(昨季までは土田龍空)もいますし、新人野手では大卒の田中幹也、村松開人を獲得しました。現役ドラフトで加入した細川成也も打撃にいいものを持っています。2021年ドラフト1位のブライト健太もアピールしていますし、昨年7月に左膝前十字靱帯の再建術を受けた石川昂弥も戦線復帰してくるでしょう。
投手陣にはロースコアに持ち込めるような安定感があるので、名前を挙げた選手たちが力をつけて打線がうまくまわり始めれば、上位に行く可能性も十分にあると見ています。
【6位予想:広島】
最下位の予想としましたが、広島も力はあるチームです。昨年肩のコンディション不良だった大瀬良大地は8勝9敗に終わりましたが、今年は順調にきている様子です。クローザーの栗林良吏は腰の張りでWBCで1度も投げずに離脱、先発の森下暢仁はオープン戦期間に右肘の違和感を訴えましたが、大ごとではなく何よりです。
ブルペンを見ると、栗林につなぐ前の森浦大輔、ケムナ誠、松本竜也、矢崎拓也など、経験を積んだ投手がかなり増えてきました。ストレートに力がある島内颯太郎や、来日2年目のニック・ターリーもいるし、新人では先発候補の益田武尚、ブルペンで期待される河野佳も加わっています。ピッチャーの起用パターンが確立されていくと、安定した戦いができるようになると思います。
打線は長打力こそそれほどないものの、足を絡めた攻撃もできますし、昨年後半に見せたようにつながりもあるチームです。秋山翔吾、野間峻祥、西川龍馬ら力のあるバッターが上位に並び、相手バッテリーからすれば「嫌な」打線に映るでしょう。
以上のように、チームごとに見ていくとセ・リーグ6球団の力はかなり拮抗しています。当たり前の話ですが、何か歯車が狂ったところが下の順位に落ちていくでしょう。
裏を返せば、どこも上位を狙える可能性があるということです。最下位に予想しましたが、広島の優勝もあると思います。そういう意味で、白熱したシーズンになることが期待できそうです。
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