高木豊の順位予想 セ・リーグ編 WBCの熱気も冷めやらぬなか、プロ野球が開幕する。昨年、セ・リーグはヤクルトが2連覇を達…
高木豊の順位予想 セ・リーグ編
WBCの熱気も冷めやらぬなか、プロ野球が開幕する。昨年、セ・リーグはヤクルトが2連覇を達成したが、今年は阪神が岡田彰布新監督、広島が新井貴浩新監督を迎えるなど、各チームは巻き返しに向けて着々と準備を進めている。
かつて大洋(現DeNA)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に、セ・リーグの順位予想と展望を聞いた。

現役ドラフトで阪神入りした大竹(左)とオープン戦不調だった巨人の坂本
【1位予想:阪神】
――阪神を1位と予想されましたが、その理由は?
高木豊(以下:高木) やはり、岡田監督の存在が大きいです。大山悠輔と佐藤輝明、新外国人の(シェルドン・)ノイジーあたりが打ってくれることが条件にはなりますけどね。近本光司や中野拓夢はある程度やってくれると思いますが、中軸がいかに返せるかでしょう。
ただ、大山や佐藤などの調子が上がらない時期があっても、岡田監督は足や小技を絡めて点をとりにいくはず。その場合は、主軸の選手でも平気でスタメンを外すと思います。あとは、ルーキーの森下翔太がどれぐらいやれるかも見ものですね。
――森下選手の印象はいかがですか?
高木 使いたくなる選手ですよね。オープン戦でも結果を出していますし(17試合出場、打率.314、3本塁打、8打点)、思いきりがいいバッティングが魅力です。
――ピッチャー陣はいかがでしょうか?
高木 先発もリリーフも充実していますし、文句なしです。現役ドラフトで加入した大竹耕太郎は、ソフトバンクで投げていなかったのが不思議なくらいで、以前から僕は10勝近く勝てる力のあるピッチャーだと見ていました。左ピッチャーの層がさらに厚くなりましたね。
【2位予想:ヤクルト】
――球団史上初のリーグ3連覇を目指すヤクルトは2位と予想。何か懸念材料があったのですか?
高木 先発ピッチャー陣の層の薄さが気になります。枚数は割といるんですけど、個々の能力的には少し物足りない。一軍スタートになったドラフト1位ルーキー、吉村貢司郎あたりがどのぐらい投げられるかがポイントになりそうです。
あと、クローザーの(スコット・)マクガフが抜け、代わりを務める候補は清水昇や木澤尚文などがいるのですが、彼らが一番うしろにまわった時にどういう働きをしてくれるのかはまだ不透明な部分もある。ただ、高津臣吾監督はピッチャー陣のやりくりが非常にうまいですし、適材適所で起用していくと思います。
――バッター陣はいかがでしょうか?
高木 若手が育っていますね。丸山和郁や武岡龍世、キャッチャーも内山壮真や古賀優大ら若手が出てきていて、ポジション争いも激しく厚みが出てきましたね。外国人選手もしっかりしていますし、村上宗隆、山田哲人、中村悠平はWBCで刺激を受けているので、チームに好影響を与えてくれそうです。
心配なのは、下半身のコンディション不良で離脱中の塩見泰隆。それでもやっぱり野手の層は厚いし、打線も破壊力があるものになるでしょう。
【3位予想:DeNA】
――高木さんの古巣、DeNAは3位予想。注目は、2020年にサイ・ヤング賞を獲得したトレバー・バウアー投手の加入です。
高木 当初は4位と予想していたのですが、バウアーの加入を受けて3位に上げました。バウアーがまともに投げられれば、ある程度の貯金ができるでしょうし、順位を変えるだけの力があると思います。(女性への暴行容疑で)1年以上のブランクがあるのは心配ですが、32歳とまだ若いですし、実績から考えると投げられないはずがないですから。
――近年、ピッチャー陣が安定してきたなかでのバウアー投手の加入は大きそうですね。
高木 ただ、阪神のピッチャー陣と比べると、総合力でちょっと落ちる感じはします。
難病(黄色靱帯骨化症)から三嶋一輝が戻ってきましたが、昨年71試合に投げた伊勢大夢の疲労度など不安材料はあります。
――以前から高木さんは、「DeNAの課題は機動力」と話していましたが、現状はいかがですか?
高木 6年目の楠本泰史などは成長していますけど、近年はスタメンがほぼ固定されているんですよね。だから結局は足が使えずに、ウィークポイントを克服できないんです。オープン戦でも足を使おうとはしていましたが、走塁技術はちょっと低い。
飛び道具(長打)しかないのですが、今のレギュラーたちも年齢を重ねていくわけで、長打が減っていくと考えると苦しくなります。打つ技術はあっても、点にする技術がないような気がするのが心配です。
【4位予想:巨人】
――4位に予想した巨人ですが、高木さんが以前から言われているように、課題は先発ピッチャー陣になりますか?
高木 新外国人の(フォスター・)グリフィンと(タイラー・)ビーディは使えると思いますよ。菅野智之と戸郷翔征、新外国人2人、残り2つのイスを山﨑伊織や横川凱ら若手が争っていくことになるでしょう。上の4枚が故障すると苦しいでしょうけど、昨シーズンに比べるとある程度戦える陣容になってきたかなと。
――ストッパーの大勢投手につなぐまでのリリーフ陣はいかがでしょうか?
高木(ヨアン・)ロペスがいいですね。高梨雄平もいますし、故障から復活を目指して調整中の中川皓太などが戻ってくるとさらに心強い。駒はだいぶ揃ってきて青写真は描くことができますが、それが実際に機能するかどうかですね。
――バッター陣はどう見ていますか? 現役ドラフトで加入したオコエ瑠偉選手は開幕スタメンに名を連ねる可能性も?
高木 十分にあります。走塁は迫力があるし、打線に置いておきたい選手ですね。センターを守る予定の(ルイス・)ブリンソンもよくて、丸佳浩がライトに回るのもいい。センターよりもライトのほうが、丸の肩が活きると思います。
問題はオープン戦で不調だった(打率.111、0本塁打)坂本勇人です。原辰徳監督はコンバートせずにショートでやってもらう、と明言していますが、調子が上がらなかった場合の策も考えていると思います。だから、坂本も必死にやるでしょうね。
――ドラフト4位ルーキーの門脇誠選手の存在が刺激になる?
高木 そうですね。門脇は実際にプレーを見ましたけど、バッティングがよくて、守備も球際に強いですね。1年間戦う体力や精神的な強さがあるかどうかはわかりませんが、体は丈夫そうです。門脇あたりをうまく起用しながら、坂本を再生できるかがポイントになりそうです。
【5位予想:中日】
――5位予想の中日は、二遊間で若返りをはかっています。
高木 ドラフト6位ルーキー田中幹也は、阿部寿樹(現楽天)ほどの打点は稼げないかもしれませんが、チャンスメイクは阿部よりはできると思います。スピードもありますし、守備のフットワークが非常にいい。盗塁の技術も高いですし走塁面でも戦力になります。
本拠地のバンテリンドームは広い球場なので、「ひとつ先の塁を狙う」という意味で格好の選手を獲ったなと思っていたのですが......開幕前にケガで離脱してしまったのが悔やまれます(3月20日に右肩脱臼と判明)。開幕スタメンの可能性もある、ドラフト7位ルーキーの福永裕基らに期待ですね。
――岡林勇希選手もそうですが、中日には走れる選手が揃ってきている印象があります。
高木 そうなんです。岡林や大島洋平、(土田)龍空も走れますし、(アリスティデス・)アキーノも足を使おうと思えば使えます。攻撃のバリエーションが増えますよね。
昨シーズンは、微妙なところに飛んだ打球を長打にできない、塁に出ても走れずにランナーを返せない、といったことが多かったですけど、得点能力が上がるだろう打線を組めるようになってきていています。昨シーズンはイマイチだった(ダヤン・)ビシエドも、オープン戦では本塁打こそなかったものの尻に火がついたように見えますし、打線は面白いと思います。
――ピッチャー陣はどうでしょうか。今年は小笠原慎之介投手が開幕投手を務めます。
高木 いつまでも大野雄大に頼るわけにはいきませんし、小笠原を開幕投手に指名したのは正解だと思います。中日は先発もリリーフもしっかりしていて、ピッチャー陣は安定感があります。ただ、バンテリンドームの時はいいけど、ビジターの球場ではちょっと打たれる傾向がある。そういったところを改善できるかですね。
【6位予想:広島】
――広島を6位と予想しましたが、どこが課題だと感じますか?
高木 秋山翔吾や西川龍馬、坂倉将吾など、技術が高いバッターはたくさんいますが、長打力に欠けるのでクリーンナップがバシッと組めません。(ライアン・)マクブルームや、新外国人の(マット・)デビッドソン次第になると思います。
あと、坂倉がキャッチャー専任でプレーするのは今シーズンからになりますよね。これまで、60試合前後マスクをかぶったシーズンもありますが、正捕手として出場するのは初めて。そこがチームとしてメリットになるのか、デメリットになるのか。そのあたりがカギですね。
やはり優勝するチームのキャッチャーは、ヤクルトの中村悠平など優秀ですから。坂倉がバッティング同様に、守備やリード面でも力を発揮できるかどうか注目です。
――ピッチャー陣では先発ローテーションの柱のひとり、森下暢仁投手が3月24日に実戦復帰したばかりです(昨秋、右肘のクリーニング手術を受けた)。
高木 森下には軸になってもらいたいですが、まだ投げ始めたばかりですし、シーズン序盤は他のピッチャーに頑張ってもらわないと。ただ、大瀬良大地は不安な部分があります。
――どのあたりが不安ですか?
高木 気持ちが少し弱い部分がありますよね。投げているボールはいいけど、大事な場面でちょっと引いてしまうというか、大胆にいけない。そういった部分では森下のほうが大胆に攻めていけます。
ただ、問題は中継ぎです。昨シーズンにほぼ崩壊してしまった中継ぎ陣をどこまで立て直せるか。あと、栗林良吏は(3月24日のオープン戦で)復帰していましたが、今シーズンは勤続疲労の影響が出てくるんじゃないかと。安心して任せられるセットアッパーもなかなか見当たりませんし、ピッチャー陣をどうやりくりしていくかは大きな課題だと思います。
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【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に解説したYouTubeチャンネルも人気を博している。