鹿実のエース下窪陽介さんは2段モーションを指摘され短期間で修正した 1996年の選抜高校野球大会で鹿児島実業のエースとし…
鹿実のエース下窪陽介さんは2段モーションを指摘され短期間で修正した
1996年の選抜高校野球大会で鹿児島実業のエースとして全5試合を投げ抜き、紫紺の優勝旗を初めて鹿児島へ持ち帰った下窪陽介さん。しかし、1回戦で投球フォームを注意され、変更を余儀なくされる事態に見舞われた。それでも続く滝川二(兵庫)との2回戦で97球2安打完封勝利。「自分が思うように投げられたベストピッチ」と振り返る。その間、中3日。フォームは変えたが、リズムは変えなかったという。
伊都(和歌山)との1回戦。投球動作の際に上げた左足を一度下げ、もう一度上げる2段モーションを試合中に審判から注意された。それまで練習でも試したことのなかった1段モーションへの切り替えを余儀なくされ、8回に失点。前年の九州大会から続いていた無失点記録も31回1/3でストップしてしまった。
「左足を2回上げて、投げるっていうのが自分のタイミングだったんですけど、1段モーションだとフォームのバランスも変わるし、自分が左足を上げてからマウンドに着くまでがどうしても早くなる。難しかったし、違和感もありました」
数センチ、数ミリのズレですらも投球のメカニズムに支障をきたすほど、投手は繊細だ。ましてや左足の上げ下げは、下半身でためたパワーを上半身へと移行する大事な動作。それを試合中に変更させられたら、自分のフォームそのものを見失いかねない。
「ポーン」から「ポーーーン」へ…リズムをキープした
しかし、下窪さんは冷静だった。1失点完投勝利で乗り越えた1回戦から2回戦までの中3日で、1段モーションへのアジャストに努めた。
「2段モーションだと『ポーン、ポーン』っていうゆったりしたリズムで、左足をマウンドに着けていけるけれど、1段モーションだと『ポーン』だけで着くことになる。だから『ポーーーン』って伸ばす必要がありました」
投球リズムを変えないようにするために、左足をそれまでよりゆっくり、そして高く上げる1段モーションへと修正。それが見事にはまった。
急造フォームで臨んだ滝川二戦が結果的にベストピッチとなり、そのフォームのまま春の頂点へと駆け上がったのだから、人生はどう転ぶか分からない。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)