OB星野伸之が語る今季のオリックス 野手編(投手編:大谷翔平に似た3年目右腕は「衝撃的」、左腕のドラ1ルーキーは「即戦力…

OB星野伸之が語る今季のオリックス 野手編

(投手編:大谷翔平に似た3年目右腕は「衝撃的」、左腕のドラ1ルーキーは「即戦力」>>)

 星野伸之氏に聞く今シーズンのオリックス。投手編に続く野手編では、主砲・吉田正尚が抜けた穴を埋める打者、開幕戦の予想オーダー、昨シーズンにチームを2年連続のリーグ優勝と日本一に導いた中嶋聡監督の選手起用・采配などを語ってもらった。



吉田の穴を埋める選手として星野氏が挙げた森友哉(左)と中川圭太

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――今シーズンのチームとしての課題は?

星野伸之(以下:星野) 得点力ですね(昨シーズンのチーム得点はリーグ4位の490)。吉田正尚がレッドソックスに移籍したのは痛いですし、FAで獲得した森友哉にかかる期待は大きくなると思いますが、背負わせすぎるのは酷です。みんなで穴を埋めていかなければなりません。

――他に、吉田選手の穴を埋めるという点で注目している選手は?

星野 元謙太、池田陵真、来田涼斗といった若手の外野手です。新外国人のマーウィン・ゴンザレスとフランク・シュウィンデルは内野手登録で外野を守ることはないでしょうから。その前に、中川圭太がいますね。吉田が守っていたレフトというポジションを考えると、穴を埋める選手としては中川が最有力でしょう。

 福田周平をレフトにして中川がセンター、という話もあるみたいですが、このあたりは流動的になると思います。

――得点力では新外国人にも期待がかかりますが、それでも吉田選手の穴を埋めるのは至難の業ですね。

星野 そうですね。得点力は昨シーズンより落ちることも予想されるので、やはり1点を守っていく、相手に1点を与えない戦い方になっていくと思います。首脳陣は、打つだけではなく守備もしっかりさせていこうという意識で、選手たちの動きを見ているはずです。

――注目選手に挙げられた、元、池田、来田選手をどう見ていますか?

星野 元は守備がある程度いいですね。池田はプロ入り1年目だった昨シーズンにけっこう使ってもらっていましたが、打席で粘るし、ミート力もあるので中嶋監督の"繋げる野球"にフィットすると思います。

 来田は体格ががっしりしていてスイングがパワフル。ちょっと吉田に似ているところもありますが、ボール球を振る傾向があるので、それが修正できているのかがポイントです。

――昨シーズン76試合に出場した伏見寅威選手(現日本ハム)が抜け、森選手が加わったキャッチャー陣の起用法も注目です。

星野 若月健矢は昨シーズン、伏見と正捕手を争いながらもけっこう打っているので(68試合出場、打率.281)、森と若月を2人同時に使う考えもあると思います。

 その場合は、森がDHに入ることもあると思いますが、新外国人がDHになる可能性もありますからバランスが難しいです。ファーストに頓宮裕真が入るのか、新外国人が入るのかという点もそこに関わってきますね。頓宮は代打の切り札みたいに使うこともあるのか......など、いろいろ可能性があります。

――中嶋監督がどういう起用をしていくか注目ですね。

星野 そうですね。中嶋監督は、臨機応変な起用でチームを機能させることに長けています。昨シーズンも杉本裕太郎が打てない時に4番で起用した中川が機能したり、やりくりがうまかったです。

――星野さんが今シーズンの開幕戦オーダーを組むとすれば、どうなりますか?

星野 ピッチャー目線で「嫌な打線」という観点になりますが、まず1番はセンター・福田です。足があってバッティングに嫌らしさがあるので。2番はサード・宗佑磨で、吉田が打っていた3番は森を入れたいです。左打者が3人並んでしまいますが、福田は左ピッチャーにも強いですし、森も首位打者になるくらいですから、それほど左右を意識する必要はないと思います。

 4番はライト・杉本でいいと思いますが、「ちゃんと打ってくれよ」という条件つきです(笑)。5番はレフト・中川。杉本が苦しい状態になることも考えて、勝負強い中川を後ろに置きたいです。6番が難しいんですよね......。新外国人も未知数です。ゴンザレスは両打ちで、シュウィンデルはまあまあパワーあるということですが、シーズンに入ってからどれだけ対応できるかでしょう。

 6番は、ある程度ハマるという前提で新外国人のどちらかを入れておきます。7番セカンドは安達了一か太田椋ですが、若手の育成も考えて太田で。悩みどころは森をキャッチャーかDHで起用するのかという点。外国人選手にファーストを守らせるのであれば、森はDHでいいかもしれない。そうなると、8番・キャッチャーで若月を入れられて、9番はショート・紅林弘太郎となります。

【星野氏が考えたオリックスの開幕戦オーダー】

1番・センター   福田周平

2番・サード    宗佑磨

3番・DH     森友哉

4番・ライト    杉本裕太郎

5番・レフト    中川圭太

6番・ファースト  ゴンザレスorシュウィンデル

7番・セカンド   太田椋

8番・キャッチャー 若月健矢

9番・ショート   紅林弘太郎

――あくまで開幕戦の想定ということですが、キャッチャーは若月選手?

星野 森でもいいのですが、ピッチャーと組み慣れているということで、開幕戦は若月がいいかなと。7番に太田を選んだのは、バッティングの思い切りがいいので。攻撃が4~6番の中軸で終わってしまった場合、7番の太田からチャンスメイクもできると思いました。太田を1番に入れてもよかったですが、僕が嫌なのは、やはり福田の粘りです。

――昨シーズン、先発オーダーは143試合で141通りの「日替わり打線」でした。各選手が起用された打順、ポジションで機能していた印象です。中嶋監督の選手起用や采配をどう見ていましたか?

星野 2021年、ロッテとのCSで小田裕也が日本シリーズ行きを決めるバスターを成功させましたが、あのプレーのための練習を毎日していた、と小田は話していました。そのコメントからわかるように、個々の選手の役割を明確にしていますよね。

 中嶋監督に「若い選手は、どういうタイミングで使おうとしている?」と聞いたことがあるのですが、「今日調子がいいからといって、ポンっとすぐに使うことはない」とのことでした。ある程度レベルが上がってきたなと思ったら、頭の中にその選手がインプットされて、「いつ使ってやろうか」と何日か"溜めて"いるそうです。

 疲れている選手やケガ人、不振の選手が出たりと、シーズン中はいろいろな状況が考えられます。そういう時に「よし、今日だな」と踏み切って、「頭にインプットしていた選手を、一番当てはまりそうなタイミングで出すと活躍する」と話していました。中嶋監督のこの話は、ぜひ若手選手に聞いてほしいですね。「ある程度はひとりで頑張れ。そこからは俺が引き上げてやる」ということですし、監督がよく選手を見ている証拠なので。

――若手選手たちのモチベーションも上がりますね。

星野 オリックスの若手が伸びている要因のひとつだと思います。あと、僕が印象に残っているのがバッテリーの配球なんです。

 リーグ優勝した2021年のシーズン中に、ピッチャーの球が「ほとんど真ん中にいっているな」と思う時があったんですよ。それで伏見に「途中から、真ん中に構えてなかった?」と聞いたら、「よく見ていますね。監督から『(真ん中に)いけ』と言われて、『えっ、真ん中?』とも思ったのですが、開き直って真ん中に何回も構えました」と。

 中嶋監督は現役時代にキャッチャーだったので、その目線で「この真っ直ぐだったらいける」という場面はそう指示していたようです。投手コーチから言われるより、監督からの「いけ」という言葉のほうが後押しになりますよね。「打たれても俺の責任じゃない」くらいの気持ちで投げられるでしょうから。そこが他のチームとはちょっと違うんじゃないかと思います。

 どのように若手を引き上げ、どう吉田の穴を埋めていくのか。今シーズンも、中嶋監督の選手起用や采配から目が離せません。

【プロフィール】

星野伸之(ほしの・のぶゆき)

1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000三振を奪っている。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。