2022-23 CL注目チームの現状第6回:ナポリ【スカウティングのうまさが出た抜群のメンバー編成】 ナポリが好調だ。セ…
2022-23 CL注目チームの現状
第6回:ナポリ
【スカウティングのうまさが出た抜群のメンバー編成】
ナポリが好調だ。セリエAでは26試合消化時点で2位インテルと18ポイントもの差をつけて首位を独走中。優勝すればディエゴ・マラドーナのプレーした1989-90シーズン以来の快挙となる。CLでもラウンド16に進出、フランクフルトとの第1節はアウェーで2-0と勝利している。

ナポリの攻撃を牽引するクバラツケリア(左)とオシムヘン(右)
基本システムは4-3-3。GKにアレックス・メレト、センターバックにはコソボ代表のアミル・ラフマニと韓国代表キム・ミンジェの異色コンビ。右サイドバックにイタリア代表のジョバンニ・ディ・ロレンツォ、左はポルトガル代表のマリオ・ルイ。DFラインを各国代表で固めている。
MFはアンカーにスロバキア代表のスタニスラフ・ロボトカ、インサイドハーフにカメルーン代表のアンドレ=フランク・ザンボ・アンギサ、ポーランド代表ピオトル・ジエリンスキ。FWの右はメキシコ代表のイルビング・ロサーノ、センターフォワードがヴィクター・オシムヘン(ナイジェリア代表)、左にクビチャ・クバラツケリア(ジョージア代表)。
レギュラー陣はすべて代表選手だが、いわゆるサッカー強国の代表選手はあまりいない。このあたりは、逆にスカウティングのうまさが表れていると言える。
ジョージア人の22歳、クバラツケリアは最大の掘り出し物だ。足に吸いつくようなボールコントロール、足腰の強さを感じさせるドリブル、パワフルなキック、スピード、運動量もあり、世界のスターにのし上がる才能をみせている。ナイジェリア人のオシムヘンも、抜群のスピードと得点力で注目されている。
【モダンで合理的なスタイル】
2015年にマウリツィオ・サッリ監督を招聘、「サッリ・ボール」と呼ばれたパスワークとコンパクトなプレッシングでモダナイズされ、カルロ・アンチェロッティ、ジェンナーロ・ガットゥーゾを経て2021年からルチアーノ・スパレッティ監督が指揮を執っている。選手・監督の顔ぶれは変わっているが、サッリの遺産は継承されていて、スピーディーでコンパクトなスタイルは変わらない。
現在のチームで特徴的なのが、フィジカルの強さだ。フィジカルと言ってもさまざまだが、走れて球際に強い選手を揃えている。とくにMFのロボトカ、ジエリンスキ、アンギサのトリオは、球際の強さが印象的である。3人の持ち味は少しずつ違うものの、守備面で隙をみせないのは共通している。
FWのスピードは強烈。ロサーノ、オシムヘン、クバラツケリアの速さは抜群で、カウンターではあっという間にゴールに迫り、全員速いのでゴール前に人が足りないという状況にならない。
フランクフルトとの第1戦では、5-4-1でコンパクトな守備ブロックを構える相手に対して、後方ではゆっくりとキープしながら、ブロック内へボールを入れた時はワンタッチパスで裏をつく攻め手を徹底して、何度もチャンスを作っていた。
このあたりは、戦術的なタスクを実行できるチーム力を感じる。フランクフルトのコンパクトなブロック内で停滞すればボールを狩り取られるので、その手前ではゆっくりと時間をかけながら、攻め込む時は最小限の手数でゴールに迫っていた。
3トップのスピードがあるからこその効果だが、作戦を忠実に実行する一体感と規律は、かつてのラテン気質まるだしだったマラドーナ時代とは隔世の感がある。
【スタジアムの圧力は世界屈指】
フランクフルトとの第2戦はナポリのホーム。フランクフルトは第1戦は退場者を出したこともあり、0-2とはいえそこまで力に差があったわけではない。しかし、ホームでのナポリがパワーアップするのは間違いない。
長靴に喩えられるイタリアの国土は縦長で、北と南では人々の気質もかなり違う。ミラノとナポリでは別の国のようなものかもしれない。1990年イタリアW杯では、準決勝でイタリアとナポリの英雄だったマラドーナを擁するアルゼンチンが対戦、イタリアの南北問題が噴出した。マラドーナは「ナポリを差別してきた連中のチームを応援する必要はない」と、試合会場だったナポリの人々に呼びかけていたものだ。
多くの日本人がイメージしている陽気でエネルギッシュなイタリア人というのは、たぶんナポリ人なのだと思う。声もでかいし、1人1人の圧がとても強い。5万5000人収容、かつてのスタディオ・サンパオロは2020年にスタディオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナに改名されている。異様な熱気に覆われるスタジアムの圧力は世界屈指だろう。
もともとアグレッシブなチームカラーだったが、現在はそれに合った屈強な、あるいは俊敏な選手たちが統率力のあるプレーを展開していて、ナポリの気質にも合っているように思える。圧倒的な優勝候補のいない今季、ナポリはダークホースとして注目される。