ヤクルト石川雅規投手 インタビュー前編 今季、プロ野球界最年長選手として、シーズン開幕を迎えるのが、ヤクルトスワローズの…
ヤクルト石川雅規投手 インタビュー前編
今季、プロ野球界最年長選手として、シーズン開幕を迎えるのが、ヤクルトスワローズの左腕・石川雅規投手だ。
昨シーズンで福留孝介(中日)、能見篤史(オリックス)がユニフォームを脱いだことで、今年1月22日に43歳となった石川が球界最年長となった。
40代に突入してもなお、衰えを知らない石川に、球界最年長選手として開幕を迎える思い、そして、第一線で長くプレーし続ける秘訣を聞いた。

現在183勝。今季で22シーズン目を迎えるヤクルト石川雅規投手
●野手最年長の青木の存在
「めちゃめちゃ心強い」
ーー球界最年長として新シーズンを迎えます。
石川雅規(以下、同) あんまりピンときてないんですよね。年齢は重ねていますけど、気持ちの面ではそんなに歳をとっている感覚はなかったりするので......。年上ということで、アドバンテージをもらえるなら、いいんですけどね(笑)。
経験だけはすごく積ませていただいているので、あとはコンディションをしっかり整えることですね。勝負できるかどうかは、グラウンドに立ってみなきゃわからないですけど、経験と準備は大事にしています。
ーー野手ではチームメイトの青木宣親選手(41歳)が球界最年長です。
ノリ(青木)の存在はめちゃめちゃ心強いですよ! ノリがアメリカに行っている時は、年齢が近い人がいなくて辛いこともあったんですけど、その間もしょっちゅう電話とかで連絡を取り合っていました。
ノリがアメリカから帰ってきて、チームを鼓舞してひとつにまとめているので、今のヤクルトがある。ノリの存在は、僕にとっても、チームにとっても大きいです。
ーー沖縄・浦添キャンプ中、今季初めての実戦形式の打撃投手を務めた際に、最初に対したのが青木選手でした。
誰に投げるのかなと思っていたら、ノリに投げることになりました。楽しかったですね。ノリに投げる機会はなかなかないですし。
ノリからも、この球種はどうだったとか、このボールがいいっすね、とか助言をもらえたので、参考になりました。いい時間を過ごせたと思います。
ーー具体的に、どんなフィードバックだったんですか?
「シュート系のボールは胸元にきたのがよかったですよ」とか「スライダーもいいキレでした」とかですね。あれだけ経験を積んだ選手なので、そういう助言は素直にありがたいです!
●「野球がうまくなる本、どこかに売っていませんか?」
ーー昨シーズンが終わって、すぐに自主トレに入っていました。完全休養の期間はほとんどなかったのでは?
引退したら、いくらでも休めますからね(笑)。シーズン終わって、5日から1週間ぐらいはのんびりしましたが、その間も、散歩したりストレッチしたりして汗を流していました。
それに、オフの間でもボールの重みを感じたいというか、指先の感触を確かめたいので、軽くですけど投げています。
早くこういうことを試したいっていうワクワク感もあるし、休むことには不安もあるので、そういう気持ちがあるうちは体を動かしたいですね。
ユニフォームを着させてもらっている以上は、まだまだうまくなりたい。年々、そういう思いは強くなっています。
ーー20歳年下の山下輝投手からワンシームを習ったと聞きました。若手の選手から学ぶことも多いのでしょうか?
めちゃめちゃあります。どうやって投げているの?とか、それはどういう感覚?とか、若い選手にも質問しまくっています。
めっちゃ貪欲ですよ! なかなかうまくはならないですけど、自分に合うものはないかな、といつも探しています。野球がうまくなる本、どこかに売っていませんか?

2月の沖縄・浦添キャンプにて
ーーご自身も、『石川雅規のピッチングバイブル』という本を出しているのに......。昨シーズンは、1学年下の和田毅投手(ソフトバンク)が、41歳にして自己最速の149キロを投げています。石川投手も、進化しているなと感じる部分はありますか?
ツヨシ、やばいっすよね! 彼は大学でスターだったし、アメリカにも渡りましたし、年齢は僕のほうが上でも、憧れの存在です。
ああなりたいなっていう思いはずっと持っています。彼の頑張りはすごく励みになりますね。
僕の場合、140キロを超えることもないですし、出ても、130キロちょっとなんですけど、スピードガンでは測れない球のキレなどを追求しています。
簡単にはいかないですけどね。全部完璧にいきたいけど、そうはいかないので、どこかで割り切っている部分もあります。
毎年の積み重ねで今があるので、最善を尽くし、最大限のことをやるしかないのかなと思っています。
●「往生際が悪いので」
ーーコンディショニングをとても大事にされている印象があります。特に気をつけているのは?
股関節周りや胸郭周りの柔軟性だったり、お尻をしっかり使うトレーニングは、意識的に取り組んでいます。
自分の体をしっかり使うには柔軟性って大事ですし、コンディショニングにもつながりますから。
もともと体はあんまり柔らかくなかったんですけど、だいぶ柔らかくなりましたね。しっかりとやり始めたのは、昨年のオフからですが、感覚はだいぶ変わりました。めちゃめちゃ良いですよ!
何をやるにしても、自分を実験台として、自分の感覚でやるしかないので難しいですけど。1年間通して取り組んでみて、どうなるか、ですね。
ーー失礼を承知でお聞きしますが、引き際を考えることはあるのでしょうか?
めちゃめちゃありますよ。昔はカッコいいやめ方はどんなものかと漠然と考えていました。今は逆に"肩肘がぶっ壊れて投げられません"ってなったら、わかりやすくやめられるのかな......。
僕は往生際が悪いので。いつかやめる日は来るので、それまでは全力でやりたいなと思います。
ーーまだまだやれる実感がある?
はい。まだまだできると信じていますし、契約していただける以上、選手としてチームのためにやりたいです。
"楽しんでやる"というのはあまり好きではないんですけど、そういう気持ちも大事なのかな。今は本当に、毎日野球ができることに喜びを感じながらプレーしています。
変な話、失うものは何もないんですよ。昔は、なかなか勝てない時期、特に30代半ばのしんどい時期に、苦しむ姿を見せたくないとか勝てない自分が恥ずかしいとか思ったんですけどね。
でも、そういうのを受け入れたら、気持ちがすごくラクになった。現状を把握して頑張るのが一番だなって、今はポジティブに考えられますし、思いきって野球ができているかなと思います。
ーーインタビュー後編では、22年目のシーズンの目標、200勝への思いなどを聞いていく。
後編<43歳ヤクルト石川雅規の目標は「山本昌さん超えの220勝」 体は小さくても「プロでもやれるんだぞって示せているかな」>
【プロフィール】
石川雅規 いしかわ・まさのり
1980年、秋田県生まれ。秋田商高、青山学院大を経て2002年自由獲得枠で東京ヤクルトスワローズに入団。1年目に12勝を挙げて新人賞を獲得すると、そこから5年連続2桁勝利を達成。2008年、最優秀防御率(2.68)をマークし、ゴールデングラブ賞も手にした。2022年には史上3人目の新人から21年連続勝利を記録。2022年までに2桁勝利11回、通算183勝。167センチの小柄な体格から「小さな大投手」と呼ばれる。