「侍ジャパン」のチームコーディネーターを務めるルーク篠田さん ついに幕を開けた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(…

「侍ジャパン」のチームコーディネーターを務めるルーク篠田さん

 ついに幕を開けた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、3大会ぶりの悲願を目指す野球日本代表「侍ジャパン」。チームコーディネーターに就任したのがルーク篠田さんだ。ルークさんは、私、鈴木優(元オリックス)と中学時代からの親友。中学校の野球チームが一緒で、今でも年に数回会っている。普通の野球少年だった2人が片方はプロ野球選手になり、もう片方は侍ジャパンを管理する立場になった。ルークさんの経歴と仕事内容を掘り下げていこう。

 鈴木優(以下、鈴木):大学からロサンゼルスに行ったということだけど、そこからどういう経緯でメジャーリーグの球団広報になったの?

 ルーク篠田(以下、ルーク):もともとは大学で野球をやるつもりでいたんだけど、うまい3年生が編入したタイミングで退部しなければいけなくなって、そこからはMLBのオフィスや大学の近くの代理人事務所でインターンを。大学を卒業する年に、ウインターミーティングの求人フェアでドジャース傘下のマイナーに行って、そこからだね。

 鈴木:ロサンゼルスに住んでいたからドジャース?

 ルーク:マイナーの中でもシングルAで、大学から車で2時間半くらいかかる場所だったんだけど、授業終わってからそっちに向かって、ナイター後に帰るという生活をホーム試合のときは毎日。もともとやりたかった広報とマーケティングを、マイナーでは両方できるということだったから「よし、いいスタートだ」と思ったんだけど、いざ蓋を開けたら、球場内のイベントでピザのコスチュームを着ながらレフトからライトまで走らされて(笑)。その後、プレスボックスに戻って球団の報告レポートを書いたり、SNSに試合結果を投稿したりという仕事をしていた。

 ドジャースで1年働いてからは、またウインターミーティングの求人フェアに。広報を募集していた5?6球団を受けたら、ヤンキースとエンゼルスからオファーがあったんだけど、たまたまヤンキースとエンゼルスの広報部同士の仲が良くて。「キャンプはヤンキースに行ってください、レギュラーシーズンはエンゼルスで」と勝手に決められていた(笑)。

 鈴木:すごく米国っぽさを感じる話だね(笑)。ドジャース、ヤンキース、エンゼルスを経験して、各球団の特色は感じた?

 ルーク:ヤンキースは歴史が長くて伝統もあるので、日本でいうと巨人みたいな感じ。エンゼルスはもう少し緩い雰囲気があった。

秋山翔吾の通訳を担当、約3か月半の共同生活がスタート

 鈴木:エンゼルスで広報として働いた後は、レッズで広報をしながら秋山(翔吾)さんの通訳も担当していたけど、それはどういうふうに決まったの?

 ルーク:秋山さんの代理人が、ヤンキース時代に田中将大さんの代理人を務めていた方だったので、自分のことを知ってもらっていて。レッズには日本語と英語を話せるスタッフがいなかったし、キャッチボールの相手とかバッティング練習のサポートもできる人が求められていたから、自分の名前が挙げられて、秋山さんの人柄にも惹かれて担当することに。

 鈴木:秋山さんの通訳としてスタートしようというときに、新型コロナウイルスが流行してしまって、そこから秋山さんとの3か月半の同居生活が始まったんだよね。

 ルーク:そうそう。たまたまロサンゼルスにマンションがあったから「1LDKの部屋ですけど、寝られる場所はありますよ。どうしますか?」と秋山さんに聞いたら、ちょうど同じタイミングで、マエケン(前田健太)さんも「俺もロサンゼルスに戻るから、一緒にトレーニングしようよ」と秋山さんに連絡していたみたい。だんだん話が進んで、当初は2~3週間くらいかなと思っていたけど、結局3か月半一緒に。

 最初、秋山さんにはベッドで寝るように言ったんだけど、「俺は泊まらせてもらってる側だから」と言って、リビングで布団を敷いて寝ていて。

 鈴木:その話はすごく秋山さんの人柄の良さが出ているよね。

 ルーク:そのときの生活は、午前8時に起きて朝ごはんを食べて、9時から12時までウエートとキャッチボール、バッティング練習、それから家に帰ってランチをつくり、ゆっくりするというルーティン。あとは当時、日本のプロ野球の方が開幕が早かったので、家で秋山さんとNPBの試合も観ていた。

 鈴木:それで僕が初勝利を挙げた試合(2020年7月1日の西武戦)も観てくれていたんだね。

 ルーク:そうそう。

言葉選びうまい秋山は「直訳すると意味が変わってしまうことがある」

 鈴木:僕も通訳さんと一緒にプエルトリコに行った経験があるし、日本にいるときも通訳さんの仕事の様子を見てきたけど、ストレートに伝えるのが良いときもあれば、そうでない場合もあるから、通訳するって想像以上に難しいよね。ルークが通訳として働くうえで、気を付けていたこととか意識していたことはある?

 ルーク:秋山さんは語彙力があるし言葉選びもうまくて、直訳すると意味が変わってしまうことがあるから、本質として何が言いたいのかを理解するようにしていた。コミュニケーションをとるときに心掛けていたのは、選手の一日のルーティンを絶対に壊さないこと。細かい行動のルーティンも把握して、例えば練習前にあらかじめ水を用意したり、その水に関しても好きな銘柄を把握したり。

 鈴木:通訳以外のところでも、選手をしっかりサポートするんだね。選手にとって、通訳さんは他のチームメートよりも距離が近い存在だから、良い人間関係を築かないといけないよね。ルークが通訳として重宝されている理由は、野球経験者でキャッチボールの相手ができることとか、野球の専門用語もしっかり通訳できるところもだけど、やっぱり選手と仲良くなれる性格だと思う。そう考えるとオンリーワンな存在だよね。

 ルーク:ありがとうございます(笑)。秋山さんとは、無理に「楽しまなきゃ」と思わなくても、一緒にいて純粋に楽しめたことが大きいかな。2人でご飯屋さんも開拓してすごく楽しかったし、吸収できることもたくさんあって、今につながる良い経験だった。(「パ・リーグ インサイト」鈴木優)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)