マリナーズとの練習試合に登板、1回を3安打3失点で黒星 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で1次ラウンドC組に入っているカナダが9日(日本時間10日)、米ピオリアでのマリナーズとの強化試合に臨み、3-5で敗れた。同大会自身通…

マリナーズとの練習試合に登板、1回を3安打3失点で黒星

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で1次ラウンドC組に入っているカナダが9日(日本時間10日)、米ピオリアでのマリナーズとの強化試合に臨み、3-5で敗れた。同大会自身通算4度目の代表入りを果たした、元巨人のスコット・マシソン投手が1点リードの8回に登板し、2点本塁打を含む3安打3失点で黒星を喫した。【ピオリア(米アリゾナ州)=木崎英夫】

 3-2の1点リードでマウンドに上がった。先頭には切れのあるスプリットで誘いゴロを打たせたが、三塁手が捕り損ねた。いきなり走者を背負うと、右中間二塁打と内野ゴロで同点に追い付かれ、期待の新人ケイデン・ポルコビッチに甘く入ったスライダーを捉えられ中堅右へ運ばれる勝ち越し2ランを浴びた。

 2日前の練習後、アーニー・ウィット監督から伝えられた予定の8回を打者7人で終えた。

 直球、スライダー、そして錆びつくことのない日本時代からの宝刀スプリットを混ぜて19球を投げた。最速は二塁打を許した91マイル(約146キロ)の直球。試合後、マシソンは終始柔和な表情で話した。

「ピシャリといかなかったけど、収穫はスプリット。よく落ちていて打たれなかった。それとなによりも、投げ終えて肩と肘がとてもいい感じ。代表メンバー入りが正式に発表されてから約1か月です。突貫の調整でここまで来ましたからね」

 2012年から2019年までの8年間、巨人に在籍し引退したが、2021年の東京五輪米大陸予選にカナダ代表メンバーの一員として出場。プロ相手の登板はそれ以来約2年ぶりだった。

 一昨年の東京五輪予選敗退後は、家族と住むフロリダ州タンパ近郊の地で大学生を相手にした実戦登板と高校時代のチームメートと一緒にトレーニングを積んできた。39歳で迎えた今回の代表入りには「肉体的には前回のカムバックよりはきついです」と明かす一方で、基礎体力は向上していると言う。

左膝に注射を打ちアリゾナ入り「気持ちに体が付いてきている」

「実は、ネパールの山に登りたいという思いがあるんですよ。ヒマラヤの登頂を目指すというわけではないのですが、あそこにある峻険な山々を登りたくて。そのための過酷なトレーニングをずっとやってきてるんですよ」

 自身4度目のWBC参加にはこれまで以上に強いモチベーションがある。

「個人的に、日本代表が今大会で一番のチーム力を誇っていると思います。確かに米国は強い。ドミニカだって強い。でも、日本の投手たちの質の高さは他とはちょっと違いますから」

 投手目線での分析をすると、マシソンは続けた。

「自分の野球人生で一番得るのもがあったのが巨人での8年間でした。それと、投手として多くを学ばせてくれたのが日本の野球でした。だから感謝という意味でも、日本の野球で育った粒ぞろいの選手たちがいるサムライジャパンと戦いたいんです」

 カナダ代表は12日(同13日)に、イギリス相手に初陣を迎える。マシソンは首筋に伝わる汗を指で弾き、少しの間をあけて言った。

「気持ちに体が付いてきているんです。その感覚を掴みました。本番まで2日ですが、いい調整ができる時間になると思います」

 日本時代に痛めた左膝に注射を打ちアリゾナ入り。スコット・マシソンの新たな挑戦が始まった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)