日本中のラグビーファンが静岡でのアイルランドとの戦いに熱い視線を送る頃、早朝のアイルランド、ダブリンで、鋭い目線でTVの画面を見つめる男がいた。 ヒューゴ・マクニール。1981~88年にかけてアイルランド代表のフルバックとしてプレーし、3…

 日本中のラグビーファンが静岡でのアイルランドとの戦いに熱い視線を送る頃、早朝のアイルランド、ダブリンで、鋭い目線でTVの画面を見つめる男がいた。
 ヒューゴ・マクニール。1981~88年にかけてアイルランド代表のフルバックとしてプレーし、37キャップを獲得。1983年にはブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズのニュージーランド遠征にも参加し、3テストに出場した。アマチュア時代の欧州トップレベルでプレー。1981年にはダブリン・トリニティカレッジ、1983年にはオックスフォード大学、そして1985年にはアイルランド代表の一員として日本を訪れた経験を持つ。
 現在はゴールドマン・サックス(大手金融機関)でダイレクターを務めながら、2023年ワールドカップ開催地のアイルランドへの招致ワーキンググループのチェアマンも務める。日本ラグビーに「大きな精神的繋がりを感じる」と話すアイルランドラグビー界の重鎮に、この試合の感想を聞いた。

「まず、22-50という結果でしたが、試合内容自体は点差ほど開いていなかったように思います。日本は得点すべき機会で得点できなかった、というのがこの試合の大きなポイントのひとつです。日本は前半にPR伊藤をシンビンで失った10分間に21失点を喫しながら、後半、アイルランドWTBアンドリュー・コンウェイのシンビン退場中には、チャンスを迎えながらも得点に繋げることができなかった。テストマッチでは、こういうところで勝負が決まってしまいます」

 主力選手をブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ遠征で欠き、若手中心の布陣になりながらも、アイルランドのこの試合へ向けての準備はまさに全力投球だったという。
「これは日本にとって嬉しい問題なのかも知れませんが、2015年のワールドカップで南アフリカを倒して以来、格上とされるチームも、日本を相手に全力で挑んでくるようになりました。分析や準備も今まで以上に徹底的に行われていますし、日本代表というチームはとにかく警戒されています」
 記者会見では、アイルランドのジョー・シュミット ヘッドコーチが、日本の警戒すべき選手の名前を挙げてみたり、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチがかつて指揮を執っていたハイランダーズ(スーパーラグビー)の試合運びを研究した、というコメントも残されている。

「ジョー・シュミットは、歴代のアイルランド代表ヘッドコーチの中でも、最高のコーチだと言っていいと思います。彼の指揮のもと、アイルランドはシックスネーションズで2連覇(2014年、2015年)も達成しています。また、今回の日本遠征に参加している選手たちは若手とは言え、その多くはマンスター、レンスターという欧州の強豪クラブでプレーしています。両チームとも、欧州チャンピオンシップでプレーオフ終盤まで残るなど好成績でクラブシーズンを終え、この遠征に参加しています。選手たちの直近の調子は上々と言っていいでしょう。
 日本も後半の攻撃と、波に乗った時の攻撃には素晴らしいものがありました。特に、福岡(堅樹/WTB)のスピードには目を見張るものがあった。もう一度言いますが、今日の試合内容は、得点差ほど開いていません。アイルランドは、2戦目もまったく油断することはできません」

 慣れない地でのアウェーゲーム。主力抜き。そんな不安材料を抱えながらもキッチリと初戦をものにしてきたアイルランド。日本代表は、次戦でホームでの面目を保つ事ができるだろうか。(取材/竹鼻智)