スポーツ総合型地域クラブ「福知山ユナイテッド」は京都府福知山市に設立された 教育現場も家庭も不安が解消されないまま、中学…

スポーツ総合型地域クラブ「福知山ユナイテッド」は京都府福知山市に設立された

 教育現場も家庭も不安が解消されないまま、中学と高校の部活動は転換期を迎えようとしている。教員の働き方改革の一環で、新年度から部活動は段階的に地域へと移行される。活動場所や指導者の確保、費用負担など課題に直面する地域が多い中、京都府福知山市で全国のモデルとなりそうな取り組みが進んでいる。スポーツの総合型地域クラブを掲げ、「福知山ユナイテッド」が昨年7月に発足。中学軟式野球クラブ「中丹オールスターズ」も誕生。軟式野球を続けたい子どもたちの受け皿になっている。

 京都府の北部に位置する福知山市には、7万7000人ほどが暮らしている。全国にある“田舎町”と大きく変わらない地が今、スポーツの町へと変化しようとしている。

 中心を担うのは一般社団法人「福知山ユナイテッド」。スポーツの総合型地域クラブを掲げ、昨年7月に発足した。中学校の部活が地域移行される動きを受け、子どもたちがスポーツを楽しめる環境をつくっている。大きな特徴は競技の多様性と指導の専門性にある。

 新年度から本格的に始動する福知山ユナイテッドに所属すれば、選手は野球やサッカー、バスケットボールやバレーボールなど様々な競技に取り組める。特定の競技に絞る必要はなく、複数のスポーツを同時に経験できるのだ。活動は週1~2日で、それぞれの競技に専門的な知識を持つ指導者がいる。福知山ユナイテッド代表理事・片野翔大さんはクラブ立ち上げの理由を、こう話す。

「部活動は学校単位なので、子どもたちが選択できる競技が限られてしまいました。中学生世代で競技を1つに絞ることは子どもたちの可能性を狭めてしまうかもしれないと感じていました」

 昨年末に開催した体験入部会では、参加者が複数の競技に触れる異例の内容だった。野球のユニホームを着た選手がバスケットボールを手にシュートを放ち、短パン姿のサッカー経験者がバットを握った。

中学軟式野球クラブ「中丹オールスターズ」が地域の選手の受け皿に

 正式に入部する選手は複数の競技を平行して取り組む方法と、その中で興味を持った競技に絞る方法、どちらも選択できる。軟式野球に特化したい選手が所属するのは「中丹オールスターズ」だ。

 福知山ユナイテッドに先駆けて発足した中丹オールスターズは、水曜日の夜と日曜日の週2回活動している。チームに所属する選手たちが通う中学校はバラバラで、中には部員が足りず、中学ではチームが組めない選手もいる。つまり、中丹オールスターズが軟式野球を続けたい選手の受け皿になっているのだ。

 こうしたクラブチームは、部活動の地域移行の理想とされている。ただ、多くの地域でクリアできずに悩む問題がある。主な課題は指導力のある人材の確保、活動場所、費用の3つ。片野さんは、1つ1つ問題をクリアしていった。

 まずは、人材。福知山ユナイテッドには各競技に専門知識を持つ指導者がいる。現役のトップアスリートや元プロ選手を招く計画も進めている。中丹オールスターズの審研人(あきら・けんと)監督は大学まで野球をしていた。現在は福知山市内にある中学校の教師で、野球部の顧問をしている。中学の部活がない水曜と日曜にボランティアで中丹オールスターズを指導。チームには審監督のほかに、現役の中学教師や取り組みに賛同する地元のボランティアがサポートしている。自身の中学では野球を指導する場がない教師も参加している。

 練習場所は中学校や地元企業のグラウンドを借りている。サッカーやバスケットなど、他の競技は地元企業の協力も受けている。廃校を活用している企業は、体育館やグラウンドを福知山ユナイテッドのために快く貸し出している。

行政とも連携…部活動の地域移行はまちづくりのチャンス

 子どもたちがスポーツをする環境を整えるために不可欠なのが費用の問題。片野さんは「スポンサー集め」と「行政との連携」に奔走している。「地域に貢献したい、子どもたちのために行動したいと思っていても、何をしたら良いのか分からずに迷っている企業は多いです。部活動の地域移行について説明すると、賛同してくれます」。福知山ユナイテッドを創設して半年ほどだが、すでに10社以上とスポンサー契約を結んでいるという。

 行政の存在も大きな力となる。部活動支援、アスリートの育成、生涯スポーツの環境整備などは予算化した事業となり得る。また、市が管理している施設は練習場所や試合会場に活用できる。

 片野さんは部活動改革にハードルがあることを理解している。だが、決して悲観せず、地域を変化させるチャンスと捉えている。

「部活動の地域移行は、スポーツを活用したまちづくりにつながります。廃校が練習場所になれば、新しい出会いや交流が生まれます。他の地域から人を呼んで合宿や大会をすれば、観光にもスポーツを活用できます。日本には福知山市くらいの規模のまちがたくさんあるので、そういうまちの星になれたらと思っています」

 長年当たり前だった部活の形が変わり、軟式野球の競技人口が減少する不安の声が上がるのは理解できる。ただ、同じやり方を継続してきた結果、野球から離れる子どもがいるのも事実。部活動改革はピンチなのか、それともチャンスなのか。捉え方次第で、どちらにも転がる。(First-Pitch編集部)