3月に入りプロスポーツの2023年シーズンが続々と幕開け、モータースポーツではスーパー耐久シリーズに続き、スーパーフォーミュラが4月8日、富士スピードウェイで開幕する。 これに先立ち6日、7日には第1回合同テストが行われた。今年は国内トップ…

3月に入りプロスポーツの2023年シーズンが続々と幕開け、モータースポーツではスーパー耐久シリーズに続き、スーパーフォーミュラが4月8日、富士スピードウェイで開幕する。

これに先立ち6日、7日には第1回合同テストが行われた。今年は国内トップ・フォーミュラが発足して50周年の節目ということで、これに向けた様々な改革に注目したい。

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■進化し続けるスーパーフォーミュラ

2013年にそれまでのフォーミュラ・ニッポンから国内トップフォーミュラカテゴリーを受け継ぐかたちで発足したスーパーフォーミュラは近年、世界からより注目されるようになった。その要因はスピードとバトル。

F1に匹敵するほどのスピードにマシンが進化したことに加え、オーバーテイクシステムという独特のシステム搭載によりバトルシーンが増え、その駆け引きが勝負の重要要素となっているのは他のフォーミュラレースにはない魅力だ。

その結果、F1にステップアップするための有力なカテゴリーのひとつと注目されるようになり、実際にストフェル・バンドーン、ピエール・ガスリーがここからF1のシートを獲得している。今季初参戦のリアム・ローソンも、F1候補生の一人だ。

加えてモータースポーツが存続していくための重要な課題である大気環境への配慮にも対応し2021年、それまでのレースの魅力を維持した上でカーボンニュートラルに取り組むプロジェクト『SF NEXT50』がスタート。

1年間のテストを経て、今季投入されるニューマシン「SF23」は、ボディに麻由来の天然素材等を使用することで原材料ならびに製造過程でのCO2排出量を約75%抑制した「Bcomp社」のバイオコンポジット素材が採用されている。またタイヤについても横浜ゴムがこれまで培ってきたノウハウを生かし、天然由来の配合剤やリサイクル素材など再生可能原料を活用したカーボンニュートラル対応レーシングタイヤが導入される。運用母体となる日本レースプロモーション(JRP)によれば「性能は従来とほぼ同等」。現時点では、時代に即した進化を果たしているといえる。

合同テストに姿を見せた新マシンSF23、前年王者・野尻智紀(手前) (C) JRP

■近藤監督選任で観客動員数アップに期待

その一方で、なかなか進化しないのが、サーキットの観客動員数だ。マシンが速くなっても、ステータスが向上しても、この課題だけは残ったまま。リモート配信のシステムは今季もオンボード映像やテレメトリーデータなどの情報が配信される『SFgo』導入と進化しているが、やはりレース魅力が最も感じられる生観戦が増えることが王道だ。

そんな中、観客動員に関するレベルアップに繋がる可能性がひとつ見えてきた。スーパーフォーミュラを運営する『JRP』が、新取締役会長にコンドーレーシングの近藤真彦監督が選任されたことを発表した。

近藤監督はドライバーを引退した後もスーパーフォーミュラ、スーパーGTの両トップカテゴリーでチームを率い続けている、モータースポーツにおける中心人物のひとり。その意味では、前任の中嶋悟監督の方に一日の長があると言えるが、一般的な人気、影響力はタレントとしても長くトップで活躍してきた近藤監督が上回る。

5日、鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デーで記者会見が行われ「多くの人にスーパーフォーミュラを楽しんでもらいたい」「メディアやファンとの距離を縮めたい」などの目標を近藤新社長は語った。「多くの人にスーパーフォーミュラを楽しんでもらいたい」については確かに、近藤新会長が本腰を上げることでできることがあるはず。この会見の記事を、普段はレースをあまり取り上げていないメジャースポーツメディアが取り上げていたことがその証だ。

“多くの人”の中の“従来レースに関心がなかった人”が一度、サーキットに足を運んでくれることが最も望ましい。今後近藤新会長の活躍次第で、そこに近づく可能性が見えてきた。コロナ禍収束が見えている今季は、その絶好のタイミングだろう。

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著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。