2009年WBCで韓国と5度対戦決勝戦でサインを変更した 2009年の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で…

2009年WBCで韓国と5度対戦…決勝戦でサインを“変更”した

 2009年の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で日本は韓国と5度も対戦した。東京ドームでの第1ラウンドでは14-2の7回コールド勝ちと0-1敗戦。ペトコ・パークでの第2ラウンドでは1-4と6-2。そしてドジャー・スタジアムでの決勝戦に延長10回5-3で勝利したが、試合前のミーティングで内野守備コーチだった高代延博氏はサインの変更をナインに伝えていたという。「5試合目だったし、念のためにね」。万全を期したのだ。

 WBCでのサインは高代氏が作った。「どこまで作ろうか、監督と相談して決めました。簡単だったですよ。盗塁、エンドラン、バントに、ここは走るなサイン。あとはすべてグリーンライトって選手に言っていたんで……。それから偽装スクイズも作りましょうとなった。一、三塁でスクイズのまねをして、一塁ランナーの二盗を助けるという意味で。結局、使わなかったですけどね」。

 韓国との決勝戦前に気になったのは、これだけ対戦したら、サインの傾向も調べているのではないか、ということだった。「韓国戦だけでエンドランをかなりやってましたからね。韓国はサインを盗んだり、そういうのに長けているということも聞いていたんで。みんなに迷惑をかけたらいかんし、ということで、いつもと逆にしてくれと……」。

 高代氏が前に出て「こういうことやぞって演技して、昨日ならこっちがエンドランだったけど、今日は違うぞ」と説明した。それほど難しいサインではなかったので、これくらいの変更は何の問題もなかった。選手たちもきっちり理解した。激戦を制して、歓喜のVをつかんだ裏側では、いろんなことが起きていたわけだ。

城島はキューバ戦で構えとは逆のコースに投げさせた

 大会を通して考えれば、さらに多岐にわたる。キューバ戦では相手ベンチからコースを伝える声を察知した捕手・城島健司(当時マリナーズ)がタイムをとってマウンドの松坂大輔と打ち合わせして、構えとは逆のコースに投げさせる作戦を展開。「城島はああいう洞察力というか、めざといというか、そういうところがありましたね、野球小僧的な」と高代氏も感心するばかりだった。

 一方で、1回だけ、ある選手がサインミスを犯したことがあったという。「聞いてみたら、ここはないやろっていう思い込みでした。サインミスにはそれが一番多いんですけどね。一切、マスコミには言わなかったですよ。三塁コーチャーの職務的なことだけど、サインミスがあっても平然とした普通の顔でいなさいよっていうのがセオリーなんでね。たとえ腹の中が煮えくり返っていても知らん顔してないといけないですから」。

 三塁コーチの高代氏は日本だったら通常、相手のシートノックを見て、外野手の肩の状態などをチェックできたが、WBCの場合はそれがなかったのでできなかった。「イチローに『肩強いやつおるか?』って聞いたこともありましたね。そしたら韓国のライトの『秋信守は肩強いですよ』って。『僕ほどじゃないけど』とも言ってましたけどね」。これも準備のひとつ。もちろん、スコアラーからの情報は欠かせないし、思い起こせば、いくらでも優勝の要因が出てくる。第1回大会に続く連覇は、総合力での勝利だったということだろう。

 だが、2013年の第3回大会は準決勝敗退。高代氏も2大会連続で内野守備走塁コーチを務めたが、悔しい結果に終わった。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)