西村優菜インタビュー(後編)女子ツアーを席巻する「ミレニアム世代」の代表格のひとりである西村優菜。今季から米ツアーに挑む彼女が、その覚悟のほどを語った――。――米ツアー参戦を表明した今季、このオフはどこかで合宿などを行なっていたのでしょうか…

西村優菜インタビュー(後編)

女子ツアーを席巻する「ミレニアム世代」の代表格のひとりである西村優菜。今季から米ツアーに挑む彼女が、その覚悟のほどを語った――。



――米ツアー参戦を表明した今季、このオフはどこかで合宿などを行なっていたのでしょうか。

「1月は宮崎で、コースには出ず、ひたすらボールを打ち込む日々を過ごしていました。そして、2月の頭から2週間、グアムで合宿を実施しました。午前中は練習して、お昼からラウンドしていました」

――午前中にみっちり練習して、午後にラウンドするというのは、かなりハードなスケジュールだったのではないですか。

「(グアム合宿は)所属先(スターツ)のゴルフ場だったので、いろいろ融通を利かせてもらって、ラウンドもひとりで回るので、そこまでハードな感じではなかったですよ。いい環境で、たくさん練習をさせてもらいました。濃密な時間を過ごせたと思います」

――アメリカに渡る前に、国内ツアーの開幕戦であるダイキンオーキッドレディスの出場が決まっています。その後のスケジュールはどうなっていますか。

「ダイキンオーキッドレディスのあと、2戦目の明治安田生命レディス ヨコハマタイヤにも出場します。その翌週に渡米予定です。

 渡米後は、ドライブオン選手権、DIOインプラントLAオープンと米ツアーの2大会に出場すべくエントリーはしているんですけど、まだ出場が確定しているわけではありません。それでも、現地に行って(出場の機会を)待ちます」

――5月末の第1回リシャッフル(リランキング)までに、何試合ぐらい出場できるのでしょうか。

「4試合か、出れても5試合だと思います」

――その限られた試合でどれぐらいの結果を残せば、リシャッフル後に出場できる試合数が拡大するのでしょうか。

「どれぐらいのポイントを得なければならないのか、私もはっきりとはわかっていないんですけど、Qシリーズの選手のなかでリシャッフルされるので、そこで今の順位(24位)より上に行って、20位以内に入れれば、だいぶ本戦に出場しやすくなると思います。

 ただ、リシャッフルではQシリーズの時のように、『20位以内へ!』と強く意識することなく、目の前の試合で少しでも好成績を残すことに集中したい。その結果、順位を上げられたら、後半戦はフィールド(出場選手数)も広がるので、試合に出やすくなるのかなと思っています」

――目の前の試合でひたすら好結果を目指すだけでなく、そうした"もうひとつの戦い"がある経験をするのも初めてではないですか。

「お尻を煽られている感じですね(苦笑)。それでも、一試合、一試合、大事に戦っていくというのは、これまでと変わらないので、あまり(リシャッフルについては)気にせずに戦えたらいいと思っています」

――リシャッフルまでは帰国しない予定ですか。

「そうですね。5月以降も、米ツアーを基本に考えています」

――退路を断って、アメリカに渡る、ということですね。

「昨年末、ゆっくり考える時間があったことがよかったと思います。そこで、覚悟は決まりましたから。今年一年、米ツアーに重きを置いて、米ツアーの来季シード権を獲るというのが、今年の目標です」

――万が一リシャッフルで上位に入れず、再び出場試合が限られてしまうといった"万が一"に備えて考えていることはありますか。

「考えずに頑張る。"万が一"が起きた時は、"万が一"が起きた時に考えます(笑)。"万が一"を考えたら、絶対にマイナスになる部分が出てきちゃうと思いますから」

――先にも触れましたが、オフに取り組んだ練習で重点的に行なったことはありますか。

「実は、このオフからスイング改造に取り組んでいて、グアムでも午前中はずっと新しいスイングを意識して練習し、午後はそれをラウンド(実戦)で試しながら、という感じでした。そしてラウンド後に、グリーン周りのアプローチを練習する、という一日を送っていました」

――スイング改造というのは、渋野日向子プロのように誰の目にも変化が明らかな改造を断行されたのでしょうか。

「そこまで大きく形が変わったとは思われないかもしれません。昨年までのスイングだと、インパクト後に膝が左に流れすぎていたんです。ですから、横意識(振り)から縦(振り)を意識するスイングに変えたという感じですね」

――その目的は飛距離ですか。あるいは、精度でしょうか。

「(これまでは)横に流れしまう分、手を返して"調子をとる"みたいにしまっていたんですね。すると、一年を戦っているうちに、どうしてもスイングのブレが出てしまうんです。ですから、膝が流れるのを避け、手の返しではなく、体の下の部分で調子をとるようなスイングに改造しています」

――"調子をとる"というのは、どのような感覚なのでしょうか。

「手首でスイングを合わせてしまう、という感じですかね。ミスショットをしてしまった時に、手首の返しでいいショットに誤魔化す、というようなイメージに近いかもしれません。

 手首を返して誤魔化していると、次第に根本的な土台が崩れてしまう。それをなくすために、下(下半身)で調子をとるスイングに改造中です。100%このスイングを身につけられたら、飛距離アップも少しは期待できるんじゃないかと思っています」

――まもなく開幕戦を迎えますが、完成度は今、どの程度でしょうか。

「まだ50%ぐらいですね。今シーズンに間に合わせるために、スイング改造したのではないんです。私のなかに、長期的なレールと短期的レールのふたつのレールを敷いていて、これは長期的な視野に立った時に必要なスイング改造だと思っています。

 もちろん、今シーズンも開幕から頑張りたいですし、大事な試練の年ですから、完成度を高めていかないといけないと思っています」

――さて、いよいよ今季開幕となります。日本で挑む2戦は、いわば国内ツアーの卒業試験みたいなものになるのでしょうか。

「え~ッ!?(笑)。というより、開幕戦って独特の雰囲気と緊張感があるので、楽しみな気持ちと不安な気持ちと......とにかく長期的なレールと短期的なレールのうち、短いほうのレールにうまく乗っていけたらなと思っています」

――最後に、改めて今季の目標を聞かせてください。

「やっぱり、スイングの完成度を上げるというのが具体的な目標のひとつですね。最初の2試合に加えて、(今季も)数試合は国内ツアーにも出たいと思っています。たくさん応援してくださる方がいるので、頑張りたいです」

(おわり)

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。2019年にプロテストに合格。2020-2021シーズンからツアー本格参戦を果たし、いきなりツアー4勝をマーク。賞金ランキング5位という結果を残す。2022シーズンもツアー2勝を飾って、メルセデスランキング5位、賞金ランキング2位という好成績で終えた。同シーズン終了後、米ツアーの最終予選会に参戦。ツアーのメンバー資格を得て、今季は米ツアーに挑む。身長150cm。血液型O。