東北連盟・仲山一也さんに聞く…野球普及に寄せる想い 今秋、日本ポニーベースボール協会(以下ポニーリーグ)は秋田県を舞台に…
東北連盟・仲山一也さんに聞く…野球普及に寄せる想い
今秋、日本ポニーベースボール協会(以下ポニーリーグ)は秋田県を舞台に国際大会を初開催する。9月16日から3日間にわたる「マルハンカップ・北日本国際親善トーナメント」開催を通じて東北を盛り上げようという試み。同協会東北連盟が発足した2021年から尽力する仙台ポニー代表・仲山一也さんに、国際大会が東北で開催される意義や野球普及に寄せる想いを聞いた。
仲山さんが2020年に仙台ポニーを立ち上げるまで、東北6県にポニーリーグ所属チームは「0」だった。元々、東北ではリトルシニア所属チームが圧倒的に多く、それに続くのがボーイズリーグで、ヤングリーグは1チームのみという構図。2021年に9チームで始まったポニーリーグ東北連盟は、およそ3年半で15チームまで数を増やした。
少子化や野球離れの流れが止められず、中学硬式野球ではやむなくチームが統廃合される例も少なくない。さらにはコロナ禍の中での連盟立ち上げという“逆風”。その中でも所属チーム数が増えているのは、仲山さんの努力によるところが大きい。東北連盟では他団体からの移籍はなく、無所属で活動していたチームを訪問し、仲間に誘った。
「ポニーリーグは勝つことがすべてではなく、いかに楽しく野球の基礎を学んで、野球が好きなまま高校に進めるか。そこを各チームの代表や監督にお話しさせていただき、徐々に同志が増えてきた形です」
中学硬式野球界の中でもいち早く投球数制限や低反発バットを導入するなど、子どもたちの健康や将来を第一に考えてきた在り方が、若い指導者や保護者の共感を呼ぶという。「時代の流れに沿った野球を展開しているのがポニーリーグなのかなと。子どもの健康を守るルールがある。地方大会はリーグ戦なので試合数が多い。そういった点が魅力なんだと思います」と仲山さんは話す。
中学硬式野球は大多数がトーナメント方式を採用するが、ポニーリーグではリーグ戦が基本。トーナメント方式の全国大会でも、敗れた後に親善試合が用意されているため、1試合で終わるチームはない。「野球は試合に出て覚えよう」という理念が体現された仕組みが、指導者や保護者の心に響くようだ。
9月に秋田で国際親善トーナメント開催「子どもたちの将来へ大きな経験」
さらに、発足間もない東北連盟では「みんなで歴史を作っていこう」をモットーに、加盟チーム同士の連携を重視。所属チームの声を反映させながら、子どもたちに笑顔が咲く環境作りに試行錯誤する。「試練ではありますが、苦にならない試練です」と、仲山さんは笑顔で言葉を続ける。
「我々が目指すのは『東北から日本一に』『東北を最強に』ではなく、『野球の力で東北を盛り上げる』ということ。大切なのは勝ち負けではなく、子どもたちがいかに純粋に野球を楽しみ、盛り上がれるかだと思っています」
子どもたちが新たな楽しさを知るきっかけとなりそうなのが、9月に開催される「マルハンカップ・北日本国際親善トーナメント」だ。舞台となるのは秋田県。海外から「日本で試合をしたい」「日本の野球を子どもたちに見せたい」という声が届くことを知ったマルハン社が、子どもたちの国際交流という意義に賛同。かつてポーランド代表監督を務めた秋田NBAポニー代表・監督の渡辺龍馬さんや行政の協力もあり、実現の運びとなった。
参加国は選定中で、日本からは秋田に拠点を置く4チームをはじめ希望チームが参加する。
「野球ではないベースボールを中学生で体感できるのは、すごくいい経験になると思います。実際、高校でも日本代表に選ばれなければ国際大会には出られない。なので、子どもたちの将来にとっても本当に大きな経験になると思います。正直なところ、コロナ禍の真っ只中で東北連盟は発足したので、私たちにとって国際大会の運営は初めて。手探りの部分は多くありますが、子どもたちの笑顔は容易に想像がつくので楽しみですね」
東北連盟が発足して2年「何をやっても歴史になる楽しさがある」
野球経験のない仲山さんが仕事の関係で移り住んだ仙台で、ここまで野球の普及に力を注ぐのは、子どもたちの笑顔が原動力となっている。仙台ポニーを立ち上げて3年、東北連盟が発足して2年が経つが、東北ならではの課題も見えてきた。
「東北の大部分では、雪の有無にかかわらず3月末までグラウンドが使えないんですよ。だから、関東では2月末から始まる春季大会が、東北では5月に始まる。そうなると短期間で多くの大会をこなさなければならず、子どもを守るはずのポニーリーグで本末転倒なことが起きてしまいます。大会数を減らすのか、全国大会への予選の在り方を見直すのか、何らかの手は打っていかないといけない。そういった課題にも取り組む必要がありますね」
また、東北6県の面積は日本国土の約1/3を占めるほど広大だ。さらには中央に奥羽山脈が走り、太平洋側と日本海側の行き来は簡単ではない。「秋田で大会をする時は、仙台のチームは必ず宿泊することになる。逆もまた同じです。保護者の負担をどれだけクリアできるのかが課題です」。今後は東北連盟独自のスポンサー獲得なども視野に入れながら、解決の糸口を探っていくという。
「解決するべき課題は色々ありますが、ポニーリーグだからできること、東北だからできることもある。始まったばかりの連盟だからこそ、何をやっても歴史になる楽しさもあります。加盟チームの皆さんと協力して東北のオリジナリティを出しながら、一つ一つ階段を上がっていきたいと思います」
野球の力で東北を盛り上げたいという挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)