富山・黒部市の中学軟式野球チームは部活動の地域移行を機に実力アップ 部活動改革のスタートが1か月半後に迫っている。ただ、…

富山・黒部市の中学軟式野球チームは部活動の地域移行を機に実力アップ

 部活動改革のスタートが1か月半後に迫っている。ただ、体制が整っていない地域が多いことから最初の3年間は段階的な移行となるなど、課題が山積している。最大の問題は指導者の確保。4日に福島県いわき市で開催された部活動改革のパネルディスカッションでは、専門知識がない指導者でも中学校の野球部を強化できる例が示された。ノーサインに方針を変更したことで選手に自主性や考える力が生まれたという。他の地域で問題解決のヒントとなりそうだ。

 いわき市で開かれた部活動改革のパネルディスカッションには、野球関係者や教員らが福島県内外から集まった。新年度から段階的に始まる部活動の地域移行への課題解決の糸口をつかもうと、参加者には熱気と危機感がにじんでいた。

 部活動の地域移行を進めるために最優先で取り組むべき課題は人材の確保だ。教員の負担軽減が目的とされているため、部活動を指導する外部の指導者を見つける必要がある。パネルディスカッションでは「国の方針では予算を割いて部活動指導員を増やすとしていますが、実際のところ指導員が見つかりません。子どもたちのモチベーション低下が心配されます」と、いわき市の現状が報告された。

 人材確保に苦労する地域が多い中、解決のヒントを示したのがパネラーに招かれた潟田久雄さんだった。潟田さんは富山県黒部市の中学校で軟式野球部の外部コーチをしている。2020年にコーチを始めた時、練習時間が短いこともあって、選手の技術が向上せず覇気もなかったという。サインプレーもチームに浸透しておらず、試合に勝てなかった。

 現状を打破しようと、潟田さんは顧問の教員と相談して方針を大幅に変更した。限られた練習時間で最大限の効果を生むため、それぞれの練習日を「打撃の日」「守備の日」と特化。メニューを切り替える時間を省き、1つの課題に集中して取り組めるようにした。

ノーサインに方針変更…選手に生まれた自主性や考える力

 サインも一切やめた。選手たちは最初こそ戸惑っていたものの、目に見える変化が表れたと潟田さんは話す。「選手たちに考えさせて自立させる目的で始めたのですが、どんどん積極的になりました。指導者が選手のミスを叱らないようにすると、上手くなるためにはどうすれば良いか質問してくる選手が増えました」。

 チームは改革1年目に富山県大会で優勝。昨年も県大会で準優勝している。潟田さんは「顧問に野球経験がなくても子どもたち自身が考えてプレーすれば、チームは強くなると考えたことがノーサインにした理由の1つでした。子どもたちが実証してくれました」と語った。

 顧問はサインを出さず、代わりに練習試合では選手の打撃や投球フォームを撮影。選手が映像を見て修正点を確認している。それでも、顧問に野球の専門性がないことに不安を感じる保護者もいるため、トレーニングはプロのトレーナーに依頼しているという。小学6年生には定期的に中学の練習に参加してもらい、親子の安心感につなげている。その結果、今年度の中学1年生は近年で最も多い13人が入部している。

 子どもたちは意識の持ち方次第で自ら練習し、成長していく。部活動を移行する地域の人材探しは、野球の専門性にこだわる必要はないかもしれない。(First-Pitch編集部)