日差しに若干ながら春の兆しが見え隠れするようになった22日、3年目を迎えた「Dリーグ」22-23シーズンのラウンド9が開催された。コロナ禍の開催ではあるが、今回も会場の有明ガーデンシアターは、駆け付けたダンスファンによってほぼ埋め尽くされ、…

日差しに若干ながら春の兆しが見え隠れするようになった22日、3年目を迎えた「Dリーグ」22-23シーズンのラウンド9が開催された。

コロナ禍の開催ではあるが、今回も会場の有明ガーデンシアターは、駆け付けたダンスファンによってほぼ埋め尽くされ、日本発世界初のダンスリーグの確かな盛り上がりを感じながらの観戦となった。

今回のラウンド9も、過去2シーズンで採用されたコンペティション方式から今シーズンになってルール変更された2チームずつ、総当たり戦での開催である。今ラウンドも、対戦するチームごとに、個性や戦い方の違いが際立ち、観る側にとっては、勝負の厳しさと共に、各ラウンドの勝敗の陰影がますます増し、鮮やかな印象を残すラウンドとなった。

さっそく、全12チームによる6つのマッチを振り返りたい。

◆ラウンド8 セガサミー・ルクスがトータルランク首位の座を奪還 前編

■各チームに個性と深みが宿り、ますます見応えが増す

1st MATCH:SEPTENI RAPTURES vs. Benefit one MONOLIZ

今シーズン、まだ勝利を手にしていないものの、毎回観る者を愉しい気分にさせてくれるエンタメ集団ラプチャーズ。今回も探検隊をテーマにHipHopを主体としたラプチャーズ・ワールドを展開してくれた。

対するモノリスのテーマは「バタフライ」。いつものヒールを脱ぎ捨て、白いベールに包まれ、蛹が生まれ出ずるようなオープニングから蝶へとなってゆく魅惑的な踊りを披露し観客を魅了したが、結果、観客を大いに沸かしたラプチャーズがジャッジポイント4:2で念願の今シーズン初勝利を飾った。

2ndMATCH:USEN-NEXT I’moon vs. dip BATTLES

先攻は迷彩服に身を包んだいつにも増して勇ましい姿のアイムーン。ここ数ラウンド、可愛くてキュートなガールズチームを返上し、力強さを押し出してきたアイムーンがSPダンサーにMONAを迎え、さらにパワフルに攻めたナンバーを展開。後半は衣装の上半身を大胆に脱ぎ捨てさらに大人のアイムーンを強調し観る者の目を奪うサプライズも飛び出し観客を沸かした。

対するディップ・バトルズのテーマは虫をモチーフとした「バグ」。ステージに転がった大きな虫の卵のように見える物体から手足が飛び出し踊り出すという仕掛けと共に、虫たちの忙しい動きを音楽にのせた独特の雰囲気で始まり、ハウスダンスのスタイルに拘ったナンバーがとどけられた。結果、1:5で疲れを見せぬ虫たちの個性豊かな振り付けで会場の空気を飲み込んだディップ・バトルズが勝利を収めた。

3rdMATCH:Valuence INFINITIES vs. LIFULL ALT-RHYTHM

こちらはキャラクターの強さが印象的なチーム同士の戦い。先攻はブレイキンにヒップホップを併せたストリート代表ともいえるインフィニティーズ。柔らかい素材のえんじ色のシャツに白いパンツという衒いのない衣装だが、インフィニティーズらしく、音ハメやフリーズなどのブレイキン技を巧みに組み合わせ、フォーメーションも非常に凝ったクールなナンバーを展開してくれた。

対するアルトリズムは赤いマスクと衣装で不思議な雰囲気をまとって登場。ピアノの重低音で始まる楽曲で生命のエネルギーと共に血液の流れを表現したナンバーは、中央の二人は足を固定したゼロ・グラビティの手法を取り入れ、重力を感じさせないスローなムーブ、そして周りのダンサーからは滾る血潮を現したような激しい動きが繰り出され、その対比も鮮やかに芸術性の高いナンバーで今回も観る者を魅了するザ・アルトリワールドが展開された。が、結果は4:2で踊りの中に強い勢いを感じさせたインフィニティーズが前ラウンドに続いての2連勝を遂げた。

◆【後編】ラウンド9 再びサイバーエージェント・レジットがトップを奪還 

◆うまいだけでは勝てない、ますます総合芸術の色合いを強めるDリーガーたち

◆2年連続MVD “B BOY” ISSEIの“これまで”と“これから” 「パリ五輪だけがダンスじゃない」

著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。