世界では、いつでもどこかは食事時である。回転を続ける地球では、各地の時間が違うからだ。蹴球放浪家・後藤健生は、地球儀の…
世界では、いつでもどこかは食事時である。回転を続ける地球では、各地の時間が違うからだ。蹴球放浪家・後藤健生は、地球儀の上に引かれた時間を分けるラインを何度も越えてきた。時には、時差ぼけよりもつらいものがある。世界各地における、腹時計の違いである。
■放浪中の楽しみ
放浪中は、現地のレストランで美味しい食事を摂ることも楽しみの一つです。『蹴球放浪記』では、これまでもいろいろな食べ物を話題にしてきました。
テーブルに座ってメニューを見て、値段も勘案しながら、「今日は何を食べようかなぁ?」と悩むのは人生の最大の楽しみの一つだと思います。その前に、どこの店に入るかを決めるという選択の喜びもあります。
僕は、店選びやメニュー選びについてはかなり優柔不断な男で、迷いに迷って入るレストランを選び、テーブルに座ってからも「もうちょっと待って」とか言いながら、メニューを睨んで悩み続けます。
そして、店員が何度目かに注文を取りに来た時に直感で「これっ!」と指を差すのです。
試合開始直後まで先発メンバー選びに悩んでいたというフィリップ・トルシエもそんな心境だったのでしょうか?
■カタールW杯の食事事情
しかし、時にはレストラン選びの選択肢がまったくなくなってしまうという事態も生じます。
近くにレストランなどがない場合もあります。
たとえば、カタール・ワールドカップの時も、場所によってはアルジャヌーブ・スタジアムなどでは、周囲に食事のできる店はありませんでした。アルトゥマーマ・スタジアムの周りには出稼ぎ労働者向けの安価なインド食堂やフィリピン食堂がありましたが、ほんの3、4軒でした。
アルゼンチン対フランスの決勝戦が行われたルサイル・スタジアムは、ビジネスマンたちが集う新市街だったので、スタジアム周囲には洒落たレストランやカフェがたくさんありました。
また、日本代表がドイツやスペインと戦ったハリファ国際スタジアムはすぐそばに「ヴィラッジオ」というショッピングセンターがあり(イタリア風を売り物にしており、入口の一つはスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァのようなデザインになっています)、中には高級レストランやフードコートが入っているので、試合前の食事には不自由しませんでした。
■閉店の早いオランダ
試合後の食事に困ったのが、2005年にワールドユース選手権(現、Uー20ワールドカップ)が開催されたオランダでした。
この大会では1日2試合が同じ会場で行われましたが、2試合目は20時30分キックオフ。試合が終わると、もう夜の10時半です。すると、店はもうすっかり閉まってしまうのです。開いているように見えるレストランも、入ろうとすると「もう火を落としちゃったよ」と言われるのが関の山です。
せめて、駅構内に入っているスナックくらい開いていてくれるといいのですが、まず閉店に間に合いません。
とにかく、オランダというのはヨーロッパ諸国の中では夜の閉店時間が早い国だったのです。
ですから、オランダ在住のジャーナリストの中田徹氏などは、自宅で弁当やおにぎりを作って持ってきていました。そして、僕たちも試合前に何か食べるものを買ってからスタジアムに向かうようになりました。