さっそく注文「低めに構えなければいけないと思っているようだけど…」 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ…
さっそく注文「低めに構えなければいけないと思っているようだけど…」
第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ向け、宮崎でキャンプ中の侍ジャパン。正捕手と目されるソフトバンク・甲斐拓也捕手は、初めてコンビを組むパドレス・ダルビッシュ有投手との“バッテリー力”をアップさせるべく、試行錯誤を繰り返している。
昨年まで6年連続ゴールデン・グラブ賞に輝き、2021年に行われた東京五輪では正捕手として侍ジャパンを金メダル獲得に導いた甲斐。そんな名捕手にとっても、バリバリの一流メジャーリーガーで球威も球種も“桁違い”のダルビッシュの特徴を短期間で完全に把握し、持ち味を生かし切った配球を組み立てるところまで持っていくのは、決して簡単な作業ではないだろう。
21日のブルペンでは、ダルビッシュが甲斐の構えに注文をつけるシーンもあった。ダルビッシュは「日本の投手には高めに投げるピッチャーがあまりいないけれど、僕は基本的に高めに投げたいタイプ。甲斐選手としては、低めに構えなければいけないと思っているようなので、自分は高めに構えてほしいと言いました」と説明した。
日本では首脳陣が投手に「絶対に高めには投げるな」と厳命するケースが多い。高めは長打につながる危険ゾーンというイメージが強いが、ダルビッシュは配球の中で球威のある高めで押し込むパターンも駆使している。
特に甲斐は昨シーズン終了後、フレーミング(際どいコースへの投球をストライクと判定させるミットの使い方)の研究と向上に力を入れてきた経緯があり、低めのストライクゾーンいっぱい付近への意識が強いのかもしれない。
ダルビッシュが認める男「日本のナンバーワンキャッチャー」
さらにダルビッシュはこの日、メーン球場で実戦を想定した練習「ライブBP」に登板。ヤクルト・村上宗隆内野手との一投一打にスタンドが沸いたが、マスクをかぶる甲斐には、対決を楽しむ余裕はない。「僕自身には対決という意識はなかった。打者がいる中でダルさんの投球を捕り、ダルさんがどういう意識で投げているかを知り、それに合わせた構えをしたかった。(登板が)終わってからも、そういう会話をしました」と明かした。
もちろん、配球についても意志の疎通とすり合わせが必要だ。「たとえば、(数種類の)スライダーを投げ分けることができる投手なので、そこはよく聞かなければいけないと思っています」とうなずく。
こうした甲斐の献身的な姿勢に、ダルビッシュは「構えとか球種の選択とか、すごく気を使ってくれている。僕は甲斐選手が日本のナンバーワンのキャッチャーだと思っているし、今はまだわからないのが当たり前なので、焦らず少しずつやっていってくれれば大丈夫だよ、と話しました」と言うほどだ。
それでも、甲斐は自分に妥協を許すつもりはない。「ダルさんが我慢するというのは、僕は絶対に嫌。ダルさんの考え、投球に僕がついていって、合わせていきたい。そのためにも、たくさんお話をさせてくださいとお願いしています」とまなじりを決している。
さらに今後、エンゼルスの大谷翔平投手もチームに加わることを考えると苦労は絶えないが、甲斐にしかやり遂げられない仕事とも言えそうだ。それにしても、捕手とはなんと過酷なポジションであることか……。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)