第4回全日本ブレイキン選手権の決勝戦が19日、国立代々木競技場 第二体育館で開催された。◆【前編】2024年パリオリンピックまで約500日……確かな盛り上がりを見せた『全日本ブレイキン選手権』■20歳Shigekixが王座へ今回、19日DA…
第4回全日本ブレイキン選手権の決勝戦が19日、国立代々木競技場 第二体育館で開催された。
◆【前編】2024年パリオリンピックまで約500日……確かな盛り上がりを見せた『全日本ブレイキン選手権』
■20歳Shigekixが王座へ
今回、19日DAY-2の決勝トーナメントに進んだのは前日18日に行われたDAY-1で勝ち残ったトップ8人のB-Boy、HIRO10、Shigekix、RYOGA、NORI、Steezyskee、ISSIN、YU-KI、SHADE そして、同じくトップ8人のB-Girl、 Riko,AYUMI、Chura、AYU、HONOKAA、AMI、YUINA、AYANEの全16名。
B-Boyトップ8人のトーナメントで素晴らしいパフォーマンスを披露し見事優勝に輝いたShigekixは20歳という若さ。決勝で対戦した33歳のSHADEも深みのある技を重ね健闘したが、惜しくも敗れてしまった。
Shigekixは試合後のインタビューで「心の底から楽しめているとき、いい踊りができて、それが結果になっていく」「今日もすごいプレッシャーを感じていた。でもオリンピックで金を狙うならこのくらいのプレッシャーは当然と思ってワールドシリーズも臨まないと」「今日は自分のベストができ、特にファイナルのラストムーブでは他ではなかったパワーが自然と出せた」「音ハメは、合わせにいくというより、身体が勝手に音楽にマッチしてゆき、自然と身体に音が入ってくる感じ」等々と笑顔で語ってくれた。若く頼もしいチャンピオンの誕生を心から祝いたい。
■B-Girlの魅力はしなやかさと繊細さ
対して、B-Girlの決勝はAYUMIとAMI。どちらも3ラウンドともに疲れを感じさせないクリエイティビティに溢れたムーブを繰り出し、筆者の目には甲乙つけがたい戦いに見えたが、結果は2:1で「毎回自分の力を出し切ることを大切にしている」「細かい動きに気をつかっています」と試合後に語ったAYUMIが優勝をさらった。男子と比べると女子のブレイキンは迫力やダイナミズムの点ではどうしても及ばない部分はあるが、しなやかさと繊細な動きという女性ならではのポイントもある。それぞれ見どころや楽しみ方が違うということだろう。
■パリ五輪で金メダル獲得なるか……
最後になるが、今更ながらブレイキンの歴史を改めて辿ってみると、このダンススタイルは1970年代にニューヨークのストリートで「ブレイクダンス」という呼び名で生まれ、当時、ニューヨークの貧困地帯で頻発するストリートギャングの抗争を「暴力でなくダンスで勝負しよう」と、DJでもあったギャングのボスから提唱され、“ダンスバトル”として繰り広げられ始めたという歴史をたどることができる。
その後、1984年にはその文化を元にした映画『ブレイクダンス』が世界的にヒットし、このニューヨーク発のストリートカルチャーが日本でも知られることとなったのだ。そんな背景を持つ「ストリートカルチャー」がスポーツの域へと進化してこの日本でしっかりと根付き、現在は世界トップレベルの選手がそろう強豪国になろうとは、当時の誰が予測したであろうか。
ダンスがオリンピックの正式種目となること自体、エポックメイキングなことと感じる筆者だが、その種目で、日本に金メダルがもたらされることになるかもしれないという事実も重ねて素晴らしい。
パリ五輪まで500日をきった今、ますます日本のブレイキンが盛り上がり、日本人がダンスで世界に勝つというまさかの金字塔を打ち立ててくれることを祈るばかりである。
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著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。