中央競馬今年最初のGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)が2月19日に行なわれる。今年は、地方競馬の女王や、レー…

 中央競馬今年最初のGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)が2月19日に行なわれる。今年は、地方競馬の女王や、レース創設以来初となる外国調教馬が参戦。そして、福永祐一騎手の国内ラストGI騎乗など、見どころ満載だ。

 ただその一方で、過去2年連続で頂点に立っているカフェファラオをはじめ、GIチャンピオンズC(12月4日/中京・ダート1800m)の覇者ジュンライトボルト、同2着のクラウンプライド、さらに地方交流重賞を含めてGI実績のあるウシュバテソーロやテーオーケインズなどの有力馬は、2月末のサウジアラビアや3月末のドバイといった海外の国際レースを選択。「ダート王決定戦」というには、やや寂しいメンバー構成となった。

 日刊スポーツの松田直樹記者は、そうしたダート界の一線級が不在となっている状況について憂いつつも、現状では「仕方がない」という。

「フェブラリーSの1着賞金は1億2000万円。その額面だけ見れば、十分に高額なレースだと思いますが、今や世界はもっと上をいっています。

 来週(2月25日)開催されるGIサウジC(サウジアラビア・ダート1800m)は、1着賞金が1000万ドル。日本円にして約13億円です。5着でも100万ドル(約1億3000万円)。掲示板以上でフェブラリーSの勝ち馬より高い賞金が手に入るわけですから、国内の強豪が海外に目を向けるのも当然でしょう。

 その結果、カフェファラオやジュンライトボルトが来月行なわれるドバイワールドC(3月25日/UAE・ダート2000m)への転戦込みで、サウジアラビア遠征を決めたのも仕方がありません。こうした有力馬の"海外流出"を避けるためには、賞金増額が手っ取り早いのですが、来年以降のダート路線は地方交流重賞へ重きを置いた番組編成にシフトすることを考えると、なかなか難しいかも......」

 ともあれ、今年も面白味のあるメンバーがそろったフェブラリーS。過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は4勝、2着2回、3着2回と、その信頼度はかなり高い。しかしながら、伏兵の台頭も頻繁に見られ、3連単ではしばしば好配当が生まれている。

 現に2020年と2021年には1番人気が勝利を飾りながら、3連単の配当はともに10万円超え。波乱含みのレースと言える。

 はたして、今年はどうか。

 注目を集めるのは、前走のGIII根岸S(1月29日/東京・ダート1400m)を快勝したレモンポップ(牡5歳)。同レース2着で、最大のライバルと目されていたギルデッドミラーが突然の引退となり、断然人気が予想される。だが、松田記者は同馬について懐疑的な目を向ける。

「レモンポップはデビュー10戦10連対の最有力候補ですが、昨秋にオープン特別のペルセウスS(10月30日/東京・ダート1400m)を勝ったあと、中1週でGIII武蔵野S(11月12日/東京・ダート1600m)に挑んで2着に敗れた過去があり、根岸Sから中2週で迎える今回、陣営はゴーサインを出すまでに慎重な姿勢を見せていました。

 出走してくるからには、状態面に問題がないと判断していいと思いますが、全7勝のうち最多の5勝を挙げている1400m戦ほど高い信頼を置けないのは確か。今年も、にわかに波乱ムードが漂います」

 そこで松田記者は、好配当の使者として激走候補を2頭推奨する。1頭目は、昨年のレースでも5番人気で2着に入ったテイエムサウスダン(牡6歳)だ。



フェブラリーSでの一発が期待されるテイエムサウスダン

「昨年は根岸S1着からの参戦でしたが、今年は同レースで14着に終わりました。この一戦で評価が急落なら、"儲けもの"と見ています。

 その根岸Sは、想定外の展開でした。前に行った馬がいずれも下位に沈む流れで、同馬も序盤3ハロンが34秒6というハイペースのなか、3~4番手を追走。最後は失速した先行馬とともに後退していきました。

 今回も騎乗するクリストフ・ルメール騎手らしからぬ騎乗でしたが、テン乗りでもありましたし、若干絞れていたとはいえ、休み明けの影響もあったのかも。

 実際、レース翌週に蛯名正義調教師が『バテた2頭のうしろで広いところに持ち出せず、不完全燃焼の競馬になった。走りきっていない感じがあるから、ダメージはない。スムーズなら、前回のようなことはないはず。ラクな馬ではないけど、上位とはそんなに差はないはず』と言っていたように、力負けではありません。

 昨年3月に開業した蛯名正師にとっては、初のJRAのGⅠ挑戦。今回は550kg近い同馬の上積みにも期待が持てます。明け6歳初戦の前走が衰えではないのなら、十分に見直せる馬です」

 松田記者が注目するもう1頭は、海外から参戦するシャールズスパイト(牡6歳)だ。

「カナダ調教馬の同馬は昨年、アメリカの芝GIメーカーズマークマイルS(4月15日/芝1600m)を優勝し、秋にはGIBCマイル(11月5日/アメリカ・芝1600m)で2着。芝、ダートの両GI制覇に向け、日本のダートGⅠにターゲットを絞ってきました。

 ダートは2戦して未勝利ですが、3歳時にはGIケンタッキーダービー(アメリカ・ダート2000m)参戦が検討されたほどの馬。早くからダート適性が見込まれていたようです。

 父スパイツタウンは、日本で芝、ダートの両方で活躍馬が出ている種牡馬。プレレーティング116ポンドは、出走馬トップの数字(次位はメイショウハリオの115ポンド)で、額面上の実力は足りていると思います。

 ここまで14戦5勝。フェブラリーSは招待競走ではなく、馬主は渡航費などの経費を自費でまかなう必要があります。そこまでして参戦を決めたのは、東京競馬場の国際厩舎の新設など、さまざまな理由があるのでしょうが、第一に好勝負を見込んでいるからと考えられます。その後はドバイターフへの登録もあり、海外転戦が予定されていますが、どんな走りを見せるのか楽しみです」

 昨年は1番人気が不振だったGI戦線。今年もその流れが続くようなら、ここに挙げた2頭が波乱の一端を担う存在となってもおかしくない。