今日の日本女子ゴルフ界の盛況があるのは、間違いなく宮里藍(31歳)の登場があってこそ。そんな彼女が今季限りの現役引退を発表した。その衝撃的なニュースを受けて、彼女から多大なる影響を受けた選手たちは何を思うのか。その心情に迫る――。原江里…

今日の日本女子ゴルフ界の盛況があるのは、間違いなく宮里藍(31歳)の登場があってこそ。そんな彼女が今季限りの現役引退を発表した。その衝撃的なニュースを受けて、彼女から多大なる影響を受けた選手たちは何を思うのか。その心情に迫る――。

原江里菜、渡邉彩香、香妻琴乃ほか12名が語る「私にとっての宮里藍』を読む>



サントリーレディスの初日、2日目と宮里藍(中央)と一緒にラウンドした上田桃子(右)
上田桃子(31歳)
1986年6月15日生まれ、熊本県出身。今季賞金ランキング7位。
2005年プロテスト合格。ツアー通算12勝。(※成績等のデータは6月17日現在、以下同)

(藍ちゃんから言われて、最も印象に残っている言葉は?)そういうのって、藍ちゃんとあまり喋る機会がなかった人のほうがあるんじゃないですか。私はこれまで、彼女といっぱい話をして、(彼女から)勉強してきたから、特別にそういう言葉ってないんですよね。

(一緒にプレーして泣いていた?)いやぁ~、「これで最後かなぁ」って思うのと、「ずっと見ていたかったな」っていう思いもあって。ほんと、中学校くらいからずっと一緒にやってきたので。

(藍ちゃんはどんな人か?)いやぁ、完璧でしょ。言うことないですよ、人としても、プロゴルファーとしても、女性としても。

(藍ちゃんから一番学んだことは?)一番とかそういうの、私には本当にないんですよ。もう、すべて(が学ぶこと)ですから。普通の人だったら、(藍ちゃんと一緒にいたら)そうなると思いますよ。


宮里藍が「大好き」という菊地絵理香
菊地絵理香(28歳)
1988年7月12日生まれ、北海道出身。今季賞金ランキング17位。
2008年プロテスト合格。ツアー通算3勝。

(藍さんとは)今年、初めて一緒に回らせてもらったんですけど、ラウンド中も余裕があって、あそこまでの地位の方なのに、向こうから気さくに話しかけてくださる。皆が「ああいう人になりたい」と目標にすることがすごく納得できましたし、子どもから大人まで人気を博す理由がよくわかりました。大スターでありながら、そういうところをまったく出さないですし、誰に対しても分け隔てなく対等に接してくださる方なので、私は大好きです。

 藍さんは17歳くらいからこの世界の第一線でやられてきて、他の選手よりも濃いゴルフ人生だったと思うので、引退が早いな、という感じはないですね。それでも、いいときにやめるというのは、すごく勇気がいることだと思います。

鈴木 愛(23歳)
1994年5月9日生まれ、徳島県出身。今季賞金ランキング2位。
2013年プロテスト合格。ツアー通算4勝。

(藍さんから)初めて声をかけてもらったのは、一昨年の全米女子オープンに出場したとき。「やせたね。(2014年日本女子プロ)優勝、おめでとう」と言われたことが印象に残っています。

 私がゴルフを始めた頃にはすでにスターだったので、まさにゴルフを始めるきっかけになる存在でしたし、「藍さんみたいになりたいな」ってずっと思っていました。まだ今後、どこかで一緒に回る機会があったら、スイングのリズムと、ショートゲームがすごくうまいので、そういうところを中心にじっくりと見てみたいなって思っています。




「決断」の際には、必ず宮里藍に相談していたという有村智恵
有村智恵(29歳)
1987年11月22日生まれ、熊本県出身。今季賞金ランキング64位。
2006年プロテスト合格。ツアー通算13勝。

(藍先輩から言われて、最も印象に残っている言葉は?)う~ん、難しいですね。いっぱいありすぎて。つらいときとか、何かを決断しなくてはいけないときとか、必ず相談するので。

 アメリカに行くときとか、日本に帰ってくるときとか、そういうときは「とにかく、智恵が一番幸せなところが、一番幸せな場所だから」というようなことを必ず話してくれます。そして、「そこを見つけるのが、智恵にとって一番の正解なんだと思うよ」と言って、最後には「どんな選択をしても、私は応援しているからね」って言ってくれます。その言葉に安心させられるというか、それが励みになりますよね。

金田久美子(27歳)
1989年8月14日生まれ、愛知県出身。今季賞金ランキング57位。
2009年ツアーデビュー。ツアー通算1勝。

 アマチュア時代、私が中学1年生で藍さんが高校1年生のときに一緒に日韓対抗戦に出場しました。プロになってからは、デビュー1年目のサントリーレディスで一緒に回りました。上げるアプローチがすごくうまかった。それが、とても印象に残っています。

 ゴルファーとしても素晴らしいし、人間的にも理想的な人だと思います。私も子どもの頃からゴルフをやっていますけど、ずっとトップでやってきた藍さんと違って、私はまだまだモチベーションを高めていかなければいけないし、上に向かっていかなければいけないと思っています。

(藍さんは)まだまだできると思いますけど、そういう時期にやめるのはすごくカッコいい。カッコいい人生だな、と思います。また、藍さんが(引退発表会見で)言った「ゴルフだけが人生じゃない」というのは、すごくいい言葉だと思いました。藍さんなら、いろいろな仕事ができるだろうし、結婚してもいい奥さんになりそうですよね。




宮里藍との思い出を語ってくれた諸見里しのぶ
諸見里しのぶ(30歳)
1986年7月16日生まれ、沖縄県出身。今季賞金ランキング110位。
2005年プロテスト合格。ツアー通算9勝。

 藍さんはジュニア時代、プロ時代を含めて、女子ゴルフ界の人気を20年ぐらい引っ張ってきた。それは、想像できないくらい大変なことだったと思うし、そんななかでトップを走り続けなければいけなかった立場を考えると、ほんと「お疲れさまでした」という言葉をかけたいと思います。

 同じ沖縄県出身で、私は小学3年生のときから藍さんを知っていて、本当のお姉さんのように面倒を見てくれました。小学生の頃から物怖じしないというか、大人の人たちの中に入ってもしっかり対応できていて、私はその後ろをついていくという感じでした。

 私は「プロになりたい」と思ってプロになったのではなくて、藍さんのように「プロになる前に優勝したい」「プロになって優勝したい」という思いを抱いて、常に先を目指してやってきたからこそ、今の自分があると思っています。そういう意味では、プロで結果を出せたのも、藍さんのおかげですね。

佐伯三貴(32歳)
1984年9月22日生まれ、広島県出身。今季賞金ランキング35位。
2007年ツアーデビュー。ツアー通算7勝。

(藍ちゃんとは)ジュニアのナショナルチームで一緒でしたけど、当時から今と変わらず、律儀で、すごくいい子でした。今年の、試合の出場の仕方を見ていたら、「あっ、そろそろ(引退)なのかな」とは思いましたけど、まさか今年いっぱいとは思っていなかったので、寂しい気持ちが大きいですね。

 モチベーションの高め方とか、第一線で居続けることとか、そういうことの難しさは、私なんかと比べると、彼女のほうが格段に感じていることだと思うので、本当に「お疲れさまでした」と言いたいです。思い出と言えば、藍ちゃんが米ツアーで初優勝したエビアンマスターズ(2009年)に私も出場していたこと。彼女が苦労して得た優勝の試合に、私も立ち合えて祝福できたことが喜びです。




サントリーレディス最終日に同組で回った成田美寿々
成田美寿々(24歳)
1992年10月8日生まれ、千葉県出身。今季賞金ランキング28位。
2012年ツアーデビュー。ツアー通算7勝。

 私がゴルフを始めたきっかけも、プロになろうとしたきっかけも、藍さん(の存在)だったんです。それで、2014年の全米女子オープンに出場した際、練習ラウンドをお願いしたんです。そうしたら、私のことを知っていてくれて、快くOKしてくださった。あのときは、本当にうれしかったですね。

 ただ恥ずかしい話、練習ラウンドを私のほうから申し込んだにもかかわらず、緊張しすぎてほとんど喋れなかったんです。それで、藍さんが「あの子、シャイなんだね」って、あとでお母さんと話していたらしいんですよ(笑)。2015年のワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップでも、2日間一緒に回らせてもらったんですけど、そのときも舞い上がっちゃって……。自分のゴルフが疎(おろそ)かになるぐらいでした。

 とにかく、私にしてみれば、ゴルファーとしても、ひとりの人間としても「藍さんみたいになりたい」と思わせるほどの人格者。だから、私は”神”と崇めています。

 今回のサントリーレディスでは、もう1回一緒にラウンドできるように密かに狙っています(最終日に実現)。実は、大会前にちょっとへこんでいたんです。そうしたら、藍さんがLINEでメッセージをくれて、「あなたはものすごくいいセンスを持っているんだから、自分を信じて、何事にも前向きに挑戦していこうね」みたいな言葉をくださって。もう、その言葉に救われて、スッを寝ることもできたんです。

 今大会は、藍さんご自身にとって非常に大事な試合であるにもかかわらず、そんなときでも、私に対してもすごく気を使ってくれるなんて、改めて感動したというか、心に染みました。うちの親は、藍さんのことを「娘にほしい」といっています(笑)。

 今回、やめてしまうことはもちろん悲しいです。もっともっと一緒にやっていたい、という気持ちがすごくあります。でも、14年間、第一線でやってきて、私たち女子プロを引っ張ってきてくれた。それは、本当に大変だっただろうと思います。そういう意味では、決して(引退が)早すぎるとは思いません。今はただ、感謝の気持ちしかありません。

【フォトギャラリー】
宮里藍と歩んだ戦友たちの思い。「すべてが完璧」と上田桃子は言った