(写真左より)イスラム・マカチェフ、アレクサンダー・ヴォルカノフスキー/Getty Images  日本時間の2月12日(日)、オーストラリア・西オーストラリア州パースのパース・アリーナで『UFC284』が行われる。メ…

 

(写真左より)イスラム・マカチェフ、アレクサンダー・ヴォルカノフスキー/Getty Images

 

 日本時間の2月12日(日)、オーストラリア・西オーストラリア州パースのパース・アリーナで『UFC284』が行われる。メインイベントは、ライト級王者イスラム・マカチェフがフェザー級王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーを迎えうつライト級王座初防衛戦。UFC現役王者対決であり、パウンド・フォー・パウンド・ランキング1位のヴォルカノフスキーと2位のマカチェフによる真の最強決定戦でもある。この大一番の見どころを“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。

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アレクサンダー・ヴォルカノフスキー/Getty Images

 

――ライト級王者マカチェフとフェザー級王者ヴォルカノフスキーの頂上対決がついに実現します。
「これはまた“えらいこっちゃ”ですね。今、最も負ける姿が想像できないふたりが戦うわけですから」

――ヴォルカノフスキーはここまで12戦全勝で約10年間負けなし。マカチェフも7年間負けなしの11連勝中ですからね。
「両者ともに自分の強い部分をしっかり理解した上で勝ち星を重ね、勝ち方を知り尽くしたふたりの戦いと言えると思うので、これはお互いにとって手強いですよ」

――ただ、1階級下のヴォルカノフスキーがこの試合に出てくるのがすごいですよね。ライト級のトップランカーでも今のマカチェフとすぐにやるのは、躊躇するぐらいじゃないですか。
「だからライト級のコンテンダーたちは“よくぞ手を上げてくれた”と思っているかもしれない」

——“どうぞ、どうぞ”みたいな(笑)。
「ヴォルカノフスキーだったら、勝つにしろ勝てないにしろ、何かしらマカチェフの穴なり、攻略の糸口を引き出せるんじゃないか、という感覚をみんなが持ってるんじゃないかなと思いますね」

――そんな攻略法をまだ見出されていない両者の戦いですが、試合のポイントはどの辺になると思いますか?
「あえて大雑把にタイプを分けるとヴォルカノフスキーは打撃がとにかく強くて、マカチェフは組んでテイクダウン、そしてグラウンドがめっぽう強いタイプですよね。ただ、マカチェフのほうは、KOするためというより“組むための打撃”を磨いてきて、その戦い方が試合を重ねるごとに固まってきたんだと思うんですよ」

――パンチを振ってそのまま組み付いてテイクダウンして、そこから得意の寝技に持ち込む戦い方ですね。
「マカチェフが7年半前に一度だけ負けた時(2015年10月、アドリアーノ・マルティンス戦)っていうのは、明らかに倒しにいく打撃を打ちにいって大振りになってしまったことで、逆に相手のパンチをもらってKOされてしまったんです。その反省から、“組むための打撃”に特化して、打撃のプレッシャーをかけて組んでいくということを、突き詰めていった感があるんです。ところが、前回のタイトルを獲得したシャールズ・オリヴェイラ戦では、右フックでダウンを奪って、そこからグラウンドで一気に肩固めを極めて勝ってるんですよね。自分はあの打撃の映像を何回も繰り返し観たんですけど、すごく肩の力が抜けていてしっかり倒す打撃になってたんですよ」

――これまでの“組むための打撃”とは違っていた、と。
「ということは、組むための打撃を突き詰めた結果、倒す打撃も身につけてしまったというのが、今のマカチェフなんじゃないかと思うんです」

 

イスラム・マカチェフ/Getty Images

 

――なるほど。盟友ハビブ・ヌルマゴメドフもそんな感じでしたよね。打撃でプレッシャーをかけていくのはもちろん、あのコナー・マクレガーをノックダウンさせたり。
「だからヌルマゴメドフという前例というか大きな存在があったから、マカチェフも迷うことなく自分の進むべき道を突き進んで、その結果、組むための打撃でありながら、倒せる打撃を倒せる打撃も身につけた。そしてオリヴェイラを打撃で倒したあとは、対応する暇をまったく与えず一気に極めにいってるので、今は“誰が相手でも自分の戦いを貫けば勝てる”という自信を得ている状態じゃないかと思いますね」

——とはいえ、その“自分の戦い方を貫く”という意味では、ヴォルカノフスキーもまさにそうですよね。
「そうなんですよ。勝ち方を知っている者同士であり、なおかつメンタルも技もフィジカルも強い心技体揃った者同士の濃厚なマッチメイクなんですよね。そして今回自分は、ヴォルカノフスキーの過去の試合を“もしマカチェフが相手だったら”という視点で見直してみたんですよ。そこで感じたのは、組むための打撃が進化したマカチェフとは逆のタイプで、本当は組み技も強いのに、組みは打撃をしっかりと使うためにしかあえて使ってないんじゃないかと思ったんです。組み技勝負でも全然できるんだけど、そこで力を使いすぎちゃうと打撃でしっかりKOを奪いにいく自分本来の勝ちパターンに影響を与える可能性があるから、あえて寝技はそこまで深くやらないんじゃないかな、と」

――ヴォルカノフスキーは、前王者マックス・ホロウェイとの3試合で5ラウンドをフルに打撃を打ち続けて判定で勝ってきましたけど、その打撃のスタミナを重視するために、なるべく組みの展開を避けていたんじゃないか、と。
「でも今回の相手は、確実に組みを狙ってくるマカチェフですから、その普段は開けない引き出しを全開にしてくるんじゃないかとも思うんですよね。マカチェフはグラウンドでトップポジションを取ったとき圧倒的な力を発揮する選手ですけど、逆に寝かされて下からの動きのときに一瞬後手になるシーンも過去にはあったんです。昔のことなので、今は下からも強い可能性は十分ありますけど、いずれにしても寝技に関しては、どちらがトップポジションを取るかが極めて重要になる試合だと思います」

 

――勝負のいちばんの分かれ目はマカチェフがトップを取れるかどうか。
「ヴォルカノフスキーは体幹がめちゃくちゃ強いし、テイクダウンディフェンス能力も高い。だからテイクダウンの攻防がいちばん重要視すべきポイントということで、そこでしっかり力を使ってくるかもしれない。そしてテイクダウンを防ぐことで、結果的にスタンド攻防が続く長期戦になった場合、ヴォルカノフスキーが有利になっていく可能性が高い」

――ヴォルカノフスキーは4ラウンド以降めっぽう強い。対するマカチェフは5ラウンドマッチの経験はあるけれど、その前にフィニッシュしているので5ラウンド戦い抜いた経験はないんですよね。
「だから、そのへんは未知数ですよね。ただ最初に言ったように、マカチェフは組むための打撃で相手を倒せるようにもなっているので、ヴォルカノフスキーのこれまでのデータにないタイミングや距離感での打撃を出してくる可能性もある。だからこの試合は、完璧と思われる両者がより相手の想定を上回る攻撃を出せるかっていう、ものすごく濃い試合になる。MMAファンなら絶対に見逃せない一戦だと思いますね」

(聞き手・文/堀江ガンツ)

 

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◆◆◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール◆◆◆
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC284 in オーストラリア フェザー級王者ヴォルカノフスキー、マカチェフが持つライト級王座に挑戦!』
2/12(日)午後0:00[WOWOWライブ]※生中継
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
2/15(水)午後1:00[WOWOWライブ]※リピート
(WOWOWオンデマンドで同時配信)
【放送カード】
ライト級タイトルマッチ/イスラム・マカチェフ vs アレクサンダー・ヴォルカノフスキー

【収録日・収録場所】
2023年2月12日(日)/オーストラリア・パース パース・アリーナ
【出演】
解説:髙坂剛、堀江ガンツ
実況:髙柳謙一
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