二塁牽制は大別して3種類「いつもアウトを狙うわけではない」 二遊間を経験した選手でなければ、技術的なポイントがなかなかわ…
二塁牽制は大別して3種類「いつもアウトを狙うわけではない」
二遊間を経験した選手でなければ、技術的なポイントがなかなかわからないのが「二塁牽制」だろう。どんなタイミングで二塁ベースに入れば、走者を刺せるのか。オリックスやヤクルトで玄人好みの遊撃手として活躍した大引啓次さんが、二塁牽制の「肝」を解説してくれた。出演した野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」で、大引さんは現役時代に実践していた守備力強化ドリルを紹介している。
「二塁牽制」と一口に言っても、試合の状況によって狙いは変わる。「大きく考えると3種類あります。三盗を未然に防ぐ牽制、バッターの様子をうかがう牽制、ランナーを刺しにいく牽制。いつもアウトを狙いにいくわけではありません」。
牽制が増えれば増えるほど、走者に警戒され、アウトを取りづらい状況を自ら作ることになる。「様子見でよくあるのが、逆回りのけん制です。右投手であれば、左足を上げてから時計回りにクルッと回る。ランナー二塁や一、二塁で、相手ベンチの出方を見るときに使います。はじめから『牽制を投げますよ』という足の上げ方をすると何の意味もなく、ピッチャーは投球するつもりで足を上げること。演技力が必要になります」。
打者がバントの構えを見せれば、「送りバントのサイン?」と次のプレーを予測することができる。この打者の動きを確認するのが、捕手や内野手の役目だ。最初から牽制とばれると、打者は何の仕草も見せず、様子見の効果が薄れてしまう。
「餌まき」こそショートの“腕の見せどころ”
二塁走者を刺すためのポイントはどこにあるか。大引さんは「餌まき」をキーワードに挙げる。「二塁走者の心理として、ショートが三遊間に開いた時にリードを広げます。それを逆手に取って、開いた瞬間にベースに走り込むのはひとつの手です。あえて、走者の後ろでグラブを叩いて、走者から離れたことをアピールするのも効果的です」。
コーチャーの声も生かせるという。ショートが離れると「離れた!」「(牽制)ないぞ!」と声が飛ぶが、この瞬間にベースに入る。では、バッテリーとのサインはどのようにやり取りしているのか。「投球前に『次に牽制』と私がサインを送ることもあれば、セットに入ったあとに『投げてこい!』と簡単なフラッシュでサインを出すこともあります」。
約束事として、春季キャンプで「投手が走者を見て、顔をホームに向けたあと、1秒で二塁牽制」といった“合わせ”を繰り返すという。ショートの大引さんは、投手が本塁に顔を向けたタイミングで二塁ベースに走り込む。「年間で5パターンぐらい使い分けています。ショートが二塁走者を追い越した時(二塁ベース寄りにショートが近づく)に、キャッチャーがミットを倒して、けん制するやり方もあります。これは、バッテリーのサイン交換中によく使います」。
球場でプロ野球を見る機会があれば、走者二塁時のショートの動きに注目を。プロの「餌まき」を学んでみてほしい。(大利実 / Minoru Ohtoshi)
○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。