イタリアを代表するクラブチーム、ユベントス。優勝回数は36回。2位のミランとインテルは19回だから、その強さは圧倒的だ…

 イタリアを代表するクラブチーム、ユベントス。優勝回数は36回。2位のミランとインテルは19回だから、その強さは圧倒的だ。2011年から続いた9連覇の頃に比べると、最近は少し勢いがないものの、それでも今季は首位ナポリと10ポイント差の3位につけていた。

 しかし1月20日、ユベントスは勝ち点を15ポイントはく奪され、一気に10位へと転落した。ユベントスの減点といえば、2006年の「カルチョポリ」を思い出す。あの時は賄賂などによる八百長事件だったが、今回は財務上の問題が理由だった。

 いったい何がユベントスに起こっているのか。



直近のコッパ・イタリア準々決勝ではラツィオを破りベスト4に進出したユベントス

 ことの起こりは2021年10月の終わり頃だった。イタリア国家証券委員会(CONSOB)は、上場企業の会計を調査するなかで、いくつかのサッカークラブがキャピタルゲインを利用して決算を操作しているのではないかという疑いを持ち始めた。

 キャピタルゲインとは、一般的には資産価値が上昇することで得られる利益のことを言う。クラブチームの場合は選手の売買における利益だ。例えば選手を2000万ユーロで獲得し、1年後に5000万ユーロで売却したら、この場合のキャピタルゲインは3000万になる。ただ、選手の値段は商品と違い、決まった価格というものが存在しない。いわばすべて言い値の世界である。だから高く見積もったり安く見積もったりすれば、簡単に帳簿を操作できるのだ。

 疑いのある事例は全部で62。そのうちの実に42件はユベントスが関わったもので、クリスティアーノ・ロナウドのマンチェスターユナイテッドへの移籍も捜査対象となった。

 2021年11月、イタリアサッカー協会からの依頼を受け、検察庁が本格的に捜査を開始。アンドレア・アニエッリ会長、パベル・ネドベド副会長、5月までユベントスのスポーツディレクターを務めていたファビオ・パラティチ(現在はトッテナムのスポーツディレクター)など幹部6人が捜査対象となった。ある幹部などは9時間にも及ぶ尋問を受け、携帯の通話記録やPCなども押収された。

【会長以下クラブ幹部が辞任】

 2022年3月。捜査の過程でキャピタルゲイン以外にもユベントスが不正を行なっていた可能性が浮上する。コロナ禍で試合が行なわれていなかった間、クラブの収入はほとんどなく、財政的に厳しい状況に追いやられており、年俸の高い選手を保有するビッグクラブほど打撃は大きかった。その対策として、ユベントスは選手と合意のうえ、給料の支払いを延期したり、クラブの負債として残したりした。

 最近になってパウロ・ディバラ(現ローマ)はその時のことを複数のイタリアメディアに明かしている。

「はじめ、チームから4カ月分の給料をあきらめてくれと言われ、みんなびっくりした。誰もそんな多くの額をあきらめたくない。だから皆で話し合い、断ったんだ。そうしたら今度は、3カ月分は翌シーズンに支払い、1カ月分は当面貸し付けとして残してくれるということになった」

 ところが、このことは帳簿に反映されていなかった。あたかも選手たちが減給に同意したかのようになっていた。検察はそれらの対象になる選手も召喚。ディバラをはじめ、アレックス・サンドロ、フェデリコ・ベルナルデスキ(トロント)、ジョルジョ・キエッリーニ(ロサンゼルス)、フアン・クアドラード、レオナルド・ボヌッチなどから証言を求めた。また当時ユベントスの選手だったクリスティアーノ・ロナウドに1960万ユーロ(約30億円)を後払いするという書類も後に発覚。これもユベントスは帳簿にのせていなかった

 2022年4月には裁判が始まり、ユベントスの他にサンプドリア、ナポリ、ジェノアなど11チームが告発されたが、一審では全チームが無罪となった。先にも述べたように選手の本当の価値を特定する客観的な方法が存在しないため、操作を立証することができなかったのだ。

 ただ、ユベントスに対してはここですべては終わらなかった。トリノの検察は一審後も捜査を進め、再び幹部らを起訴。これを受け、11月末、アニエッリ会長とネドベド副会長が辞任した。問題はイタリア国内だけではない。UEFAもまたファイナンシャル・フェアプレーやライセンスにおける違反があったと捜査に乗り出した。

【選手たちも証人に呼ばれ...】

 そして今年1月20日、審理が終了し、裁判所はユベントスに対し15点のペナルティを科す制裁を下した。これはサッカー協会が求めていた9ポイントの減点よりもはるかに厳しいものだった。またアニエッリ、ネドベド、パラティチら幹部たちにも個別に職務停止などの処分が言い渡された。

 イタリアの新聞各紙は、このスキャンダルに名前を連ねた22人の選手たちにも、今後の捜査次第では1カ月の出場停止処分が下される可能性があると報じている。そのなかにはクリスティアーノ・ロナウドも含まれている。

 一方、ユベントスはいかなる不正行為も強く否定している。特に、他のクラブとその幹部が無罪となったのに、ユベントスだけ厳罰に処せられたことには納得できないでいる。今後はイタリアのオリンピック委員会(CONI)の保証委員会に上訴する方針だ。

 幹部らが法廷闘争に備える一方で、現場ではこのシーズンを立て直そうと必死になっている。どうにかチャンピオンズリーグ出場権を、少なくともヨーロッパリーグ出場権を獲得できなければ、クラブは大きな経済的打撃を受け、優秀な選手たちの流出に拍車がかかる可能性がある。

 だが、立て直しは簡単なことではないだろう。捜査が続き、選手は証人として呼ばれ、序盤の躓きからやっと脱出したと思ったらトップが総辞職。挙句の15ポイント減点では落ち着いてプレーしろというほうが難しい。1月の首位ナポリとの直接対決では5-1という大敗を喫し、つい先日は格下のモンツァにホームで敗れている。

 マッシミリアーノ・アッレグリ監督はあえて強い言葉で選手たちの結束を求めた。

「やる気がない奴は外れてくれ」

 敗れたモンツァ戦の後、彼は言った。

「昨日までは38ポイントあり、スクデットも夢じゃないと思っていた。それが今では23ポイント。降格しないために戦わなくてはいけない。だがそれを直視できなければ、もっとひどい事態になる」

 檄のかいもあってか、2月2日に行なわれたコッパ・イタリアの準々決勝では現在リーグ4位のラツィオを下し、準決勝に駒を進めた。現状ではリーグ優勝は狙えない今、コッパ・イタリアとヨーロッパリーグ(チャンピオンズリーグはすでに敗退)はチームにとって非常に重要な戦いである。

 明るいニュースもないではない。ここまで多くのケガ人を抱えてきたユベントスだが、少しずつだが復活してきていることだ。ラツィオ戦で戻ってくると期待されていたポール・ポグバはまた筋肉を傷めて出場することはかなわなかったが、この試合でフェデリコ・キエーザ&ドゥシャン・ヴラホヴィッチのコンビがついにユベントスデビューを果たした。彼らはフィオレンティーナのユース時代から共にプレーしてきた仲で、そのコンビネーションを期待してユベントスが昨年の冬にヴラホヴィッチを引き抜いた。だが、一方のケガが治るともうひとりがケガをするということが続き、なかなか共にプレーすることができなかったのだ。

 また、司法の面でも希望は残されている。上訴を予定している保証委員会にもし主張が認められれば、15ポイントが戻ってくる可能性もある。そうすればまた一躍スクデット争いに返り咲くことも夢ではない。

 その時のためにも、ユベントスは着実に1試合1試合を勝っていく必要がある。次のサレルニターナ戦は火曜日(現地時間)に行なわれるが、シーズン前半の対戦では引き分けている。順位としてはユベントスの3つ下でポイント差は2。これからはユベントスにとってすべての試合がビッグマッチとなるだろう。