テキサス・レンジャーズは現地時間1月15日、筒香嘉智とメジャーキャンプ招待つきのマイナー契約を結んだことを発表した。筒…

 テキサス・レンジャーズは現地時間1月15日、筒香嘉智とメジャーキャンプ招待つきのマイナー契約を結んだことを発表した。筒香は昨年、ピッツバーグ・パイレーツでシーズンをスタートしたが、50試合に出場して打率.171、2本塁打と低迷。8月に自由契約となり、トロント・ブルージェイズとマイナー契約を結んだものの、11月にFAとなって去就が注目されていた。



昨年はパイレーツで調子が上がらず自由契約に。マイナー契約を結んだブルージェイズからもFAとなった

 筒香はアメリカでプレーを続けることを決意したが、今回はマイナー契約からメジャーロースター入りを目指すことになった。過去3年で2度のDFA(40人のロースター枠から外す)と自由契約を経験した筒香に、メジャーロースター入りのチャンスはあるのか。レンジャーズ専門メディア『ノーラン・ライティン』のマイケル・サンダース記者、ウェスリー・アール記者、ブライアン・スイート記者の3人に話を聞いた。

 まず気になったのは、レンジャーズが筒香を獲得した理由だ。各記者は、「レフトの選手層を厚くする必要があった」と口にする。レンジャーズは今オフ、ニューヨーク・メッツからFAとなっていたジェイコブ・デグロムと5年1億8500万ドル(約241億円)で契約したのをはじめ、アンドリュー・ヒーニー、ネイサン・イオバルディ、ジェイク・オドリッジと投手陣の大補強を敢行した。

 一方で、野手の戦力補強はあまり進まなかったようだ。スイート記者によれば、レンジャーズはもともと、パイレーツのブライアン・レイノルズ中堅手をトレードで獲得することを画策していたという。しかし、パイレーツ側の要求があまりにも多かったため破談に。それでも外野手(レフト)の補強が必要だったため、レンジャーズはFAになっていた筒香にオファーをした、というのが獲得の流れのようだ。

 しかし、なぜ筒香だったのか。というのも、「(レンジャーズ傘下の)トリプルAには、ヨシ(筒香)よりもロースター入りのチャンスがある優秀な外野手がたくさんいるので、(筒香獲得は)正直に言ってちょっと驚いた」と首をかしげる記者もいるからだ。

 ただ、チーム事情を考えれば、レンジャーズが筒香を選んだ理由はいくつも浮かんでくる。サンダース記者は次のように話す。

「レンジャーズはアジアでのスカウティングに積極的なことで知られていますし、ヨシのこともNPB時代からよく知っているはずです。さらにレンジャーズは、左打者で、ナサニエル・ロウ(一、三塁手)のバックアップができる選手も探していました。(レンジャーズは)オフに投手の補強で多額の資金を費やしたので、ロースター枠を(筒香のように)年俸が安い選手で埋めることができれば、チームとしても非常に助かります」

 さらにアール記者は、筒香が2021年にピッツバーグ・パイレーツで見せた活躍(43試合出場で打率.268、本塁打8本、25打点)に触れ、「あの打撃が再現されることを期待して、(キャンプ招待付きの)マイナー契約を結んだのだろう」と推測する。

 つまり筒香がこの契約を得られたのは、日本時代とパイレーツ時代(2021年)に示した打撃力が評価され、左打者のユーティリティプレイヤーであり、かつ安価なことがレンジャーズにとっていい条件だったということだろう。こう見ると、筒香のレンジャーズでのロースター入りも少し期待が膨らんでくる。

 各記者も「オープン戦で結果を残せば、メジャー昇格の可能性はゼロではない」と語るが、筒香がメジャーのロースターに入るのが簡単ではないことに変わりはない。レンジャーズには、すでにメジャーレベルの実力を持つ外野手が何人もいるからだ。

 レンジャーズは1月27日、クリント・フレージャーとトラビス・ジャンコウスキーという2人の外野手とマイナー契約を結び、メジャーキャンプに招待することを発表している。レンジャーズの外野には彼らの他に、ババ・トンプソン、ジョシュ・スミス、エゼキエル・デュラン、ブラッド・ミラーがいる。サンダース記者は、筒香のメジャーロースター入りの可能性を、10が最高点の10段階で「2、3くらいだ」と話した。

 では、筒香はキャンプでどのようなアピールをすればいいのか。サンダース記者もアール記者も「とにかく塁に出ること」と口を揃える。

 サンダース記者によれば、今のレンジャーズのラインナップでは、レフトの選手は下位の8か9番打者になるという。「その打順の打者に傑出した数字は求められない」というが、筒香はヒットで出塁すること、場面によってはランナーを進めて上位打線に回す、という働きが必要だ。オープン戦中にその役割が果たせなければ、開幕をメジャーで迎えることはなくなるだろう。サンダース記者は「筒香の結果は予想できないので、とにかく見守るしかないでしょう」と冷静だ。

 開幕をマイナーで迎えることになると、シーズン中の昇格はさらに難しくなる、という指摘もあるが、「マイナーで打撃が好調なら、レンジャーズであれば昇格のチャンスはあるかもしれない」とスイート記者は予想する。同記者によると、レンジャーズではマイナーで好調な選手を昇格させることがよくあるそうだ。

 また、レンジャーズは今季からブルース・ボウチー監督が新たに指揮を執ることになった。サンダース記者は、新監督がさまざまな起用を試みることを予想し、「ケガ人が出た場合、少なくともシーズン序盤は、プロスペクト(若手の有望選手)ではなくベテランを昇格させるかもしれない。(ケガ人が出れば)ヨシは4月か5月に昇格する可能性もあります」という。

 筒香の立場は厳しい。しかしどの記者も、筒香がメジャー3年で残した110安打、18本塁打、75打点という数字は決して悪くはないと見ているようだ。アール記者が「彼が自分のペースを掴んで、(レンジャーズの)外野陣をよくしてくれることを望みます」と話すように、今回話を聞いた全員が筒香に対してポジティブな印象を抱いていた。

 筒香は、来月からのキャンプでどれだけいいパフォーマンスを見せられるのか。現地の期待は決して高くはないが、新たな環境で最高の結果を出してくれることを信じたい。