「チャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得した選手たちを祝福したい。彼らは最高の仕事をしてくれた。今季はケガ人が多く…
「チャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得した選手たちを祝福したい。彼らは最高の仕事をしてくれた。今季はケガ人が多く、主力選手を欠いた状態でシーズンの半分を戦ったようなものだ。そんな状況でマンチェスター・ユナイテッドやアーセナルと戦うのは容易なことではない。それでも、ここまで辿り着いた。CL参戦にふさわしいパフォーマンスを見せてくれたと思う」
シーズン終了後、リバプールのユルゲン・クロップ監督は充実感を漂わせながらそう語った。

リバプール復権を託されたクロップ監督が来季はCLの舞台に立つ
今季は第2節バーンリー戦でいきなり黒星(0-2)を喫するという波乱のスタートだったが、それでも持ち直し、第11節ワトフォード戦の大勝(6-1)後にはプレミアリーグの首位に浮上した。しかし、折り返し地点通過後の1月に入ると勝ち星に見放されて失速……。順位を5位まで落としたが、なんとか踏みとどまり、来シーズンCL出場権が手に入る4位でシーズンを終えた。
名門リバプールがCLの舞台に復帰するのは、実に3年ぶりのことだ。
2015年10月にリバプールの監督に就任したクロップ監督にとっても、在任2季目となる今シーズンでCL出場権を獲得した意義は極めて大きい。そして、近年は停滞感が漂っていたリバプールとしても、価値ある「CL参戦」である。
ポジティブな変化は、スタッツからも見て取れる。注目は「チーム走行距離」と「スプリント回数(※プレミアリーグの場合は時速25.2km/h以上の走行数)」。どちらも、リバプールが今季プレミアリーグでトップの数値を叩き出した。
リバプールの年間チーム走行距離は4311.0km。2位は4196.2kmのバーンリー、3位は4181.0kmのボーンマスで、いずれもハードワークがウリのチームだ。
一方、リーグ最下位は3819.7kmのマンチェスター・U。1試合平均に換算するとリバプールは113.4km、マンチェスター・Uが100.5kmであり、両者の差は1試合で12.9kmまで広がった。1選手の平均走行距離はおよそ10~11kmであるから、マンチェスター・Uに比べるとリバプールはチーム全体で選手ひとり分、長い距離を走っていたことになる。
スプリント回数でも、リバプールは21789本(1試合平均=約573.4本)でリーグトップの数字を記録した。2位はマンチェスター・シティの20278本(約533.6本)で、3位につけるのはトッテナム・ホットスパーの20023本(約526.9本)、4位は僅差でアーセナルの20019本(約526.8本)。プレミア王者のチェルシーは7位の19024本(約500.6本)だった。
こうした数字から見えてくるのは、リバプールが攻守両面で数的優位を保つために長い距離を走り、かつ、ダイナミックでアグレッシブなサッカーを実践していることである。
クロップサッカーの根幹を成すのは「ゲーゲンプレス」で、ベースになるのがこの走力だ。ボールを奪われた瞬間から、奪い返すために波状的にプレッシングをかける。そして、マイボールにすると勢いに乗って、アタッカー陣が次から次へと前線に飛び出していく──。「攻→守」と「守→攻」のトランジションも速く、ハマったときのプレスの強度も高かった。チーム全体でよく走り、アグレッシブに仕掛ける戦術が選手に浸透していると言えよう。
クロップもその手応えを語る。
「今シーズンでチームの基盤を固めることができた。組織力が高まれば高まるほど、やることが明確になり、攻撃面で自己表現がしやすくなる。その結果、前線で違いをもっと生み出せるようになるだろう。来シーズンが楽しみでならない」
だが同時に、体力面で消耗度の激しい戦術でもある。
年末年始の過密日程後にあたる、1月の成績は3分1敗の未勝利。サンダーランドやスウォンジー・シティといった格下相手から勝ち点3を取りこぼした。1月から急激に失速したのは、エース格に成長したFWサディオ・マネがアフリカ選手権への参加で離脱したことが主因だったとはいえ、過密日程の12月を終えたタイミングでスランプに陥ったのは、決して偶然ではないだろう。
プレミアリーグとCLの二足の草鞋(わらじ)を履く来シーズン、夏の市場における選手層の拡充を含め、プレーヤーの「スタミナ維持」が課題になりそうだ。
とはいえ、リバプール界隈から悲壮感など伝わってこない。1970~1980年代に選手としてリバプールの黄金期を支え、現在は解説者を務めるフィル・トンプソン氏も声を弾ませる。
「多くの補強費をかけることなく、クロップが素晴らしい仕事をやってのけた。来シーズンが楽しみでならない。国内リーグでは、他の5強とともにタイトルを目指すことになるだろう。一方、欧州の舞台は難易度が高い。現実的な目標はベスト8だ」
自軍の選手を我が息子のように見守るクロップと、その期待に応えようと全身全霊を捧げる選手たち。ドイツ人指揮官は「我々の未来は明るい」と胸を張る。
「CL復帰」というひとつ目のハードルを飛び越え、クロップ体制はステップアップを果たした。在任3季目となる来シーズン、はたして彼らにはどんな物語が待っているだろうか。